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絵を描く黒猫  作者: よろず
二部
52/56

エピローグ

 それから、華のパパは頑張った。

 日本に居られる年末年始。離れてた時間取り戻そうってするみたいに、なるべく華と過ごそうとした。華もパパも二人きりは怖がって、必ずオレも一緒だったけど。三人であちこち出掛けた。

 華パパがうちのアパートに入り浸ってたの、田所がこっそり迷惑そうだったのが笑えたけど。

 大晦日と正月、華パパと田所も一緒にうちのアパートで過ごして、みんなで初詣も行った。華パパが華に振袖買って来て、それを着た華を見て、華パパはまた泣いた。



 三年になったオレと華はまた同じクラスで、オレは教師達に華の世話係認定された。別に良いんだけどね。

 相変わらずオレと華は堂々と学校でもイチャついて、それを観察されて過ごす学校生活は、なんだかんだ楽しかったし、華も学校で笑えるようになってた。

 華パパは、ちょこちょこ日本に帰ってくるようになって、一生懸命華との距離を埋めた。





 今オレは、ドレスを着た華の髪を結って、メイクしてる。

 ピンクの桜の花びらが裾に舞ってるエンパイアラインのドレス。ベアトップだから、白いボレロで露出は抑えた。

 髪型は、コテも使ってゆるふわな感じにした編み込みを右サイドに垂らしてる。化粧は、あんまり濃くしなくても華は十分綺麗だから薄め。でもちゃんと、ドレスに負けないように。


「華。キスして良い?」


 ピンクの口紅塗る前に、ちょっとだけ。

 華が笑って頷いてくれたから、ゆっくり舌を絡めて愛情の確認のキス。

 ノックが聞こえたけど、誰かわかってるし、足りないから続ける。


「秋くん。そろそろ時間です。」


 呆れて溜息吐いた田所に振り向いて、オレは笑って返事した。


「華、すげぇ綺麗。……愛してるよ。」


 口紅塗って仕上げた華を点検して、オレは蕩けた顔して笑う。

 そんなオレに、華も甘くて可憐な花みたいな笑顔を向けてくれる。


「私も。秋、愛してる。」


 ダークグレーのスーツ姿のオレの腕に、華は右手を添えた。

 オレが華をエスコートして連れて行ったのは、華の個展の会場の入り口。そこで、婚約の発表する事になってる。

 オレと華は婚約無しでそのまま入籍しちゃうつもりだったんだけど、婚約発表して、結婚式もしてくれって華パパに頼まれた。

 金持ちには金持ちの事情があるらしい。有名人って大変だなって、母親と笑った。


「華、とても綺麗だ。」


 華パパはそう言って、また泣いてる。今からそんなんじゃ、結婚式はもっと大変だろうな。


「パパ。笑って?」


 そんな父親を見て、華も笑ってる。

 二人は時間掛けて和解して、また親子に戻れた。

 華は外でも笑ってくれるようになって、無意識で他の男誘惑しちゃうから、オレは気が気じゃない。だから婚約指輪、ちょっと頑張ったんだ。

 ピンクゴールドで花形のダイヤの指輪。今も、華の薬指で光ってる。

 なんとか涙を止めた華パパに連れられて会場に入ったら、余りのフラッシュに驚いた。笑顔浮かべて写真撮られて、会場にいるはずの母親を探す。母親は、田所と一緒にいた。

 母親と田所は、まだ結婚はしてない。田所と一緒に飲み行った時にどうなってんのか聞いたら、亡くなった方には中々勝てませんって苦く笑ってた。でも母親は、田所の前では弱音吐いたり、泣いたりする事もあるらしい。

 母親が心配で、結婚してもあのアパートで華と三人で暮らす提案したら、田所に反対された。母親の事は任せろだって。どうすんだろって思ってたら、オレが華のマンションに引っ越した後に、母親は田所と一緒に暮らすみたいだ。まぁ、そういう事だろ。


 写真撮られたり質問されてるオレらの後ろには、でっかい一枚の絵。この個展のメイン。

 東華(あずまはな)が初めて描いた人物画。華のマンションのあの部屋で、定位置で毛布に包まって眠ってるオレの絵。

 華が付けた絵のタイトルは


 "私だけのものでいて"


 この絵で、逆プロポーズされちゃった。


「華、愛してる。ずっと、一緒にいよう。」


 写真撮られるのにも飽きて来て、オレは華の耳元で囁いた。

 嬉しそうに笑って頷いた華の手を取って、婚約指輪にキスを落とす。

 余計にフラッシュが焚かれて眩しくなったけど、好きなだけ撮ったら良い。


「オレは、華だけの王子様だよ。」



 二人微笑み合って


  いつまでも、幸せに。

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