うみをみたいでんしゃくん
でんしゃくんはじぶんのしごとがだいすきでした。
とおくにいきたいひとたちをのせて、みんなをいきたいばしょまではこんであげるのです。いきたいばしょのことをかんがえてにこにこしているひとたちをのせると、でんしゃくんもおもわずにこにこします。
それからかえってくるひとたちをのせて、みんなをおうちまではこんであげるのです。かえってくるひとたちは、いきたいところにいけてよかったなあ、はやくみんなにおしえてあげたいよ、おうちがなつかしいなあ、とにこにこしているので、やっぱりでんしゃくんもにこにこできました。
だからでんしゃくんはいつもいっしょうけんめいはたらきました。いつもにこにことはたらくでんしゃくんをみると、みんなもやっぱりにこにこになりました。
でんしゃくんははたらきものだったけれど、でんしゃくんがはたらくまちは、どんどんひとがへっていって、でんしゃくんがはこんであげるひとは、だんだんとへっていきました。きょねんよりも、もっとまえよりも、どんどんひとがへってきて、とうとうでんしゃくんにはだれものってくれなくなりました。
しゃしょうさんはいいました。
「でんしゃくん、でんしゃくん。いままでいっしょうけんめいはたらいてくれてありがとう。けれど、このまちは、もうだれもいなくなってしまったよ。でんしゃくんがはこんであげるひとは、いなくなってしまったんだ。だから、でんしゃくんのおしごとは、もうきょうでおしまいだよ。
いままでいっしょうけんめいはたらいてくれたごほうびに、でんしゃくんのおねがいをなんでもひとつきいてあげる。なんでもいってごらん」
でんしゃくんはいいました。
「しゃしょうさん、ぼく、海がみたいなあ」
しゃしょうさんはにっこりわらっていいました。
「ようし、わかった。でんしゃくんを海につれていってあげるよ」
しゃしょうさんはえきちょうさんにいいました。
「えきちょうさん、でんしゃくんに海をみせてやりたいのです」
えきちょうさんはうーん、とうなっていいました。
「海かあ。むずかしいなあ。でも、でんしゃくんのおねがいなら、かなえてあげなくちゃいけないな。よし、やってみよう」
えきちょうさんはえきいんさんをみんなあつめていいました。
「さあ、みんな。でんしゃくんのために、いっぱい木をあつめてこよう」
えきいんさんたちはたくさんの木をあつめてきました。えきちょうさんも、しゃしょうさんも木をはこんできました。
みんながもってきた木をつむと、でんしゃくんよりももっとずっとたかくなりました。
しゃしょうさんはみんながあつめた木を、じゅんばんにでんしゃくんのまえにならべます。でんしゃくんはその木のうえをそうっとすすみます。しゃしょうさんが木をならべて、でんしゃくんはゆっくりゆっくりすすみます。
でんしゃくんはうまれてはじめて森のなかをすすみます。森のなかでは、しかやりすがでんしゃくんをみてびっくりしてこえをかけます。
「ねえ、きみ。だれだい。いったいどこへいくんだい」
でんしゃくんはにっこりわらっていいました。
「ぼくはでんしゃくんだよ。海をみにいくんだ」
しゃしょうさんはみんながあつめた木を、じゅんばんにでんしゃくんのまえにならべます。でんしゃくんはその木のうえをそうっとすすみます。しゃしょうさんが木をならべて、でんしゃくんはゆっくりゆっくりすすみます。
でんしゃくんはうまれてはじめてはしをわたります。はしのうえではくるまがでんしゃくんのよこをはしりながらこえをかけます。
「やあおおきいくるまだなあ。そんなにめのまえに木なんかならべて、いったいどこにむかっているんだい」
でんしゃくんはにっこりわらっていいました。
「ぼくはくるまじゃなくて、でんしゃだよ。これから海をみにいくんだ」
しゃしょうさんはみんながあつめた木を、じゅんばんにでんしゃくんのまえにならべます。でんしゃくんはその木のうえをそうっとすすみます。しゃしょうさんが木をならべて、でんしゃくんはゆっくりゆっくりすすみます。
でんしゃくんはうまれてはじめて、とかいのなかをすすみます。とかいではまちのひとたちが、でんしゃくんにこえをかけます。
「ねえ、きみ、こんなところをとおってどこへいくんだい」
でんしゃくんはにっこりわらっていいました。
「海だよ。ぼくは海にいくんだ」
しゃしょうさんはみんながあつめた木を、じゅんばんにでんしゃくんのまえにならべます。でんしゃくんはその木のうえをそうっとすすみます。しゃしょうさんが木をならべて、でんしゃくんはゆっくりゆっくりすすみます。
でんしゃくんは山をのぼります。いままでのぼったどんな山よりもたかい山でした。しゃしょうさんはふうふういいながら、でんしゃくんのまえに木をならべます。
でんしゃくんはふうふういいながら、いっしょうけんめいのぼります。
しゃしょうさんはでんしゃくんをはげまします。
「この山をこえれば、海だよ」
でんしゃくんは、にっこりわらっていいました。
「海かあ。たのしみだなあ」
そしてとうとうでんしゃくんは山のてっぺんにとうちゃくしました。山のてっぺんからは、おおきなひろい海がみえました。
でんしゃくんは、うまれてはじめて海をみたのです。
海はとってもおおきくてひろかったので、でんしゃくんはびっくりしていいました。
「しゃしょうさん。ぼく、海をはじめてみたよ。海ってこんなにおおきいんだねえ」
「ぼくはうまれてはじめて森をとおったし、とかいをとおったし、はしもわたったよ」
「とってもとってもたのしかった。ありがとう、しゃしょうさん」
でんしゃくんはにっこりわらっていったので、しゃしょうさんもにっこりしました。
昔所属していた部活誌に載せた童話です。生まれて初めて書いたオリジナル童話。編集しながら懐かしくなりました。
読んでいただき、ありがとうございました。




