幸か不幸か命運いかに。
「 いっいや、ちょっとぉ〜!どこまで行くのさ?? 」
美恵に手を引っ張られ付いてきたがどうやらここは、宿舎の近くにある橋のようだ。
その橋は、川を間に渡るかたちになっていて、水面には、大きく美しい満月が映し出されていた。
「 よっとっ!ここまで来れば大丈夫かな! 」
「 えっ?大丈夫ってな、何が? 」
すると美恵は、嫌な笑いを浮かべながら
「 じゃあ目をつぶって! 」
はい??
いや待って。待って。
この状況で目をつぶるとかこれもしかして……いやいやいやあるわけない!!クラスでも目立たない陰キャがそんなっき、きぃ、キス、な、なんて……!!
そう言われつぶっては、見るも何も起きない。
「 えっあの、美恵さん!?どうかしました!? 」
「 ちょっと、静かにして …… 」
少しずつ近づく足音……一歩、一歩、そして美恵の吐息がかかる距離まで。
やっやばいって!これ完全に小さい子見ちゃいけないシーンじゃない!?そして美恵の息めっちゃ柑橘系の匂いがして、もう理性がもたない……。
「 はいっ!しっかり噛みなさい! 」
「 えっちょまっ! 」
いきなり口の中に放り込まれたこれは、なんなのだ。
「 ん、あまい?な、なにこれ? 」
「 これは、博物館の隣で売ってたこの地域名物のお饅頭なんだって!おいしいでしょ〜〜 ! 」
「 お、おいしい……でもなんでこんなところまで連れてきたの? 」
あぁぁぁー!!めっちゃ嬉しいよ?嬉しいんだけど期待してたのと違ってなんか、悲しい。
まぁ、キスなんて夢のまた夢だからな!!
「 それはね、集陰くんを元気づけるためっていうのもあるけど……まぁ、気分転換かな!? 」
「 ごめんね、なんか心配させちゃって、でも本当に気分転換なの?? 」
「 …………うん、そーだよ! 」
俺でもわかる。この子無理してるってことぐらいは。
でも聞いた方がいいかな!?もし聞いてめんどくさがられたら俺の人生残るものないんですけど!!ダメだ……。勇気100倍どころか湧きどころがないわ。
「 そっそーなのかー! 」
「 うん……じゃ!宿舎に戻ろうか! 」
「 だね……! 」
振り返った美恵の背中は、どこか儚げだった。
そして、宿舎に帰り、男子部屋に入った瞬間、男子部屋の電気が真っ暗に消され部屋の真ん中に一本のロウソクがついた。
「 なっ、なにしてるんですか? 」
男子とも友達と言えるのは、まだ3人だけでやはり敬語は、なおらない。
「 集、大事な話がある、座って来れ! 」
男子みんなが俺を囲み、その真ん中に座らせられた。
「 なっなに? 」
「 お前さっき、偉佐原さんと宿舎抜け出してどっか言ったよな??正直に答えろ!!どこに言ってたんだ!? 」
「 どっどこって……は、橋だけど? 」
「 橋でなにをしていたんだ!? 」
なんで、取り調べ室みたくなってるの!?!?
俺悪いことした要素1つも見当たらないんですけど??周りの男子も殺意を抱いているようなまで俺をみている。
「 いや、まずこれ意味わかんないんだけど? 」
「 とぼけるな!クラス人気No. 1の偉佐原さんを独り占めしようと企んでいるのは、前々から知ってるんだぞ!! 」
この作戦の発案者がなに言ってんだよぉぉ!!!
ついに頭おかしくなっちまったか!?!?
「 そーだ!そーだ! 」
「 陰内、あまり喋らないやつだと思ってたら、まさかの女たらしだったなんてな!! 」
おい、銀太!どーしてくれるんだよ!!
クラスの男子の俺の印象相当ひどくなってるぞ!
「 いっいやっ!俺は、女たらしなんかじゃありませんぅ〜 」
もーやだ。今日は、最後にいい事あったと思ったら最後の最後で大逆転起こっちゃったよ。
「 コンコンっ! もう就寝時間だぞっ!早く寝なさい! 」
「 やっやべぇ、先生だ!早くロウソク消せっ! 」
先生が来た途端に周りの男子は、寝る準備を始めた。とりあえずこれでなんとかなった。
よし!あとは、銀太をしばくだけだなっ!!!
