エディス支援作戦 3
1944年1月7日
午前4時、第二機動部隊旗艦『蒼龍』の艦橋にて待機するバーレンは未だ暗闇に包まれる夜明け前の海を驀進する艦隊を見つめており、その目には大小様々な艦が映っていた。
平時には国力、海軍力の象徴として君臨し、有事の際にはその絶大な攻撃力、防御力を駆使し祖国を守る戦艦。航空機と呼ばれる新時代の戦力を搭載し、その長大な射程と威力を武器に近年急速にその地位を上げた航空母艦。そしてそれらを守護する護衛艦艇。その護衛艦艇も戦艦に次ぐ砲撃力と航空母艦以上の速力を誇る重巡洋艦、小回りの効く小型な船体を生かして雑多な任務に就きつつも魚雷という戦艦でさえ致命傷を負う矛を備えた駆逐艦、そして時にはその駆逐艦を引き連れ敵艦隊へと突撃し、また時には艦隊の前衛として偵察任務などに就く軽巡洋艦。どれもがこの世界には無い……、否無かった艦である。これが一度牙を向けばその矛先の土地は焦土と化し、いかに精強な軍団でも壊滅するだろう。何人も抗うことのできない、絶対的な力。
(……もう3年早く、門が開いていたらどんなに良かったことか)
この戦力を見るとそう思わずにはいられないバーレン。既に2つの大陸を失陥し、国家連合軍最後の砦である東大陸ですらその半分を失っている。その点では確かに門が開くのは遅かったのだが、何だって遅すぎるよりはマシなのである。バーレンが前向きに考え直そうとしていた時、後ろから声がかかった。
「どうかしましたか?」
振り返るとそこには濃紺の第一種軍装に身を包み肩に参謀飾緒を着けた人物が立っていた。
「これは青木少将」
声の主の方へ向き直り敬礼をする。他国の軍人とはいえ階級が上の者に対して敬意を払うのは万国共通である。況してや今作戦からは同盟国軍となるためバーレンにも既に客人という感覚は無い。
「なかなか見る事の無い眺めでしたからつい、魅入ってしまいましてね」
「なるほど」
二人が無言で見つめる先には、黎明時に合わせて行われる攻撃に備え整備が進められている攻撃隊があった。昨年末より増産、配備が進められた新型艦爆の彗星を先頭に準備が進められ、その後ろには度重なる改修により半ば別の機体へと進化を遂げた零戦五二型が並んでいる。栄えある一番槍となる第一次攻撃隊を率いるのは、艦爆の神様とまで言われる江草隆重中佐だ。
やがて一番機を務める艦爆が新たに設置された油圧式射出機へ固定され発艦準備が整い始める。この新たに設置された油圧式射出機は英軍より技術供与された物に加え米軍のH-4C型カタパルトの技術も解析、導入し日本の規格に独自改良した型である。もっともこの時代の日本製品の例に漏れず量産型は性能が低下、調子が良い時でさえH-4C型の8割程度の性能に留まっている。また射出機の運用方法も定まっておらず、古参搭乗員が多い正規空母では射出機自体を必要と考える者が少なく使用頻度も低く留まっている。
ところが空技廠や艦政本部に籍を置き常に次世代の航空技術を見据えて研究を続けている技術者や、新設された小型改装空母航空隊の搭乗員においては全く逆の意見が大勢を占めていた。現在、小型改装空母の搭載機は従来の複葉機から全金属製単葉機へと変化しつつある。それに伴い離艦に要する滑走距離も伸び一度に発艦できる機数が大幅に減ってしまったのだ。船団護衛程度の任務ならこれでも構わないのだが、日本海軍上層部ではこれらの改装空母を補助任務のみで使用するのではなく、可能であれば正規空母の肩代わりをも担える存在にしようと企んでいた為事態は複雑化し、新型機を運用できるようにする為の改装案が出されては却下され出されては却下されというサイクルに陥っていた。そしてその問題を一挙に解決するかと思われた油圧式射出機だが、これまた運用方法について一悶着起こり今に至っている。
