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大日本帝國異世界奮闘記  作者: 大福
第一章 勃発
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3カ国協議

遅くなった上、あまり長くなくてすいません。

 1943年 6月27日 11:30


 横須賀沖にて要救助者ことトゥーレ王国使節団を拾った軽巡鹿島は、針路を変更、横須賀への帰路に着いていた。理由は単純、上層部より使節団の保護命令が出たからだ。もっとも保護と言っても、実質的な監視命令に近い。と言うのも、いきなり存在もしない国家の使節団を名乗る人物が流暢な日本語で接触してきた訳であるから、これを警戒するなと言う方が無理がある。


 その日の夜、ヴェルテら使節団を乗せた鹿島は無事に横須賀へ入港する事が出来た。幸いな事に入港が夜になったため、使節団は人目につくことなく上陸を果たしている。


 だが、ここで問題が発生する。使節団の暫定保護権を巡って外務省、海軍省、内務省の3省で争いが起きたのだ。3省ともヴェルテらが正式な使節団と確認されれば外務省管轄になる事には異存はなかったが、それまでの間の保護権利を争ったのだ。正式な外交交渉が始まる前にある程度の情報を仕入れておけば、今後のトゥーレ王国とやらを巡っての発言権の増大が見込める。そのため3省とも使節団の確保に躍起になっていたのだ。外務省は外交は外務省の専権事項として一歩も譲らず、内務省は平時の出入国管理は内務省管轄だと言い張り、海軍省は実際に保護を行ったのは海軍であり、海軍には保護義務があると主張する。3省とも頑なに譲らなかったが、最後は首相の鶴の一声で外交交渉が始まるまでは海軍が面倒を見ることになった。その理由として、事実確認と交渉が終わるまで出来るだけ接触する人数を減らしたい事、情報統制がしっかり取れること、万が一の際にそれを押さえつける武力を保持していること、使節団が乗ってきた船の管理ができることなどがあった。


 ちなみにヴェルテらが乗っていた帆船は駆逐艦如月の護衛(監視)の元、5ノットほどの速度でこちらへ向かっている。こちらは横須賀には入港させず、猿島沖に仮泊させることが決定された。これもなるべく人目を避け、かつ万が一の際に対処する艦艇が近くにいることなどが理由であった。そして入港前には念入りに検疫が行われ、一応は問題ない事が分かっている。しかし食事などは検査が終わるまでの間、使節団の船に積み込まれていたものを食してもらう他なく、この問題については各大学の教授や研究者が極秘裏に招聘されて調査に当たっている。その調査団の一員である生物学教授曰く


「これらの木材や衣服の繊維、食物が全て本物であるならば、私たちは世界に向けて数十もの新種を一度に発表しなければならない」


 との事であった。これは即ち、この船が人類未到達の地域もしくは未開の地から来ていることを意味している。だが、太平洋を渡れるほどの独自文明を保持する国が今まで未発見なのも変な話だ。


 そしてもう一つ、重大な情報があった。なんと使節団と共に乗ってきた船員を調査した際に、人間ではない種族が居た、との報告があったのだ。無論こちらの方が大問題となった事は必然とも言えるだろう。と言うのも、いきなり耳が尖っている人間や、猫耳のようなものが生えているとの報告を受ければ、まだファンタジーの概念が浸透していない当時の日本であれば(まあ、現在でも現実に現れれば驚くだろうが)その驚きようは計り知れないだろう。そして実際、報告を受け取った上層部は、その証拠となる写真や実物を見ない限り、これを信じることができなかったのである。


 さて、少し時間を戻そう。そもそもこの怪しい連中を受け入れる事に関して、かなりの議論があったことは確かだ。鹿島より報告を受けた第四艦隊司令部でも対処に困ったため、さらに上位組織となるGF司令部を経て政府へと連絡されている。異世界云々の話しは置いておくとしても、仮にも使節団と名乗るのだからぞんざいに扱うわけにもいかず、当の政府も困り果てていた。そもそも異世界とは何なのか。この件を受けて急遽開催された統合戦略会議でも意見はまとまらず、情報が集まるのを待つのみであった。そこに自体を一変する報告が入ってくる。なんと、アメリカからトゥーレ王国とやらを知らないかと連絡が来たのだ。これに驚いた日本政府はトゥーレ王国使節団を含む3ヶ国協議を行うことを提唱する。アメリカもこれに賛成し、即急な会談の開催を望んでいた使節団も二つ返事でOKする。


