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大日本帝國異世界奮闘記  作者: 大福
第一章 勃発
13/35

各国の反応と門

10/24追記:サンタマリアをオセアノへ変更しました。

 1943年10月27日、朝方から昼頃にかけて行われたガーランド帝国による一連の攻撃で日本は多大な損害を被っていた。東京空襲では実に263名の尊い命が奪われ、各建造物の多くも破壊されている。さらに一部の敵機は東京港にも飛来し、日本国籍の商船1隻が沈没、3隻が大破、イギリス国籍の商船も1隻が撃沈されている。その他にも迎撃に当たった陸海軍航空隊の戦闘機19機、反撃に当たった三航艦の航空機12機が撃墜され、多数の機体が要修理となった。


 しかしその後に行われた三航艦による反撃で日本は敵空母2隻と駆逐艦1隻の撃沈に成功し、なんとか面目を保つ事が出来たのも事実である。


 これらの一連の行為に対し日本政府は攻撃してきた国家はガーランド帝国であり、それは異世界の国家であることを発表。更にこれを知った国民の怒りも尋常では無く、各地で政府に対しガーランド帝国打つべしとのデモが行われる始末であった。この事も踏まえ日本政府は、ガーランド帝国から相応の謝罪と賠償が無い限り開戦も辞さないとの公式見解を述べている。


 この発表に対し各国の反応は様々であったが、まず特筆すべきは米国であろう。米国も日本と同じ日の9:25(西部標準時で前日の16:25)、突如として現れた第2の門(・・・・)より出現したガーランド帝国海軍による奇襲を受けていた。攻撃を受けたのは西海岸の都市、オセアノ。こちらに現れたガーランド帝国艦隊は空母を擁していなかったため航空機による空襲は無かった。しかし運が悪いことに艦隊そのものの発見が遅れ、『我国籍不明の艦艇より砲撃を受ける』との第一報が送られてきたのは、オセアノが攻撃を受ける30分前というものだった。ちなみにこの報告はオセアノ沖合50km付近を航行中であった商船から送られてきたものであり、この商船は必死の逃亡を図ったものの、ガーランド帝国の駆逐艦によって撃沈の憂き目を見ている。また、緊急報告を受け取った米海軍はカタリナ飛行艇を飛ばして確認を行うほか、近くの港にいた艦艇の出港準備を急がせるが到底間に合うものではなかった。


 ガーランド帝国艦隊による艦砲射撃の第一撃はいきなりオセアノの港に降り注ぎ、漁船や商船を破壊する。砲撃は徐々に内陸部に移り、海辺に広がる市街地はことごとく破壊の対象となった。艦砲射撃はおよそ30分に渡って続けられ、やっとの事で駆けつけてきた米駆逐隊がガーランド帝国艦隊との交戦に入ったものの、駆逐艦1隻を撃沈、重巡と思しき艦に魚雷2本を当て大破、漂流させたところでガーランド帝国艦隊は門の向こうへ早々と撤退していったため致命的な打撃を与えられずに終わった。


 この一連の攻撃で受けた被害は、死者428名、負傷者2437名、漁船・商船沈没14隻、大破26隻、さらに迎撃に当たった駆逐艦2隻が大破、1隻が中破するなど、日本が受けた被害よりも大きなものとなった。当然の事ながらこれを知った米国民は激怒し、世論も許すまじガーランド帝国の一色となる。とある新聞社のアンケートによると、なんと92%もの国民が開戦に賛成と答えている事からも怒りを伺えるだろう。当然、米国政府もこのまま放っておく事は出来ず、日本政府の声明と同様のものを発表すると共にハワイに駐留していた太平洋艦隊を急遽西海岸に呼び戻し、門の周辺で警戒に当たらせている。


 日米両国は事前にガーランド帝国の情報を得ていたため、素早く声明を出す事が出来たが他の国はそうもいかなかった。トゥーレ王国や異世界の情報は現在まで秘匿されており、それを知るのは日米2国とスパイによってある程度の情報を手に入れていたイギリス、ソ連のみであったことから各国政府は大いに困惑することとなる。


 まず初めに動いたのがイギリスだった。イギリス政府は東京で沈められた商船の賠償をガーランド帝国に求めると共に日米両国にさらなる情報開示を要求する。また、当然の事ながらあのイギリスがこの事態をただの傍観者で済ませるはずがない。既にインド洋に展開している東洋艦隊の一部に動きが見られる事からもその姿勢が伺える。しかしソ連は情報開示を求めると共に太平洋艦隊の動きを活発化させているものの、当分の間は激戦が続く独ソ戦に集中するほかなく目立った介入はしてこなかった。同様に独伊など枢軸国も大戦の真っ最中であり、情報は欲したものの軍事介入に関しては興味を示していない。同様にスイスやスウェーデンなどの中立国も、当事国ではないとは言え自国領周辺で大戦争が起きている現状、こちらに構っている余裕は無かった。


