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絵を描く黒猫  作者: よろず
二部
50/56

18

 イチゴケーキ作り終わって、居間では母親と華パパがぽつぽつ何か話してる。ここは、同じ経験してる母親に任せとこうって決めて、オレはそのまま夕飯の支度する。

 流石に包丁使うのに華貼り付いてると危ないかなって思ったけど、華が離れたくなさそうな顔してるから、そのままにする事にした。ちょっと動き辛いけど、まぁいっかって、いつもより気を付けて動く。

 粗方料理も作り終わって、華パパの方の涙や話しも落ち着いてきた頃に、玄関の呼び鈴が鳴った。

 華背中に貼り付けたまま玄関開けたオレに驚いた田所は、なんか両手に色々持ってた。スーツ姿のサンタが来たってちょっと笑って招き入れたら、居間にいる華パパに気付いた田所が目を見開いて固まった。


「あれ?もしかして田所さん、華のパパが日本帰って来たの、知らないの?」


 秘書が社長の予定知らない訳ないよなって思ってたから、逆にこっちが田所の反応に驚きだ。


「何故こちらにいらっしゃるんですか?社長は年末年始はモナコで過ごされると伺っておりましたが、予定の変更をされたのですか?」


 田所から荷物受け取って、中身確認して酒は台所に置いた。

 立ったままで聞いた田所に、華パパは気まずそうに視線を逸らしてる。


「いや、その予定だったんだが…こちらが気になってしまってな。直前で変更して日本に帰って来た。」

「そうでしたか。本日そのような報告は受けておりませんが、今井にも何も知らせていないという事でしょうか?」

「まあ、そうなるな。」

「では、私の方で報告しておきます。モナコで出席予定だったパーティーはいかがなさいますか?」

「年明けまで日本で過ごそうと思う。全て、キャンセルしてくれ。」

「畏まりました。では、その様に予定の変更を伝えておきます。」


 仕事モードの田所が華パパにお辞儀して、多分電話するんだろう、また靴を履いてる。

 大変ですね、って声を掛けたら、田所は苦笑して、仕事ですからって呟いて外出て行った。



 電話終わった田所が戻って来て、いつも通りハンガー渡したら、少し躊躇ってる。


「田所、私の事は気にするな。いつも通りにすれば良い。」

「……では、失礼致します。」


 社会人、大変なんだな。

 華パパの許可をもらった田所が背広脱いでラフな格好になって、机にこれでもかってくらいご馳走並べてパーティー開始した。まぁ、ただ飲み食いするだけだけど。

 テレビでクリスマスの特番見ながらみんなで飯を食う。華はやっぱり表情固くて、オレの膝で自分では食おうとしないから、自分も食いながら華にも食わせた。

 華パパと田所に料理ベタ褒めされて、ちょっと照れる。

 そういえばって、華もオレも二学期より成績上がったって話して、田所のお陰だってお礼言ったら、田所が優しい顔で笑ってくれた。思わずって感じで田所が華の頭撫でたら、華がちょっと笑って、田所はひっそり感動してた。それを見た華パパは、切ない顔。

 なんだか不思議な雰囲気のパーティーで、イチゴのケーキ食ってからスーツのサンタがみんなにプレゼントくれた。

 母親と華には、色違いでお揃いのバレッタと母親に高そうな酒。華には黒猫のマフラーと手袋。これは母親と二人で選んで買ったらしい。

 オレにはラジコンカー。フォーミュラのマクラーレンのやつ!華と母親、田所三人からだって!大興奮で大喜びして、オレは組み立てるの楽しみでワクワクした。

 田所には、オレと母親、華三人で選んだネクタイとネクタイピン。

 飛び入り参加の華パパにはないから申し訳ない。

 プレゼント交換も終わって、大人達は酒飲んで、オレは洗い物。手伝いに来た母親に、抜けても良いか聞いたら頭かき混ぜられた。


「ちゃんとすんのよ。」


 勘付いてるっぽい母親の言葉には、無言で頷いといた。



 酒盛りしてる大人の目を盗んで、こっそり家を出た。田所は気付いたっぽいけど、見逃してくれた。

 華にはさっきもらってた黒猫マフラー付けて、手袋は片方だけ。繋いだ手はまたポケットに入れて、二人で黙って華のマンションへの道歩く。


 鍵開けて玄関入って、チェーン掛けといた。


「華、クリスマスプレゼント。」


 部屋入って、ポケットに忍ばせておいたリボンでラッピングされた小さい箱を華に渡した。

 受け取った華が開けて出て来たのは、ピンクゴールドのハート型のネックレス。ハートの中には花を象ったピンクの石が散りばめられてる。


「つけて良い?」


 こくんて華が頷くの確認して、華の手からネックレスを取って華の首に付ける。


「これね、華はオレのものって意味だから。」


 にっこり笑って囁いたら、華が嬉しそうに笑ってくれた。今日は学校の後ほとんど無表情だったから、良かったって安心する。

 寝る準備しようって、いつもみたいに華を先に風呂入らせて、髪乾かしてあげてからオレも風呂入る。自分の髪も乾かして寝る準備してから戻ったら、部屋が真っ暗だった。

 今日父親にも会って疲れて寝ちゃったのかなって、少しがっかりしながら寝室行って、オレはぴきんて固まった。


「秋、クリスマスプレゼント。」


 目を見開いたオレの目の前には、ベッドに座った華。華の首には、オレがあげたネックレスが付いてる。ネックレスがついた首元から肩に掛けて見えるのは、素肌だ。シーツ体に巻き付けて、赤い顔の華。その下どうなってんだって想像して、オレは唾をごくんて飲み込んだ。


「ツリー見に行った時の、オレの言葉…意味、わかってたの?」


 にじり寄って、華をゆっくり押し倒して聞いたら、華はこくんて頷いた。

 真っ赤な顔。濡れた瞳、色っぽい。


「もらって、良いの?」


 唇を触れるか触れないかギリギリで止めて囁くオレを、華はまっすぐ見返してる。


「あげる。たくさん、キスして?」

「わかった。……華、大好き。…愛してるよ。」


 優しく唇重ね合わせて、体中余すとこなくキスして、舌這わせて、オレは華の全部を手に入れた。

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