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帝國海軍の改革

説明を忘れておりましたが、第3話から第5話(予定)までは1942年1月〜1943年8月の期間を扱っております。時系列が前後しておりお見苦しい部分もありますが、ご了承下さい。

 帝國海軍では1942年より開始した英米との技術交流や1939年に発生したヨーロッパでの戦争に派遣した観戦武官からの報告などにより欧米諸国との技術的格差を痛感する事となる。そこで陸海軍首脳部はその差を埋めようと新兵器開発や戦術研究などに躍起になっていたのだ。


 海軍では観戦武官よりもたらされた数々の情報の中でも、英海軍のタラント空襲やビスマルク追撃戦などから航空機の重要性を認識することとなった。特にビスマルク追撃戦では重巡ノーフォークの索敵レーダーにより発見した独戦艦ビスマルクに英空母ヴィクトリアスやアークロイヤルの艦載機が攻撃を仕掛け、見事にこれを撃沈した(・・・・・・・)ことに並々ならぬ衝撃を受けた。後にビスマルクショックと呼ばれるこの事件により、帝國海軍上層部は艦隊の防空兵器や電子機器の重要性を認識する事となる。また、これに付随して観戦武官より


『我が海軍の艦隊防空兵器並びに電波兵器を早急に見直す必要性があると認む』


 との報告を受け、すぐ様その改良に取り掛かり始めている。


 この頃の帝國海軍の主力防空兵器は近距離においては九六式25mm機銃、遠距離では八九式12.7cm連装高角砲が担っていた。どちらとも性能はそこそこであり十分通用するが、25mm機銃は射程が短く高角砲は機銃ほど連射ができないなどの問題があり、中距離においての有力な対空火器が無かった。そこで海軍はスウェーデンのボフォース社より40mm機関砲のライセンス権を購入、これを艦載型に小改良して戊式40mm機関砲として採用、大型艦に取り付けている。高角砲も新型の九八式10cm高角砲(長10cm高角砲)が完成しており、以後の空母、戦艦など主要新造艦は初めからこれを装備する予定である。もっとも、構造が複雑であり思うように量産が効かないという難点があるのだが。また、機銃や高角砲などの指揮統制体制も見直され始めている。現在は各銃座にて独自に目標を決めて射撃をしているために弾幕が薄く、効果的な対空戦闘ができていないとの報告があった。そこで高角砲のみならず機銃座においても数基で一目標を狙う管制方法が導入され始めている。


 この他にも前話にて説明した通り、油圧式射出機や電探、音波探知機など補助装備も導入されはじめている。特に油圧式射出機は性能の向上と共に大型化していく艦上機を運用する上では不可欠な装備であり、帝國海軍が喉から手が出るほど欲していたものだった。現在、この油圧式射出機を全空母に設置するべく各ドックで艤装作業中である。ちなみにこのカタパルトだが、赤城や加賀、翔鶴型は既に設置を見越しての事前工事がされていた為、特に問題もなく設置することができた。また射出機の設置とともに艦載機の改造も行われている。これは射出機で発艦する際に必要となる装置の取り付けや機体各部の補強などだ。現行の九七式艦攻や九九式艦爆は問題なく改造、補強できており、後継機となる彗星、天山は設計段階から射出に対応できるように手直しされている。だが、細身で華奢な零戦はそう簡単にはいかなかった。かろうじて五二型以降は射出に耐えられるが、それ以前の形式では射出時の衝撃で機体が破損することが度々あったのだ。そのため母艦航空隊では零戦の更新を急ぐとともに、後継機の開発も急務となった。


 また、大型艦のみならず駆逐艦などの小型艦艇も順次母港にてドック入りしており、こちらは音探や聴音機、さらには新たに導入されたヘッジホッグの取り付け作業を行っている。この慌ただしい対潜能力の強化の裏には、ドイツ海軍のUボートの活躍を知った上層部が統合戦略会議研究所にこれらが太平洋で活動した場合どうなるかと問い合わせたところ


『我が軍の保有する対潜兵器では大西洋以上の跳梁を許し、最終的には本土近海の航行もままなら無くなると思われる。これは輸送艦等の非武装船のみならず戦闘艦艇も含めての事である』


 との回答が大量のデータと共に送られてきたからと言う事があった。この報告に海軍上層部はてんやわんやの騒ぎとなり、中には机上の空論として頑なに認めない者も出る始末である。しかしGF司令長官の山本五十六や軍令部次長の伊藤整一、兵備局第3課長である大井篤などが対処に奔走し、何とか今に至るのであった。ちなみに此方はUボートショックと呼ばれている。