 環太平洋地域を見ても、満洲は当面自国内の開発と整備に力を入れる方針である上、台湾、朝鮮は現在も日本領なので動きはない。シャム(タイ)も介入する力はなく、南米諸国もあまり積極的ではなかった。オーストラリアは一時は興味を示したものの、既に本国の要請でアフリカへ出兵しており兵力の余裕がないことや、日本と共同戦線を張ることを嫌ったため派遣を見送っている。結局のところ門をくぐり異世界へと向かう事を決定したのは日米2ヶ国に加えイギリスのみ、しかも東洋艦隊の一部というのが今の現状である。


 異世界に進出するにあたりまず初めに行われたのが先の海戦における敵漂流者の確保と情報の引き出しである。撤退までの時間的余裕があった房総半島沖では生存者は全て救助されており現場に残っていたのは沈んだ船の残骸のみであったが、一過性の攻撃ですぐ様撤退して行ったオセアノ沖では大破していた重巡が処分されずに漂流していたためこれを確保、これは後に重要な情報源となる。それと同時に日米両国は異世界に関する情報については2国間で得た情報を共有する旨の条約を締結、さらにこれにトゥーレ王国が加わり3ヶ国条約となり、それに付随して対異世界情報局、通称DIAなるものが設立された。また、門周辺にはすぐさま両国の海軍艦艇が出動し封鎖に当たっており、日本側の門ではなんと長門、陸奥が交代で砲門を向けているなどの厳重っぷりであった。さらに各鎮守府や泊地からは敷設艦や敷設艇が総動員され、機雷や防潜網の敷設が行われている。


 捕虜に関しては日本側で2名(本土上空で撃ち落とした機のパイロット)、米国側で36名(全て重巡の乗員)、合計して38名を確保している。これらの捕虜は防疫の処置も兼ねて太平洋上の無人島へ一時的に移送され、そこで各種検査を行っている。今のところ未知の細菌や感染症は確認されていないが、念のため今しばらくは隔離される予定である。またそれと並行して尋問も行われ、様々な情報を得る事ができた。また、これにトゥーレ王国がもたらした情報を加えるとガーランド帝国の概要が朧げながら見えて来ることとなった。


 ・ガーランド帝国は代々、皇族の中から選出される『総統』と呼ばれる者によって統治される立憲君主制の国家である

 ・『総統』は国家の君主であり、他の国家の皇帝や国王と同列である

 ・人口は1億5千万ほどで、その他に植民地(いわゆる西大陸、中央大陸)の人口を合わせれば4億を越す

 ・国土面積はオーストラリアの3分の2程であり、肥沃な土地が多く、鉱物も豊富で産出量も多い。

 ・非常に強力な軍隊を保持し、総兵力は1500万(植民地に動員をかければこれ以上)を越す

 ・科学技術を基礎として発展しており、魔法技術は持ち合わせていない

 ・非常に厳格な身分制度を保持し、下から順に奴隷(奴隷の中にも格差はあるらしいが)、2等市民、1等市民、準貴族、下級貴族、上級貴族と皇族、総統となっている。

 ・この中で皇族と上級貴族は世襲であり変わる事はない

 ・市民等級を上げるには何かしらの功績(軍人ならば軍功、技術者、研究者なら新発見やそれに属するもの、商人や農民は売り上げや生産量など。あくまでも一例)があれば良い。なお、市民から貴族に上がるには下級貴族5名もしくは上級貴族3名による推薦が必要(皇族による推薦ならば1人でも可)

 ・奴隷の中では等級を上げる事ができるが、市民になるのは余程のことがない限り不可能

 ・1等市民以上が選挙権、準貴族以上が被選挙権を持ち、1つの議会を運営する

 ・議会は元老院と貴族院の2つを擁し、この内元老院は上級貴族以上によって構成され、完全な世襲制である

 ・その他に各省庁を治める大臣がおり、主要4大臣(内務、外務、軍務、財務)は総統の指名によって、その他は元老院と貴族院の中から選出される。主要4大臣は上級貴族、その他の大臣は下級貴族の位に準ずる

 ・元老院は一応、総統の解任権を持つ(全議員の5分の4の賛成。元老院には皇族と懇意な者が多く実質的には不可能との見方が強い)

 ・税は上級貴族以上には課されないが、上級貴族以上は一定期間、なんらかの形によって国に尽くさなければならない(例えば元老院議員や大臣となる、省庁にて役職を持つ、軍務に就くなど)

 ・皇族は人種ではなく、神人種である(なお、この事については捕虜の中で最高位に位置したバルグ中佐(準貴族)も詳しくは知らなかった)

 ・ガーランド帝国は突如として異世界(アーレンウェルト世界)に転移し、総統の命によりガーランド帝国存亡のため各国を併合することを決定している


 などなど多岐に渡った。また、ガーランド帝国の軍備についてはどの捕虜を頑なに口を閉ざしていたが、それは思わぬ方向から解決することとなる。当初、重要書類などはすべて燃やされていたと思われた鹵獲重巡「スラースト」の一室から1039年版軍備年鑑(地球で言うジェーン海軍年鑑に陸空を足した様なもの。ガーランド帝国の転移前の世界にて発行されていた)が見つかったのだ。これをバルグ中佐に問いただしたところ「数年前のものだ。まさか私物で持ち込んでいる奴がいるとは……」と苦々しく答えている。


