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魔女のしんぞう。  作者: 枝。
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春の日の秋

河原で何度目かわからないお弁当を食べる。

先輩はこない。


「これで...今日は終わるのかな?」


妙に固い、味にはとっくに飽きているごぼうの天ぷらを無理やり胃に詰め込みながら呟く。

魔女はなにやら深く考え事をしている。


「明日は1回で終わるのかな。」


1日が1度しかないということは当たり前な事のはずなのに、そうすると少し不安が残る。

明日には何が起こるのか、明日は自分は死ぬんだろうか。そんなことばかり考えてしまう。

魔女の魔法は万能ではない。


瞬間移動や空を飛ぶことなどは、目立つためあまり行わない。

物やお金を出すことも出来るが、そういうことは魔女はしない。

時間を止めたり、早めたり、遅めたりも出来るけど、私の時間も同期してしまう。

私は魔女ではないから魔法は使えない。

魔女の魔法は万能ではない。


「私が普通だったら、先輩と付き合って楽しく高校生活を謳歌出来たのかな」

「でも普通に過ごしてたらほぼ初めて会う人は付き合わないんじゃない?」

「たしかになぁ...でもなんで、今日起こるはずのことが変わったんだろう」


1日をやり直した場合は、予定通りの1日をもう一度過ごすことになる。

私の行動で多少は変わることはあっても、私がなにも行動を起こしていないのに予定が変わることは今までには1度もなかった。


「気が変わるってこと、あると思う?」

「まあ、多分、ないと思うんだけど。でも何かが干渉したんだろうね。」

「気が変わるなんて当たり前なのにありえないって、この感じ今日何回もあるなぁ。ちょっと気持ち悪い...」

「案外別の世界に来てたりしてね。」

「ありえるの?」

「ありえない!」


お弁当を閉じて、明日の無事を祈る。

明日は出来たらごぼうの天ぷら以外が食べたいです。

くだらないようで真剣な祈りを続けていると、少し遠くから自分を呼ぶ声が聞こえる。


「おーい!春!」


振り返ると、先輩が立っている。

思わず固まる。なんで呼び捨て?てかなんで来た?やっぱり明日も今日なの?またごぼうの天ぷら食べなきゃならないの?

1秒もかかっていない思考のマラソンを振り切ってなんとか声をひねり出す。


「どうされました、先輩。」

「さっきも葉っぱ着いてたし、ちょっとぼうっとしてたのかなと思って。

ほら、やっぱり昨日の今日って言うのは早いかな。って少し悩んでたんだけどさ、返事も聞きたいし。」

「...えっと、何の返事を.....」

「か、のじょに。なってほしいなって...」


昨日は今日で今日は今日の今日で今日は31回目で昨日は昨日だった...え?


「あの、先輩。私たち、今日知り合いましたよね。」

「1年前の今日だったよね、君と出会ったのは」


どうやらなにかがおかしいらしい。

いやなにかがおかしいのは分かっていたけどとんでもなくなにかがおかしいらしい。


「先輩。是非お付き合いしてください。」


おかしいならおかしい方向に舵を思いっきり引いてやれとおもった。


「本当に?やった!えー、めっちゃ嬉しい...あ〜緊張した。」

「先輩のお名前伺ってもいいですか?」

「秋だよ。俺の名前は秋。」


春の風が柔らかく吹く、革命には丁度いい日だった。

毎日話しているような気がしたのに、先輩の名前を初めて知った。

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