上記の問題も含め、今回の作戦は異世界における初の大規模作戦、という位置付けのみならず初の新型機および射出機運用の重要なデータとなる戦闘であるため、各員には不安や重圧もあるであろう。しかし山口提督の下で猛訓練を積んでいる第二機動部隊将兵は皆やる気に満ち溢れていた。
(それにしても……)
甲板で整備を続ける艦載機を眺めていたバーレンが振り返り心の中で呟く。
(これだけの技術格差を持ったままではいけない。一刻も早く彼らの技術を習得して対等な立場にならなければな……)
その視線の先では射出機の用意が整ったのか、先頭にて待機していた彗星が射出機に固定される。一番機を務めるのは蒼龍艦爆隊の中では最古参、日中戦争初期から従軍している古村特務少尉の機である。発艦始めの合図と同時に射出機が作動し古村機は一気に加速、前方へと飛び出す。次に続くのは第一次攻撃隊隊長と蒼龍艦爆隊隊長機を兼ねる江草中佐機であり、これまた歴戦の搭乗員であるため危なげなく発艦に成功する。その後も射出機の運用限界である30秒置きに1機ずつ、それが2基あるため15秒に1機が蒼龍から飛び立って行く。やがて艦爆隊も残すところ3機のみになり、その中の1機が射出機へと固定される。
その操縦席に座り武者震いをしているのは、蒼龍艦爆隊の中でも最若手士官となる轟剛志少尉であった。数年前に搭乗員となったため日中戦争には参加しておらず、今回が初の実戦となる。無論、母艦搭乗員としてそれ相応の訓練は積んでいる上、後部座席に座る偵察員の上村飛曹長は実戦経験の豊富な古参搭乗員であるため晴れて第二航空戦隊の蒼龍へと配属された。しかし飛び慣れた地とは違いここは異世界、緊張するなと言う方が無理だった。何度も深呼吸を行い、各種計器を確かめている。
「少尉、今から緊張していたら身が持たんですよ」
その様子に心配した上村が声をかける。轟はそれに対しわかっている、と返すがどう見ても緊張が抜けた様子がない。どうやら彼は名前に反して些か小心者の様である。
やがて轟機は発艦の合図と共に蒼龍から打ち出される。轟は射出機が生み出す強力なGを感じつつ虚勢をはるために艦橋に向け敬礼をする。しかし甲板横のスポンソンより発艦を見ていた整備長はのちにこう語っている。
「あまりに顔が青白いもんだから、幽霊が操縦してるのかと思ったぞ」
やがて甲板から離れた轟機は若干沈み込むが、すぐに揚力を得て浮き上がる。今回は対艦用の500kg爆弾では無く250kgの陸用爆弾を積んでるとは言え、前の九九式艦爆と比べ1.5倍近い馬力になっている発動機は大型化した機体をも軽々と持ち上げる力を持っていた。
無事に発艦に成功した轟機は上空の編隊に合流するべく上昇を開始する。眼下では戦闘機隊の発艦も続いており、既に一番機は上昇を開始していた。第一次攻撃隊には直掩機を除いた蒼龍搭載機の半数が当てられており、その数零戦9機、彗星18機となっている。
「やはり何度見ても壮観だな」
いくらか落ち着きを取り戻した轟は編隊を組みつつある攻撃隊を見てそう呟く。実際、日本海軍の中でも優秀な搭乗員が集まった二航戦航空隊は見事な編隊を組み、一路エディス市へと向かう。
「少尉、少しは落ち着きましたか?」
「ああ。なんとかな」
後席の上村が航法作業を行いつつ話しかけてくる。万が一編隊から逸れてしまったら頼れるのは自機の航法だけであるため、念には念を入れて作業を行う。
「れっきとした海軍士官なのですから、もっと泰然と構えなければ部下にも示しがつきませんよ」
痛いところを突かれた轟は返答に困るが、全くもってその通りなので黙って肝に銘じるしかない。気まずい空気を変えようと、轟は話題を変える。
「ところで飛曹長は実戦経験が豊富なんだったな?こう何か、実戦でのコツみたいなのは無いのか?」
既にこの質問自体が轟の不安の現れなのだが、本人はそれに気づいていない。その不器用さに失笑しつつ上村は答える。
「そうですな……。あまり気負わず、視野を広く、まあ教えられた事を全て出来れば一人前です。それと……」
「それと?」