 何はともあれ、思わぬお宝を得た日米両国並びにDIAは狂喜乱舞し、早速これの分析に取り掛かると同時に、門の材質や構造並びに門の向こう側の調査も始めることとなった。まず初めに行われたのが門の材質の調査だが、これは思わぬ障害に阻まれ遅々として進まなかった。と言うのも研究のために門の一部を削って材質を確認しようとしたのだが、どの工具を使っても傷一つつけることができない。それどころかヤケクソになって撃ち込まれた戦艦の主砲弾でさえも傷が付かなかった。また、異世界同士を繋げる方法についても何一つ解明できない。そもそもの原理自体が想像もつかないため解析は難航している。


 また、門の調査と並行して進められたのが門の向こう側の確認だが、これについてもいきなり生身の人間を突っ込ませるわけにもいかない。アーレンウェルト世界の人間が地球に順応できたからと言って逆が成り立つとは限らないからだ。また、船で乗り込んでも当然、機雷やらなんやらが敷設されているだろうし、航空機もネット等が貼られていれば危険だ。そこで一計を案じたDIAはトゥーレ王国使節団が乗ってきた船の船員の中にいた半魚人と呼ばれる種族に、海中からこっそり侵入し、向こう側の海水や大気を回収して欲しいと依頼した。彼ら半魚人は見た目はヒトの形をしており普段は海辺で生活しているものの、手足の指の間にはヒレがあり泳ぐのがとても上手い。さらに長時間の潜水も可能で海中でも視界が効くとのことから、この任務には最適であったのだ。これを快諾したトゥーレ王国使節団並びに半魚人達は直ぐに取り掛かろうとしたが、ここで一つの問題があった。それは二式飛行艇の搭乗員が目撃した、転移時に発生する謎の光だ。もし門を潜るだけで発生するならば当然、ガーランド帝国に発見され非常にまずい事になる。しかしどの道避けては通れない道なので、危険を承知の上このまま決行することが決まった。


 そして1943年11月2日、ついに作戦は発動し選抜された5名は採取ビンと護身用の武器を持って門をくぐっていった。


 結果から言うと、この作戦は事前の計画通り成功した。海水や大気の採取は勿論のこと、当初心配された門の発光についても確認されていない。回収された海水と大気もすぐ様分析に回され、今のところ問題は確認されていない。また謎の光については、門を通る物体の質量に比例して光量も大きくなる事が確認されている。これは実際に大小様々な廃船を無人で突っ込ませ、向こう側で待機している半魚人達に観測してもらった結果より判明したのだ。さらに重要な情報はそれだけではなかった。地球側では数千キロ離れている門だが、異世界側では実に互いに視認できる位置にあると言うのだ。この報告に驚いた日米両国は将来的に行われる門の制圧に向けて、軍事的作戦の擦り合わせを行う統合作戦課を設立している。


 ちなみにこの統合作戦課、現在はただの擦り合わせの場に過ぎないが、異世界へ到達した暁にはあちらの国家も参加した連合軍の戦略目的の決定の場となるのであるが、それはまだまだ、先の話である。


 閑話休題


 またその他にも門の向こう側の警備情報を得るために日米海軍から選出された下士官(もちろん志願者の中からである)が同行した調査も行われている。その結果、門の向こう側には機雷と阻塞気球らしきものが敷設されている事の他、警戒の艦艇も平均して3隻ほどが確認されている。


 その後も潜入調査は幾度となく続けられ、約2週間にも渡る調査の結果、門を越えるに当たっての生物学的問題はない事が確認された。この報告を受けた両国はついに、異世界側も含めた門周辺海域の制圧を目的とした作戦を立案する。これはシベリア出兵以来の大規模な日米が協力する軍事作戦であり、両軍の調整に手間取ったがなんとか話をまとめることが出来た。作戦は3段階に分かれており、第1段階として潜水艦による潜入と警戒艦艇の撹乱、第2に少々荒っぽくなるが、廃船を大量に突っ込ませての航路啓開とそれに続く掃海艇による除去、阻塞気球の破壊、さらに後列としてまたもや廃船を突っ込ませる。そして最後に主力艦艇の突入である。この作戦は日本ではそれぞれ啓一号、啓二号、啓三号作戦と呼ばれ、アメリカではひとまとめにオペレーションフロンティアと呼び、それぞれをフェーズ1、2、3と呼称している。作戦決行の日時は12月8日、日本時間で午前6時。ちょうど異世界でも日が昇る頃合いだ。


 そして運命の12月8日、午前6時。それぞれの門の前に集結した決行部隊は一斉に行動を開始した。

前話に引き続きあらすじ&予告みたいなもの。


今回は地の文ばかりで読みにくいですがご了承下さい。それと作戦名はあまり納得がいってないので何かいい案があればご意見お願いします。

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[良い点] 昨日見つけて読み始めました。 なかなか見ないタイプの切り口で面白いです。 [一言] あとがきで気にされていた作戦名ですが、 https://www.globalsecurity.org/m…
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