「 おい、銀太……!少し話があるんだが? 」
「 えっ??ど、どちら様でしょうか?? 」
「 とぼけてんじゃねーぞ!! 」
「 Bセットでよろしいでしょうか? 」
「 ふざけてる場合じゃないだろ!?どーすんだよ?? 」
「 分かりました!コーヒーもお付けいたしますね! 」
ダメだ……。完全にしらばっくれる気だ。
明日まで待つか……。
「 明日になったら、覚えとけよ 」
「 ありがとうございやしたぁー! 」
全く眠れない1日だった。
夜が明け、カーテンの合間から日差しが照りつける。
「 おはよぉ〜〜〜 」
次々に周りの男子が起床し、着替え始める。
「 おい、銀太起きろよ!朝だぞ?? 」
忘れていた。銀太は、朝がとてつもなく弱くて登校時間の2時間前には、起こさないとしたくがめちゃくちゃ遅いということに。
まぁ、昨日のこともあるし、起こしてやる義理は、ないしなぁー。ま、いっか!!!
今日の予定は、午後には、バスに乗って帰るので、午前中は、クラスの親睦をふかめるためにクラス対抗で行われる大縄跳び大会が行われる。
自慢じゃないが、もちろん俺は、運動神経は、ゼロに等しい。
朝食を食べ終え、体育館に向かう。
うちの学校は、6クラスあるので2クラスずつトーナメント戦で戦い、5.6組の勝った方は、シードとして決勝に行けるという、ルールになっている。
ピピーッ!!
「 クラスごとに並べっ! 」
「 うーゎ、まじだりぃんだけどぉ〜 」
「 全然やりたかねぇんだけどぉ! 」
まぁ、そうなるよな。実際、俺も全くやりたくない。ていうか、こんな子供みたいなことしても仲を深めることなんかできるわけがない!!!
できるんだったらとっくに大縄1000回飛んでるわ!!!
「 おはよう! 」
「 おっおはよ〜 …… 」
おぉぉー!!忘れていた!美恵がいるんだった!ここは、運動神経いいですよアピールのチャンスでは、ないか!?でも、朝から大縄は、めんどくさいなぁ。
「 初めからずっとブーブー言ってる男子ってあんまり好きじゃないんだっ!やってもないことを最初から否定する人は、何事も楽しめないしね! 」
あっぶねぇ〜〜。ブーブー言いそうになってたんですけどぉぉ〜〜!
「 おっ俺もそう思うよ!クラスで親睦を深めるためには、重要だと思うから!! 」
やっばい、ひとかけらも親睦深めようなんて思ってない。これだから俺は、いつまでたってもぼっちな陰キャラなんだな。
「 へぇ〜、そーなんだー?? 」
絶対信じてないじゃんか!!!でも上目遣いうますぎて、可愛いしかでてこないよぉぉー!
あれ……?なんか忘れてるような気が……まぁ、いっか……。
「 次っ!! 5組 対 6組 」
とりあえず、ここでみんなの足を引っ張ったら本当に友達できなくなる……!!
しっかり、縄を見て飛べば大丈夫!
「 よーい!はじめっ!! 」
そう!高くっ!Fry High!!
「 せーのっ! 」
掛け声とともに縄が回ってくる。
腰を低めに構えて体力をあまり、減らさないように少しだけジャンプすればいいだけ……多分。
バサっ!
あ、引っかかった。
「 おい、誰だよ今のぉー! 」
思い出した。
中学のときもレクリエーションのときに大縄大会をやり、他のクラスは、みんな50回近くいってるなか、俺が見事に一回も飛べず、0回というある意味、新記録を更新したことを。
その後は、クラスの中でも運動神経が悪いといえば陰内だと、バカにされたことを覚えている。
そして、引っかかったときの周りの罵声。
大縄などやはり全然楽しくない。
あぁー。こんなときに銀太がいれば……。
あ!!!銀太がいない!!!
すっかり忘れていた。あいつまだ寝てんのか!?
それに誰も気づかないなんて何してるんだよ。
「 せーのっ! 」
ダメだっ。今は、大縄に集中しないと、まじでやばい。
バサッ!
「 おい!1回も飛べてねぇぞ!!女子だろ!?足あげろよ!? 」
「 はぁ?うちらしっかり飛んでるんですけどぉ〜?? 」
喧嘩は、やめてぇぇー!!!
俺なんですぅぅー、二回連続で引っかかったの俺ですぅぅ!!
なんて、言えるはずもなく……。
悪夢の大縄跳びは、続くのであった…………。
さぁ!集陰が大縄を飛べないなか、どうやって打開策を思いつくのか!?
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