「これは私の教官の言葉なのですが、対空砲に撃たれた時の心持ちと言いますか、その様なものです。『ビビるんじゃ無い、当たるやつ以外は全て外れるから気にするな』と」
よくよく考えれば何を当たり前の事を、と思い轟は思わず吹き出しそうになる。
「まあ、気持ちの持ち様ですわ。実際撃たれてみるとこれがまた、妙に納得するもんです」
轟はそんなものか、と思いつつも信頼を置いている上村の言葉だけあり心の片隅に留めておこうと決意した。
その後も順調に飛行は続き、エディス市までの行程の半分ほどを過ぎたが一向に敵が現れる気配がなかった。轟は編隊から遅れない様に気を付けつつも、周囲を見る余裕が出てきた。周りには同じく蒼龍から発艦した彗星が見事な編隊を組み飛行しており、その後方には僚艦である飛龍から発艦した新型艦攻の天山が付き従っている。その上空には援護に着く零戦が合わせて18機、警戒に当たっていた。若干数に不安はあるが、第一次攻撃隊では奇襲効果も望める他、米艦載機も同時刻に攻撃を行うためこれで良しとされた。
その米軍だが今作戦には正規空母4隻を投入しており、その内容についてもヨークタウン級2隻に新型のエセックス級2隻と第二機動部隊の規模を凌駕していた。その搭載機数は合計で350機を超えており、第一次攻撃隊だけでも戦闘機41機、艦爆98機、艦攻58機の計197機となっている。また機体についても、エセックス級2隻は新型のF6Fヘルキャット、SB2Cヘルダイバー、TBFアヴェンジャーに統一されておりその期待は高い。もっとも、エセックス級2隻に関しては搭乗員も新型、もとい新人が多いためキチンと戦力としてカウントできるかどうかは微妙なところである。そのためニミッツ太平洋艦隊司令官は経験豊富な搭乗員が多い日本の二航戦やハルゼーの下で猛特訓を積んだヨークタウン級2隻と組ませることによってその技量を底上げしようと企んでいた。
やがて東大陸が見えようかという位置にたどり着いた時、無線機から江草隊長機の声が聞こえてきた。英国や米国企業の技術指導を受け、ライセンス生産したこの無線機は以前とは違い編隊飛行時ならばかなり明瞭に聞こえる様になっている。
『アオ01より編隊全機へ。前方の機影は米軍機だ。誤射するなよ』
前方には米軍機およそ100機が編隊を組んで飛行していた。その数、二航戦航空隊のおよそ倍だが、編隊の方は若干不揃いかつ間延びした印象を受ける。
「こりゃあまた、すごい数だ」
編隊を観察していた轟が思わず呟く。これほどの規模の編隊は日本が保有する全正規空母合同の演習以来である。
「しかし練度は微妙そうだ。陣形がどことなく崩れて見える」
「どうやらこいつら、アメさんの新型空母の搭載機の様ですな。まあ搭乗員もピカピカの新人が多いんでしょう」
編隊を観察していた上村がのんびりとした口調で話すが、轟には区別がつかない。
「よく分かったな」
「識別番号を見ればわかりますよ」
轟はどこで米新型空母の識別番号など知ったのかと疑問に思ったが、古参下士官の情報網の広さを思い出しその疑問は口に出さなかった。
「しかし4隻から発艦したには少し数が足らんですな。おそらく手練れのヨークタウン級の搭載機を先に行かせたのでしょう」
上村は相変わらず呑気な口調でそう言ったが、轟は改めて上村の情報量と考察力に感心し、彼とペアを組んでる間に出来るだけ学び取ろうと誓うのであった。
やがて巡航速度で勝る二航戦航空隊は米軍機を追い抜き去る。日本の艦載機の中で最も足が遅いのは天山だが、それでも巡航速度は180ktを超える。対して米軍のアヴェンジャー艦攻は126ktと54kt、約100km/hの差がある。
「しかしアメさんの搭乗員は喧しいですな」
