表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

たくさんのりんご

 鏡が予言を下したその日から、城の中にはりんごが増えていきました。

 白雪姫の様子がだんだん陰っていくのをみてメーラは喜びます。けれど、白雪姫にはある秘密がありました。

「りんごなんて大きらいよ。りんごをたべるなら、うえじにしてやるわ」

 彼女は自分の部屋にとじこもって呟きます。

「おしろにはりんごしかないのかしら。せかいからりんごなんてなくなってしまえばいいのに」

 そう、白雪姫はりんごが大嫌いなのでした。

 今では城の全ての場所にりんごがあり、城の全ての料理にりんごがふくまれていました。りんごを目にしたくもない白雪姫は部屋にいるしかありません。

「こんなせいかつ、なげだしちゃいたいの」

白雪姫は床下にあるはずのメーラの部屋を見つめました。りんごが増えた理由として考えられたのはメーラだけだったのです。


*  *  *


 その頃、メーラはたくさんの毒りんごを作っていました。

 白雪姫にも秘密があるように、メーラにも秘密があったのです。それは、メーラはりんごの魔女である、ということでした。りんごの魔女はりんごにしか魔法をかけることができません。けれど、りんごの魔女になりたいものは多くいました。魔女のりんごを食べれば美しく若くいられたからです。

 メーラも、若いころに魔女のりんごを欲しがったものの一人でした。その魔法の果実を願って、願って……。

 若いころを思い出してしまったメーラは頭をふりました。

「あのいまいましい娘を早く殺さなくてはね。私がこの姿でいるためにも」

メーラは火にかけた壺をゆっくりとかきまわします。彼女の瞳にどろり、と溶けた草花がうつります。

「自分の愛するはなばなで殺されるなんて、どんな思いかしら」

作った毒を魔法の力でりんごに流し込むと、うっとりとして目を閉じました。あとはこのりんごで華やかなケーキをつくればおしまいです。

「あの子の命も、今日で終わり」

メーラは満足げに唇をなめます。


 けれども。メーラがそう呟いたころには白雪姫は城からいなくなっていました。

「あんな、りんごがいっぱいなところになんていられないわ。おとうさまったらどうしちゃったのかしら」

りんごだらけの城に嫌気がさした白雪姫は逃げ出しました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