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日常のおわり 

あのあと、幸いなことにチャイムが鳴ってくれたおかげで、僕はそれ以上小波さんから追及されることをのがれることができた。

そのまま、特に話すこともなく小波さんは帰って行ってしまい、僕もふらふらしながら帰路についた。

今日、スケジュールが入っていなくて本当に良かったと思った。

なんだかとてつもなく疲れてしまって、ベットに制服も脱がずに身を任せた。


「・・・こんなに簡単にバレちゃうなんて、黒瀬さん知ったら怒るだろうな・・・いや、それより小波さんが誰かに話したら、その時点でリーフもぼくもおしまいだよな。」


まだ、はじまったばかりの夢だったのに、やっと軌道に乗ってきて・・・そろそろ次のチャンスが来るかもしれないって言われていたのに、こんなに簡単に終わりをむかえるなんて。

やっぱり夢なんて儚いものなのかな・・・人が夢を見るから儚いっていうもんな・・・。

なんでもいいから難しいことを考えて、気分だけでも悩んでみたい。

思考は完璧に現実から逃げ出そうとしているけれども、そうしてはいけないことを僕だって知っていて。

アイドルになって一番やってはいけないといわれていた「スキャンダル」というか僕の場合は「男だとバレる」がこんなに簡単にバレるなんて・・・これがドラマだったらすごく納得のいくテンポだけど、残念ながらリーフにドラマのオファーはきていないし。


「小波・・・日向さん・・・ドラマ的な展開ではあるよね。」


転校生、盲目、アイドル、遭遇・・・だめだ、どんだけべたなんだろう。

あるいは、秘密を打ち明け会った二人が支えあって生活していくなんて筋書きは・・・自分でも考えていて調子が良すぎるなと思う。


僕はどうするべきなんだろう。

ため息ばかりが出てくる。

バレる前に引退すべきなのか、小波さんを説得して夢を追い続けるべきなのか、黒瀬さんに相談するべきなんだろうけど・・・できたらこんなことしていないよ。


「助けて・・・ひー君・・・。」


本当に僕は弱いから、今でもこうしてどこか遠くにいる幼馴染にくせで助けを求めてしまう。

いつまでたっても、あの頃から成長していない。

違う・・・成長して、ひー君のことが薄れてしまうのが怖いんだ。

ひー君は僕の夢そのものだから、ひー君が薄れてしまえば、相対的に僕の「リーフ」としての存在そのものが無意味と化してしまうようで・・・。


「・・・嫌だ。そんなの、嫌だ。僕はまだリーフでいたい。アイドルとしてステージに立ちたい!」


形が正常のルートとは異なっていることは分かっているけれど、それでもこれが『僕の夢の形』。


「負けない、負けられない・・・だって、どんな困難があったって、僕がリーフだから!リーフを求めていてくれる人がいる限り、僕はリーフなんだ!」


くるりとその場でターンをする。

魔法みたいにその場でリーフに変身できるわけではない。

でも、身体にはしっかりとリーフとして練習した動作が身についていて、僕が一番知っているリーフは夢なんかじゃないって。


「葉、お隣に引っ越してきた方が挨拶に来ているから、降りてきなさいー!」


「え、あ、はーい、すぐ行きます。」


階段を足早におりながら、そういえば数日前に車がとまっていたなーと頭の中で考える。

ひー君が引っ越しをしてからずっと入れ代わり立ち代わり隣の家は人が変わっていた。

最初のうちはそれが嫌で仕方がなかったけれど、いつの間にか慣れてしまっていた。


「人間の慣れって怖いな・・・。」


本当に慣れたくないことにも慣れていく。

そうしないと生きていけない・・・それが悲しいけれど人間がつけた知恵で・・・。


「葉、お隣に引っ越していらっしゃった小波さん、娘さんが葉と同じ年なんですって。」


「・・・はじめまして、小波日向です。」


「あ、はじめまして・・・って小波さん!?」


「・・・この声、瀬野君・・・。」


「あら、日向、お知り合いなの?」


上品そうなお母さんに連れられて、小波日向さんが立っていた。

学校の制服とは違う白いワンピースに身を包んだ小波さん、

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