↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

うみをみたいでんしゃくん

作者: 八束天音
掲載日:2015/10/30

 でんしゃくんはじぶんのしごとがだいすきでした。

 とおくにいきたいひとたちをのせて、みんなをいきたいばしょまではこんであげるのです。いきたいばしょのことをかんがえてにこにこしているひとたちをのせると、でんしゃくんもおもわずにこにこします。

 それからかえってくるひとたちをのせて、みんなをおうちまではこんであげるのです。かえってくるひとたちは、いきたいところにいけてよかったなあ、はやくみんなにおしえてあげたいよ、おうちがなつかしいなあ、とにこにこしているので、やっぱりでんしゃくんもにこにこできました。

 だからでんしゃくんはいつもいっしょうけんめいはたらきました。いつもにこにことはたらくでんしゃくんをみると、みんなもやっぱりにこにこになりました。



 でんしゃくんははたらきものだったけれど、でんしゃくんがはたらくまちは、どんどんひとがへっていって、でんしゃくんがはこんであげるひとは、だんだんとへっていきました。きょねんよりも、もっとまえよりも、どんどんひとがへってきて、とうとうでんしゃくんにはだれものってくれなくなりました。

 しゃしょうさんはいいました。

「でんしゃくん、でんしゃくん。いままでいっしょうけんめいはたらいてくれてありがとう。けれど、このまちは、もうだれもいなくなってしまったよ。でんしゃくんがはこんであげるひとは、いなくなってしまったんだ。だから、でんしゃくんのおしごとは、もうきょうでおしまいだよ。

 いままでいっしょうけんめいはたらいてくれたごほうびに、でんしゃくんのおねがいをなんでもひとつきいてあげる。なんでもいってごらん」

 でんしゃくんはいいました。

「しゃしょうさん、ぼく、海がみたいなあ」

 しゃしょうさんはにっこりわらっていいました。

「ようし、わかった。でんしゃくんを海につれていってあげるよ」



 しゃしょうさんはえきちょうさんにいいました。 

「えきちょうさん、でんしゃくんに海をみせてやりたいのです」

 えきちょうさんはうーん、とうなっていいました。

「海かあ。むずかしいなあ。でも、でんしゃくんのおねがいなら、かなえてあげなくちゃいけないな。よし、やってみよう」


 えきちょうさんはえきいんさんをみんなあつめていいました。

「さあ、みんな。でんしゃくんのために、いっぱい木をあつめてこよう」



 えきいんさんたちはたくさんの木をあつめてきました。えきちょうさんも、しゃしょうさんも木をはこんできました。

 みんながもってきた木をつむと、でんしゃくんよりももっとずっとたかくなりました。



 しゃしょうさんはみんながあつめた木を、じゅんばんにでんしゃくんのまえにならべます。でんしゃくんはその木のうえをそうっとすすみます。しゃしょうさんが木をならべて、でんしゃくんはゆっくりゆっくりすすみます。



 でんしゃくんはうまれてはじめて森のなかをすすみます。森のなかでは、しかやりすがでんしゃくんをみてびっくりしてこえをかけます。

「ねえ、きみ。だれだい。いったいどこへいくんだい」

 でんしゃくんはにっこりわらっていいました。

「ぼくはでんしゃくんだよ。海をみにいくんだ」



 しゃしょうさんはみんながあつめた木を、じゅんばんにでんしゃくんのまえにならべます。でんしゃくんはその木のうえをそうっとすすみます。しゃしょうさんが木をならべて、でんしゃくんはゆっくりゆっくりすすみます。



 でんしゃくんはうまれてはじめてはしをわたります。はしのうえではくるまがでんしゃくんのよこをはしりながらこえをかけます。

「やあおおきいくるまだなあ。そんなにめのまえに木なんかならべて、いったいどこにむかっているんだい」

 でんしゃくんはにっこりわらっていいました。

「ぼくはくるまじゃなくて、でんしゃだよ。これから海をみにいくんだ」



 しゃしょうさんはみんながあつめた木を、じゅんばんにでんしゃくんのまえにならべます。でんしゃくんはその木のうえをそうっとすすみます。しゃしょうさんが木をならべて、でんしゃくんはゆっくりゆっくりすすみます。



 でんしゃくんはうまれてはじめて、とかいのなかをすすみます。とかいではまちのひとたちが、でんしゃくんにこえをかけます。

「ねえ、きみ、こんなところをとおってどこへいくんだい」

 でんしゃくんはにっこりわらっていいました。

「海だよ。ぼくは海にいくんだ」



 しゃしょうさんはみんながあつめた木を、じゅんばんにでんしゃくんのまえにならべます。でんしゃくんはその木のうえをそうっとすすみます。しゃしょうさんが木をならべて、でんしゃくんはゆっくりゆっくりすすみます。



 でんしゃくんは山をのぼります。いままでのぼったどんな山よりもたかい山でした。しゃしょうさんはふうふういいながら、でんしゃくんのまえに木をならべます。

 でんしゃくんはふうふういいながら、いっしょうけんめいのぼります。



 しゃしょうさんはでんしゃくんをはげまします。

「この山をこえれば、海だよ」

 でんしゃくんは、にっこりわらっていいました。

「海かあ。たのしみだなあ」




 そしてとうとうでんしゃくんは山のてっぺんにとうちゃくしました。山のてっぺんからは、おおきなひろい海がみえました。



 でんしゃくんは、うまれてはじめて海をみたのです。

 海はとってもおおきくてひろかったので、でんしゃくんはびっくりしていいました。

「しゃしょうさん。ぼく、海をはじめてみたよ。海ってこんなにおおきいんだねえ」


「ぼくはうまれてはじめて森をとおったし、とかいをとおったし、はしもわたったよ」


「とってもとってもたのしかった。ありがとう、しゃしょうさん」



でんしゃくんはにっこりわらっていったので、しゃしょうさんもにっこりしました。




昔所属していた部活誌に載せた童話です。生まれて初めて書いたオリジナル童話。編集しながら懐かしくなりました。

読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] お話の流れが良かったですね。 [一言] 面白かったですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。