 そしてこのヘッジホッグ、残念ながら船体の余剰スペースの都合上、吹雪型以前の駆逐艦には装備できないが、その代わりとして艦政本部では新たに護衛駆逐艦として対空、対潜能力に優れた丁型駆逐艦の設計を行っており、これも改⑤計画に盛り込まれる予定である。


 さて、改⑤計画とは何か。それは事前に制定されていた第5次海軍軍備拡充計画を改定したものであった。


 今回制定された改⑤計画の主な改定点として欧州戦線における戦訓が取り入れられている事がある。


 計画されている主な艦艇として、改大和型戦艦2隻、改大鳳型航空母艦2隻、G14型航空母艦2隻、815号型防空巡洋艦4隻、改阿賀野型軽巡5隻、甲型駆逐艦16隻、乙型駆逐艦16隻、丙型駆逐艦7隻、丁型駆逐艦32隻、潜水艦45隻、その他艦艇64隻。計196隻、総トン数約65万トンという遠大な計画である。この他にも航空部隊の増強計画もあるが、こちらは将来的に設立されるであろう帝國空軍への参加を前提としており、開発機種や増産機種などについて未だ陸軍側と協議中だ。ちなみにこれに使用される予算も膨大なものとなり、海軍は他の部分での予算縮小を強いられることとなった。そこで行われたのが旧式艦艇の除籍や中立国への売却がある。具体的には峰風型以前の駆逐艦や旧式となった特務艦艇であった。また、売却されたのは何も旧式艦艇だけでは無い。新規に造船される海防艦や駆潜艇などもその対象であった。これらは中南米諸国やタイ、中東諸国に輸出され、艦名を変えて2度目の奉公を行っている。特にソ連の南下に備えるイランやサウジアラビアなどには英国主導のもと、小型艦艇や武器弾薬が大量に輸出されている。


 さて、改⑤計画に話を戻そう。


 やはり今計画の目玉となるのは戦艦と空母であろう。そして今計画唯一の新造戦艦である改大和型。前級の大和型からの大きな変更点として、大和型で対46cm防御には過剰すぎるとされた装甲が若干削られた点がある。その代わり、艦底の防御隔壁が二重から三重へと強化され、艦首と艦尾の防水区画もさらに細くなっているなど、雷撃に対する耐性を高めている事が伺える。また、武装面では大和型唯一の弱点とされた副砲を撤去、その代わりとして高角砲が増設されている。高角砲は全ての長10cm高角砲となり片舷8基16門、計16基32門とかなり増強されており、対空防御にも力を入れていることが分かる。このほかにも25mm機銃を部分的に40mm機関砲に換装、射撃指揮装置も新型のものを導入するなど防空能力を強化したことや艦内電力の交流化などがある。いずれも大和型よりも防御面を中心にアップグレードさせた形となった。


 もう一つの目玉、航空母艦の方は2つの型が計画されている。その一つは④計画で設計され、現在鋭意建造中である大鳳の発展型となる改大鳳型だ。こちらの主な変更点として高角砲が片舷4基へと増強され機銃も新たに導入した40mm機関砲が設置されている事などだろう。ちなみに他の性能は大鳳型とほぼ同じであり、これらはほぼ同型艦と言っても差し支えはない。


 そしてもう一つがG14型であり、こちらは何と排水量約5万トンと帝國海軍最大の航空母艦となる予定である。速度や航続距離、主要区画の装甲などは大鳳型に準じているが、甲板の装甲が強化されている点が大きな変更点だろう。大鳳型が飛行甲板の50%ほどが装甲化されていたの対しG14型では全体の80%がTNT換算で400kg相当まで、航空爆弾では500kg(1000ポンド)に耐えうる装甲となっている。また、搭載機数も大鳳型の常用52機、補用1機なのに対して常用76機、補用21機と大幅に強化されている。これが完成した暁には翔鶴型や大鳳型と共に機動部隊の主力として活躍する姿を目にすることができるだろう。


