しんぞうと魔女。
魔女のしんぞうは生きている。
魔女は2つの命があるから魔女なのだ、と言い伝えられてる。
魔女なんか本当に信じてるの?
魔法なんか本当にあると思う?
昔、この土地は酷くやせ細っており、暮らしている人々は飢えていた。
そこを通りすがった魔女は哀れみ、一番近くにいた娘に話しかけた。
「娘よ、私は魔女だ。この土地の者達になにかをしたい。何が1番喜ぶだろうか。」
「ああ、魔女様。なんと慈悲深い。それならば、お米を少し、いただけませんでしょうか。」
「では、魔法の稲穂をさずけましょう。この稲穂は、収穫をしても次の日にはまた実を結びます。」
娘は喜び、1束の魔法の稲穂を持って、家族の元へと帰っていった。
魔女は満足気に土地を後にしようとする。
すると、娘の次に近くにいた青年が魔女を引き止めた。
「魔女様。私にも、施しを下さりませんか。私は銭が欲しいです。一生使い切れない程の銭をください。」
「それはなりません。たとえ、あのツボに一杯の銭を与えたとしても、一生使い切れないということはないでしょう。」
「そんな。私には施しは出来ないというのですか?」
「そうではありません。銭が手に入っても、ひと時の幸せしか得られないと言っているのです。」
青年は少し考え込んだ後、こう答えた。
「では、魔女様。うちに1晩お泊まりになってください。それが銭の次に私が望むことです。
これならば、叶えて下さりますか?」
「それならば良いでしょう。私は、1晩だけ、貴方の家に泊まります。明朝には家を出ますが、よろしいですか?」
「はい。構いません。魔女様がうちにお泊まりになるなんて夢のようです。ご案内致します。」
魔女は1晩、青年の家に留まることになった。
...ここから先は破かれている。
魔法なんか使えなくても、命が1つしかなくても私は魔女に関わらなくてはならない。