七人の小人
白雪姫は森のなかをさまよい歩いていました。
「あそこを出たのはいいけれど、どこにいったらいいのかしら」
白雪姫の美しい夜空の瞳は足元の落ち葉を見つめています。
こつり、と団栗が目の前に落ちてきました。
「あれぇ?」
白雪姫が上を見やると、一匹のりすがその真ん丸い目でこちらを見ていました。
「りすさん、もしかしてあんないしてくれるの?」
りすは森の奥深くへ駆け出していきます。その後ろには白雪姫も続いていきました。
「りすさん、いなくなっちゃったなぁ」
追いかけていたりすを見失っていまった白雪姫はうなだれました。周りを見わたしても、恐ろしい木ばかりが立ち並んでいます。
「わたし、どうしたらいいの?」
悲痛な声は森に吸収されていくだけでした。彼女の瞳からは涙がこぼれ落ちそうになります。
「お嬢さん? そんなところでどうしたんですかい」
唐突に聞こえてきた七つの心配そうな声。白雪姫は驚いてはっと顔を上げました。
白雪姫を見下ろしていたのは、七人の小人たちでした。
「あ、は、はじめまして。白ゆきひめっていいます」
弱々しい白雪姫の微笑みに小人たちは目を丸くします。
「姫さま、あなたはお城にいらっしゃるんじゃ?」
「こびとさん、わたしのことをしってるの?」
白雪姫も目を丸くさせました。
「へぇ、姫さまの噂で国は持ちきりです。美しくて可愛らしいって」
「あら、メーラおかあさまのまちがいじゃあなくて?」
きょとん、とくびをかしげた白雪姫のあどけない顔。それに小人たちは心をとらわれてしまいました。
「姫さま姫さま、そいでなんでこんなところへ?」
「――いろいろあって、おしろをでてきたの」
うつむき加減に答える白雪姫に小人たちはあわてました。
「そいじゃあ、姫さまをわしらの家へお連れしましょう。どうかそこで暮らしてくだせぇ」
白雪姫は花のような笑顔でうなずきました。
* * *
一方、お城ではメーラの怒りが爆発していました。
「どうして白雪姫がいないのよ!? 早く探しなさい!」
彼女の怒声は稲妻のごとく響きます。メーラは内心で焦っていました。
「早く、早く殺さないと……」
そして、思わずこう呟いたのでした。
「私の触れたりんご全て、毒りんごになってしまえばいいのに」
もうお城に残っている毒の量は少なくなってきていました。メーラは白雪姫のためにたくさんのりんごと毒を使っていましたから。
「せっかくケーキを作ったのに。おじゃんになったじゃあないの!」
けれど、彼女には鏡の声が聞こえていなかったのでした。
「――承りました」