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絵を描く黒猫  作者: よろず
おまけ
55/56

黒猫子猫

リクエストにお答えして、後日談的、子供のお話。

油っぽい絵の具の匂い。

ペインティングナイフに油壺。

イーゼルに立てかけられたキャンバスには、描きかけのママの絵。

ママ用のアトリエには、絵の道具が転がってる。

お家のお部屋は綺麗だけれど、ここはパパも弄らない。ママの為の場所。

私はよく、そこに忍び込む。誰もそれを怒ったりしないから、絵を描くママの後ろ姿を体育座りで見つめるの。


「百合絵?」


私に気が付いたママが、振り返ってふんわり笑ってくれる。この瞬間が大好き。


「これ、この前パパとお出掛けした公園?」


集中してる時はお邪魔したらダメだから、ママが振り返ってくれた時にはすかさず話し掛ける。

そうするとママは私に近付いてきて、絵の具だらけの体で抱き締めてくれるの。

小学生になった私の事、ママはもう抱っこは出来ない。だけどぎゅってされるのも好き。


「そう。秋と百合絵と遊んだ公園。」

「お砂場遊び、楽しかったね?」


にっこり笑って、ママは頷く。


「これ、百合絵でしょ?こっちはパパ?」


こくんて、ママは頷いた。

ママの絵に、たまに入れる私とパパ。それを見た時のパパって、すんごく嬉しそうな顔になるの。

かたんて音がして、アトリエに誰か来た。


「百合絵、ここにいたか。」


ママのパパ。私のおじいちゃん。

おじいちゃんに駆け寄って、抱っこしてもらう。いつもより高くなって、これも好き。


「田所と千夏さんが百合絵を探していたぞ。」


田所は透。パパのパパじゃないけど、おじいちゃん。

千夏はパパのママ。私のおばあちゃん。だけど二人は名字が別々。なんでって、パパに聞いたら結婚してないからって言ってた。

大人は色々なのねって言ったら、パパに笑われた。


「ママも行こう?」


おじいちゃんに抱っこされたまま、ママを誘ったら、ふんわり笑ってママが頷いた。

おじいちゃんの腕から滑り降りて、私はママと手を繋ぐ。もう片方の手はおじいちゃんと繋いで、私達はアトリエから出た。


「百合絵さんはアトリエにいらしたんですか?」


透がリビングのソファから振り向いて、おじいちゃんに聞いてる。そうだよって私が返事をして、ソファに駆け寄った。


「百合絵ちゃん!おばあちゃんと遊びましょー!」


透のお隣で、にこにこ笑うおばあちゃん。パパとおんなじ笑顔で優しいの。いつもたくさん遊んでくれる。


「待て。もう飯出来る。百合絵、ママと一緒に手を洗ってこい。ママの絵の具も落としてくれるか?」

「はーい。」


台所から顔を出したパパ。

パパのお仕事はメイクアップアーティスト。お休みの日には、パパが美味しいご飯を作ってくれる。

パパがいない時のご飯はおばあちゃんが作りに来てくれるけど、ママも私も、パパのご飯が大好き。

ママの手を引いて、洗面所で手を洗う。

タオルを濡らしてママのお顔を拭いて、絵の具を落とすの。私のお仕事。

にこにこ笑って、ママはじっと私にされるがまま。終わるとおでこにありがとうって、ちゅってしてくれるのが好き。


「パパ!今日はグラタン?」


パパのグラタン大好き!

駆け寄って手を伸ばしたら、パパが抱っこしてくれて、顔中ちゅっちゅされる。くすぐったいけど、これも好き。


「華、お腹空いた?」

「空いた。」


ママも来て、パパは私を抱っこしてるのと逆の手で、ママをぎゅってする。それでママにもちゅっちゅっちゅってする。たくさんする。私よりも多い。

全くもう、子供の前でもらぶらぶなんだからって、呆れちゃうわ。

ママはパパといるの、とっても嬉しそう。ママの嬉しいお顔、私も大好き。

チリンて、足下で鈴の音。

黒いにゃんこのイチゴちゃん。私のお姉さん。

パパからママへのお誕生日のプレゼント。パパとママの足にスリスリして、パパに降ろしてもらった私にもスリスリしてくる。


「イチゴちゃん。手を洗ったから、ご飯終わるまで待ってね。ご飯の後に遊んであげる。」


イチゴちゃんとお約束して、私はご飯が並んだ机に向かう。

ママはまだ、パパに捕まって来れないみたい。パパはママが大好き。たまに、絵を描いてないママを私と取り合いっこする。だけど私は大人だから、パパにママを譲ってあげるの。


「全く、秋くんは子供の前でも相変わらずですね。」


溜息を吐く透。もっと言ってあげてちょうだい。


「ラブラブ良いじゃない!百合絵ちゃんも仲良し嬉しいでしょう?」

「そうだね。らぶらぶ好き。」


おばあちゃんにお返事して、私はおじいちゃんに抱っこで椅子に乗せてもらう。もう一年生だから自分で座れるのに、おじいちゃんは私を抱っこするの、好きみたい。


「百合絵、ふーふーして食べるんだぞ。」

「うん!いただきます!」


にこにこ笑うおじいちゃんに頷いて、私はパパの作ったグラタンを食べる。

ママとパパは、ああなるとしばらく来ないから、先に食べちゃうんだから。


美味しいご飯を作るパパ。

絵を描く大好きなママ。

二人のおじいちゃんとおばあちゃん。

黒猫のイチゴちゃん。

お休みの日によく集まる私の家族は、みんなにこにこ幸せ笑顔。

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