上村はそう言いながら無線機の周波数を日米共用の帯に合わせる。今回は誤射等を防ぐために共用の無線周波数を設定しているのである。本来ならば緊急時のみの使用になるはずだが、日本機の編隊が近づいたため何機かがこちらに話しかけてきている様子だ。しかし日本軍の場合は通常、目標上空もしくは交戦状態になるまでは基本的に無線封鎖を行う事になっているためこの様な私的な交信には応じることが出来ない。仕方なく先導機がバンクを振って応答するのみとなった。
やがて米編隊を追い抜いた二航戦航空隊は進路を北へ修正する。これは攻撃担当区域であるエディス市北部へ敵占領地を迂回して侵入するためであり、同時にエディス市を文字通り死守している第2軍司令部上空を通過することで士気の鼓舞を狙ったものである。
「間も無く機首方向にエディス市手前の山が目視できるはずです」
その言葉に轟は目を凝らす。昼間に星が見えると言い張る戦闘機乗りほどではないが、轟も搭乗員として必要十分な視力は持っていた。1分後、上村の言葉通り水平線から山頂が顔を覗かす。
「見えた。進路修正なし」
轟は心の中でさすがだな、と思いつつ機体の最終確認を行う。幸いな事に心臓部たる熱田エンジンは軽快に動いており、残燃料や操縦系統にも問題はない。
『アオ01より編隊全機、間も無く目標上空だ。気張っていけ』
その無線を合図に編隊は増速、機種毎に分離する。制空を担う零戦隊12機は攻撃隊直掩の6機を残し上昇を開始、高度6000mを目指す。それに合わせて急降下爆撃を行う艦爆隊も上昇を開始し、艦攻隊は爆撃に向け編隊を密集させる。事前の振り分けでは艦攻隊が後方の砲兵陣地を、精密攻撃が可能な艦爆隊は周囲の対空陣地および市街地に潜む装甲車両を担当する事となっている。もちろんこれ以外にも事前に発見されていなかった重要度が高いと思われる目標があれば、小隊毎に目標変更が認められていた。
やがて目標としていた山を越えると目の前には地峡地帯が広がっていた。そう。これが現在、激戦が続いているエディス市であった。南北市街地の間にはこれまた小山があり、こちらからは南部市街地を見ることはできないがそれでも大きい街であった。轟が目を凝らして観察をしていると、市街地上空に黒点が見受けられた。
「敵機か!」
思わず唾を飲み込んだ瞬間、上空に陣取っていた零戦が加速していく。さすがにベテラン揃いの戦闘機隊の動きは素早かった。轟が確認できた黒点は10機程度、しかも対地支援を行っているため高度も高くない。やがてこちらの接近に気づいたのか、慌てたように編隊を組み向かってくる。しかしベテランどころか実戦経験済みのエースまでいる蒼龍戦闘機隊にはまるで赤子の手をひねるも同然であった。機上無線を利用した巧みな編隊機動と、各々が実戦で磨き上げた技を組み合わせた戦闘にガーランド機は翻弄され続け、8機いたガ軍戦闘機は成すすべもなく落とされていった。
「すげえ……」
その戦いぶりに思わず心の声が漏れた轟だが、改めて気を引き締める。戦闘機隊は完全にその役目を果たしたのだ。これで攻撃を失敗したら笑い者である。
『アオ01より艦爆隊。敵戦闘機の脅威は無くなったぞ。各小隊ごとに攻撃開始。いいか、これで外したら艦戦隊に顔向けできんぞ。心してかかれ!』
江草中佐はそう言うと小隊を引き連れ西へと向かっていく。この頃には事態を把握した対空陣地が高射砲を撃ち上げてくるが、その狙いは甘かった。江草機はと言うと、高射砲による爆炎を見るや否や針路を変更、対空陣地へと急降下を開始した。江草機の僚機も見事な機動でそれに追従し急降下を行う。そして敵陣地が機関砲で応射する間も無く3発の陸用爆弾は陣地内で炸裂し断片を撒き散らした。
(とんでもない飛行隊に配属されたもんだ……)
あまりの見事な攻撃に轟は舌を巻きつつ内心で苦笑する。だがこのまま観戦している場合ではなかった。先程の江草機の攻撃を掻い潜った高射砲が攻撃を再開し始めたのだ。攻撃を受けた事で逆に敵の砲手も冷静さを取り戻したのか、今回は比較的まともな弾幕が形成され始めていた。
「こりゃあ、早めに投弾した方が良さそうだ」