 そして7月1日、ハワイにて念願の3ヶ国協議が行われる事となる。日本からは吉田茂を筆頭とする外務省職員、アメリカからは国務長官であるエドワード・ステティニアスら数名、トゥーレ王国からはヴェルテを含む5名が参加した。ちなみにこの会談は関係国以外には非公開で行われている。と言うのも、オーストラリアやカナダ、更には太平洋各地に植民地を持つイギリス、フランス、オランダなどにもトゥーレ王国についてさり気なく探りを入れていたのだが、どの国も全く反応していないため、使節団が訪れたのは日米のみと判断されたからだ。これは使節団の証言からも裏付けされており、しばらくの間は日米両国共、この事実を伏せて置くつもりのようだ。


 やがて会談は午前9時に滞りなく始められている。


「この度はお集まり頂き感謝します。この会談が、互いに有意義な時間になれば幸いです」


 この会談の提唱者である吉田茂がはじめに挨拶を行なう。この挨拶は英語で行われているため、アメリカ側に通訳の必要はない。そして驚いた事にトゥーレ王国使節団も英語を理解出来るようだ。するといきなり、ヴェルテが手を挙げ発言の許可を求める。切り出し方を探っていた日米両国の代表は多少動揺するが、すぐに発言を許可する。するとヴェルテは立ち上がり一礼をしたのち、少し間を置いてから話し始めた。


「改めまして皆さん、私はトゥーレ王国外務次官のヴェルテ・ラングと申します」


 開口一番、全員に向けて挨拶をしたヴェルテはすぐさま本題を切り出す。


「私たち使節団は貴方方両国との友好関係を築くために、派遣されてきました」


 ここでエドワードが手を挙げて質問をする。


「ミスターヴェルテ、貴方方はトゥーレ王国の使節団と名乗りましたが、失礼ながら私どもはトゥーレ王国を存じ上げない。まず、貴方の国は何処にあるのです?」


 エドワードが多少困惑した顔で質問を始めた。これについては日米両国とも未だ分かっておらず、中には本当に異世界の住人なのでは?と言い出す連中も増えていた。


「以前に申し上げた通り、この世界とは違う異世界からやって参りました」


「それは一応伺っております。しかし、そのような突拍子も無い事はいささか信じ難いのが現状です。何か証拠はあるのですか?」


 するとヴェルテは吉田とエドワードの両方を一度見て、徐に話し始める。


「私がこうして貴方方と意思疎通が出来ていること。それが何よりの証拠となるでしょう」


 すると今度は吉田が問いかける。


「失礼ながら、それはどう言う意味ですか?」


「では、私が話す言葉、貴方方には何語で聞こえていますか?」


 質問に質問で返された2人はさらに困惑したように返答する。


「英語ですが?」


「日本語ですね」


 そう言った瞬間、2人は顔を見合わせる。いや、2人だけでは無い。トゥーレ王国使節団を除く全員が驚いたような表情をしている。


「これは……」


 驚愕のあまり言葉を詰まらせている2人に対してヴェルテが話し始める。


「そうです、貴方方の母国語に聞こえるように翻訳しています」


 やっとの事で事態を飲み込めたのか、吉田が恐る恐る質問をする。


「だが、どうやってですか?」


「その理由こそが、我々が異世界からやって来たという証明になるのです」


 会議室にいる全員の視線がヴェルテに集中する。そしてヴェルテから発せられた言葉は、その後しばらくの間そこに居合わせた全員の思考をオーバーヒートさせ、固まらせるのには十分すぎるのであった。


「我々は貴方方の世界には無い力、魔法を扱う事が出来るのです」


ところで、人物名などはどこまでこだわった方が良いのでしょうか?今の所、ある程度の要職やパイロットなどそれなりに有名な人以外はオリジナル名を使いたいと考えています。と言うのも、人物に関する知識が乏しい上、資料等もほぼ持っていないので、調べながら書くとさらにペースが落ちると思われるからです。(まあ、開戦していない時点で史実とは人事も異なってきますし、そこまで想定した上で役職を当てがっていくのは一個人では不可能ですので、そこはご了承下さい)


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