 その他にも防空任務艦として④計画で予定されていた秋月型防空駆逐艦に加え、新規に815号型こと穂高型防空巡洋艦を建造する計画が立っている。


 この穂高型防空巡洋艦は排水量8千5百トン、速力33.5ノット、長10cm高角砲12基24門、40mm4連装機関砲6基24門、25mm3連装機銃6基18門と完全に防空任務を意識した武装になっている。また、海軍で初めて艦内に設計段階から戦闘指揮所を設けたのもこの艦の特徴であろう。これにより電探や高射装置の情報を効果的かつ効率的に運用できるようになると考えられている。と言うのもこの戦闘指揮所、現在はまだ試験運用中であり、今ひとつ効果がわかっていないからだ。また、高角砲を運用する上で忘れてはならない高射装置だが、穂高型では従来の九四式高射装置に代わって新型の二式高射装置を4基装備している。この二式高射装置は増大する航空機の最高速度を踏まえて九四式高射装置を改良し、より高速度にも対応できるようになったものだ。


 また、先行して建造されていた防空駆逐艦秋月型は1943年8月現在、7番艦霜月まで就役しており、8番艦冬月からは電探を装備し、戦闘指揮所を設けるなど電子機器の運用能力を向上させた設計となる。よって冬月以降は改秋月型や冬月型と呼ばれている場合もある。


 その他にも注目すべき点は丙型駆逐艦が建造予定に入っていることだろう。これは④計画で建造された島風型の量産型であり、性能もそれに準じている。当初はこちらも16隻が計画されていたのだが、航空機の脅威が増大し、昭和初めに想定されていた水雷戦が起きにくいと判断された結果、島風を含めた8隻へと減らされている。その代わり、対空、対潜能力を高めた丁型駆逐艦や海防艦、駆潜艇がこの計画には盛り込まれている。この丁型駆逐艦は史実の松型駆逐艦のような駆逐艦であり、これにヘッジホッグや各種電子機器を備えたため、従来の日本駆逐艦と比較して対潜能力は飛躍的に向上している。また駆潜艇などは、対潜能力を高めるだけではなく大型砲の取り付けを諦め、その代わりに40mm連装機関砲を装備するなど対空能力や輸出先での領海警備に対応した形となっている。これらの艦は総じて、艦体構造に直線を多用しており、戦時下となった場合には1艦あたり4〜5ヶ月で建造できるなど量産性も考慮されている。これらは新設されるであろう海上護衛総隊にも大量に配備される事も決定しており、有事の際のシーレーン確保や港湾警備に奔走する姿が見られる事となるだろう。


 また、近年重要度が増してきている電子機器についても対策がとられている。特筆すべき点として、陸海軍の統合組織である電波研究所が設立された事がある。その取り組みの成果として、1942年秋に新型の対空見張り電探が実用化されたことが挙げられる。これは従来のAスコープでは無く、イギリスより導入したBスコープが使用されている点が大きな特徴だ。また、対水上見張りレーダーも実用化され、母港にてドック入りをした艦から順次取り付けを行っている。 1943年8月現在、戦艦や空母等の大型艦艇には軒並み行き渡っており、世界最高水準の夜間監視員と共に夜戦における必須装備として認知されつつある。もっとも、帝國海軍では米軍のように常時レーダーを作動させ続けるのは『闇夜に行灯』との事であまり好まれていなかったため、主に短時間での方位や距離の測定、戦闘勃発後の周囲警戒に用いられている。またこの背景には、数年前と比べ格段に工業力が上がったとはいえ未だに真空管の信頼性が常時作動させ続けるには不安があるからとも言える。


 改良されたのはレーダーだけでは無い。現在使用されている機上無線機は、これまた高性能な英国製のものに置き換えられていた。これにより今まで殆ど使えなかった無線機が実用に耐えうるレベルになる。と言うのも、従来の日本製のものは雑音が酷く、熟練パイロットなどは軽量化のために無線機を下ろしたりアンテナを切ったりしていた言う。しかしそれが改善された事により、海軍航空隊では従来になかった無線を使っての編隊戦闘も行われるようになってゆく。


 その他にも簡易的な敵味方識別装置(IFF)を装備することにより地上、艦上からの管制がスムーズに行えるようになり、上記の無線や戦闘指揮所と合わせてより効果的な航空機運用を行うことができるようになる見込みである。




今回はロマンあふれる建艦計画をメインにしました。個人的に幻のG14型と丁型駆逐艦の活躍が楽しみですねえ。

さて、次回は陸軍なのですが私は陸軍はあまり詳しくないので、何か意見がありましたらドンドン感想欄で送ってください。

あと夕雲型の次の甲型駆逐艦のネームシップと穂高型2〜4番艦の艦名を募集中です。無ければセンスのない作者が適当に決めます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「いや改⑤計画ロマン杉だろ」と思っていたのですが、以前の感想返しとして書かれていた ・金剛型4隻(32,000t×4)→大和型3、4番艦(64,000t×2) ・伊勢型、扶桑型(35,0…
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