今のところ至近弾は無いものの、撃たれると言うのはやはり気持ちの良いものでは無い。轟は震える手で操縦桿を握りつつ、先程上村に言われた教えを心の中で呟き目標を探す。しかし目立つ高射砲陣地へは古参小隊が率先して向かっており、中々目標が決まらない。その間にも彗星の急降下爆撃により度々爆煙が吹き上がっており、上空からの視界は悪くなる一方であった。さらに敵陣奥へと侵入した艦攻隊がワイバーンの火炎による延焼を避けるためわざと偽装網を撤去していた砲兵陣地へと爆撃を開始し、新たな煙を生産し始めるものだからたまったものでは無い。轟がどうしたものかと悩んでいたその時、江草隊長機からの無線があった。
『アオ01よりアオ16。市街地中央で信号弾だ。そっちへ行け』
思わぬところから助け舟があった轟は無線で了解の意を示すと針路を変更する。その信号弾とやらはすぐに目視する事ができた。
「戦車隊が街道に侵入しているみたいですな」
後部座席から冷静に観察していた上村が報告する。事前情報では友軍はまともな対戦車兵器を持たないと聞いていたためすぐさま援護に向かうことにした。
『アオ16より小隊、街道上の戦車隊へ攻撃する。全機続け!』
震える声を押し殺すため大声で命令した轟は慎重に進路を修正する。ちなみに轟が率いる小隊は轟機の他に、上村と同期、つまりは大ベテランの新庄飛曹長機と新人である尾崎機が付き従っており、新庄機からは快活な声で、尾崎機からは轟同様、震え声を押し殺した声で返答が来た。
「いくぞ!」
急降下を知らせるバンクと共に轟は操縦桿を押し倒す。強烈なGを感じつつエアブレーキを展開、さらに射爆照準器を覗き込み微調整を行う。
「2000…1800…」
高度を読む上村の声が遠くに聞こえる中、轟は必死に浮かび上がろうとする機体を押さえつけていた。
「1200…1000…800…600」
「てっ!」
爆弾倉から爆弾が放たれると同時に操縦桿をめいいっぱいまで引く。急降下時よりも強いGに耐えつつ機体を水平まで持って行く。それと同時に後方から爆音が聞こえて来た。
「車列前部に命中!お見事です」
上村のその言葉に内心で歓喜の声を上げる。初の実戦での命中弾。これほど自信になるものはないであろう。やがて新庄、尾崎両機とも攻撃を終え上空へ集結する。新庄機は危なげなく投弾に成功し、見事敵戦車1台を撃破、2台を行動不能にしていた。対して尾崎機は最後に照準がずれ、街道脇の建物に直撃させてしまっている。ちなみに轟が放った爆弾はと言うと、先頭で発砲中であった敵戦車の前に落下、その一台を完全にスクラップにしていた。しかしあまりにも炸裂位置が近すぎたためその車両が盾になった形で他の車両への被害は生じていなかった。
『アオ01よりアオ16、良くやった』
見られていたのか。轟はそう苦笑しつつ感謝の言葉を述べる。その頃には大半の機が攻撃を終えており、中には戦闘機隊に混じって機銃掃射を行なっている機体もあった。
「しかし敵さん、思いのほか無警戒でしたな」
上村の言う通り敵の直掩は戦闘機8機のみであり、さらにその8機も上空への警戒が疎かになっていたのである。一応これには理由があるのだが、流石の上村もその理由までは推察できなかった。
やがて30分も経ったであろうか。敵陣から撃ち上げられる高射砲は皆無となり、後方の砲兵陣地にも沈黙が訪れた頃、荒らしに荒らし回った第一次攻撃隊は母艦への帰路に着いた。今回の攻撃での損害は天山1機のみ、それもエディス市東方への不時着に成功したことにより搭乗員は全員生還する事ができた。まさに完勝である。そして時を同じくして地上では1つの作戦が発動しようとしていた。
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。約半年ぶりの投稿となり、応援していただいている皆様には大変ご迷惑をおかけしました。今後も安定な投稿間隔となりますがよろしくお願いします。