第一話 ソルジオ・ルーニアの馬車 1
遅筆、拙筆申し訳ない
また後学のため感想をいただきたい
目を開けると抜けるような青空が広がっていた、太陽が燦々と輝き、そよ風の中小鳥が二羽連れ立って飛んで行った。周りを見るまでもなくさっきまでボクがいた町中ではなく、多分もっと田舎の方にいるらしい。
「ここは、どこだろうか」
立ち上がって周りを見渡してみる、自分の寝転がっていた場所は小高い丘になっていて、あたりの様子がよく見えた。遠くに大きな白い壁のようにも塔のようにも思える何かがここからでもはっきり見え、その周り一面の白い野花の咲く草原は端が見えない程広く、一方は遥か向こうにかすんで見える険しい山々の尾根まで続いていた。
その一つの峰の先に普通では考えられないものが見えた、ここからでも見えるくらいの大岩が宙に浮いている。ボクは目を疑った、そんなはずはあるはずがないと自分に何度も言い聞かせその大岩を見やる、まだ信じられないがそれでも確かにその岩は浮いているようにしか見えなかった。
「夢か……」
そうに違いない、いつもしてこなかったような事をしたから記憶が混濁しているだけなんだ。今のボクはちゃんと自分の部屋のベッドに寝ているはずだ。そうだ、夢の中で眠れば逆に目が覚めるとどこかで聞いた事がある、ちょうどここは気持ちのよい丘の上だ。また寝転がって目を閉じよう。
ぐっとネックレスのリングを握る、これで明日からの自分は変われるかな……。
「おい、大丈夫か生きてるか、おい」
顔の上から聞いたことのない声が聞こえる。誰かが肩を揺さぶってくる。
「う、ううん」
「おおよかった、起きたか。もしや行き倒れじゃあと思ってな、心配してたんだよ」
目を開けると突然そんな大声が降ってきた。目の前には筋骨隆々が頭だけでわかるような顔がニカニカと笑いながら覗き込んでいた。
「うわっ、誰だ!?」
僕は後ずさりして立ち上がる。
「俺が誰かだって?」
目の前の大男が笑う。
「知らねえのかい、知らねえってことはお前さん旅の人かい。俺はちょっとした商売人のな、ソルジオ・ルーニアってもんだ。そんで、お前さんの名前は?」
大男が笑いながら話しかける、おかしなしゃべり方をするがどうやらボクの名前を訪ねているようだった。
「えと、ボクは日向真です」
「ヒュガ?うん、面白い名前をしているな。ここいらまでくるのは初めてだろう、遠路はるばる良く来たな。そうだお前さん、どうせ行き先はうちんとこだろう、荷物も馬もぶん取られちまってるみたいだし、どうだお前さん、俺の馬車に乗って行かないか?」
「は、はい!」
「よし 話が早い じゃあ早速乗ってくれ、座るところぐらいはあるだろう」
大男が馬車の荷台を指差す、幌のついたその荷台の中は木箱や樽、大きな袋がきれいに収まっていた。そしてその荷物の間に挟まるようにして鎧姿の小柄な少女が眠っていた。
「あの、この女の子は」
「ああそれはうちの護衛だよ、体は小さいがなかなか頼りになるやつだ、後で挨拶するといい。今は長旅で疲れて寝ちまってるからな」
大男は『静かにしろ』とジェスチャーをして、またボクを馬車に乗るようにと促した。
そして馬車はゆっくりと動き出す、ボクは眠っている女の子と同じようにして腰を下ろした。
しばらく経って、ルーニアさんがボクに声をかける。
「ヒュガ おい、もうそろそろ見えてきたぞ。こっちに来てみてみろ、あれが我らが誇る円台の国『イルダ・サーキュラー』だ」
ボクは誇らしげに話す彼の言葉に期待で胸を膨らませながら幌の外に乗り出した。
つづく