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絵を描く黒猫  作者: よろず
二部
47/56

15

 土曜は一日、絵を描く華の背中見てた。邪魔にならないように掃除したり、魔法みたいな華の手元眺めたり。

 集中してる華は、飯食わない。睡眠も、限界まで取らない。限界が来たら、ぱたりって寝る。心配にはなるけど、これは邪魔したらいけない華の世界のような気がして、オレは黙って見つめてる。そういう時は、いつでも食えるように、片手で食えるサンドイッチを作って冷蔵庫に入れておく。

 たまに、オレがいるか確認するみたいに華が振り向く時がある。そういう時、オレを見つけた華はほっとしたみたいに笑って、また絵に向き直る。その時の笑顔が、たまらなく好き。オレの存在を望んでくれてる、そんな気がするから。


 土曜が終わって日曜が来て、四時近くに華は筆を止めた。

 オレは定位置で毛布に包まってうたた寝してたけど、かたんって音で気が付いた。目を開けた先で、華は自分の描いた絵をじっと眺めてる。


「綺麗な絵。」


 華の背中越しに見えた絵は、クリスマスツリーに続くイルミネーション。光の洪水があったかい。ツリーがある場所の、冬の冷えた空気。その景色を見た華の感動。それが詰まった絵。

 呟いたオレに、にっこり笑ってから、華は絵の端にサインした。華のサインは、華の名前と百合の花。ママのサインと似せたんだって、前に教えてくれた。

 絵の具だらけの体を綺麗にする為に華がシャワー浴びる間、オレは幻想的な華の絵を記憶に焼き付ける。華が描く、オレとの思い出の絵。それを知らない誰かが買うなんて、変な感じだなってよく思う。


「秋、お腹空いた。」


 風呂から上がった華が空腹を訴えて、オレは冷蔵庫からサンドイッチ出してホットミルクと一緒に華に食わせた。

 髪乾かして梳かしたら一緒にふかふかベッドに入る。

 抱き合って眠るこの温もりと華の匂いに当たり前のように馴染んでる自分に気付いて、華がオレの心の深くに入り込んでるのを感じながら、眠りに就いた。



 目が覚めたら、田所と母親がいた。

 アラームかけ忘れて寝たから、もうそんな時間かってちょっと焦る。


「おはようございます。話には聞いていましたが、実際目の当たりにすると許していて良いのか悩みますね。」


 田所が苦笑で見下ろしてきて、そんな事を言う。

 ベッドの上で、オレと華は手足絡ませて寝てた。夜は毎日一緒の布団かここのベッドで寝て、お互いに体寄せ合って寝るのがもう日常だ。


「服着てんだし、許してていいんじゃないですか?」


 寝起きの掠れた声で言ったオレの言葉に、田所は頭が痛いって言う風に片手で額抑えた。

 欠伸しながらベッドの上で体を起こしたら、華が甘えるみたいに首に腕を絡みつけて来る。


「秋、おはよう。」


 寝起きの華ってやっばい可愛い。ふにゃって笑ってキスしてくれた。


「おはよ、華。可愛い!大好き!」


 きゅうってハグして朝の挨拶してるオレと華を田所は困り果てましたって顔して見てるのがウケる。


「あなた方は堂々とし過ぎです。見せつけられるこちらが困ります。まさか、学校でもこんなに堂々としている訳ではありませんよね?」

「あー、そのまさかです。」


 なんて事だって呟いて、田所は項垂れた。


「まぁまぁ、ラブラブ良いじゃない!華ちゃん、髪の毛やってあげるわ!おにぎり作って来たけど食べる?」

「食う。」

「食べる。」


 二人で伸びして、ベッドから出ておにぎりの朝飯食った。


 着替えて準備終わったら昼過ぎてた。まぁイルミネーションだし丁度良い時間だよなって話しながら、華のマンションの地下駐車場に停めたっていう田所の車向かう。


「田所さんって、BMのイメージだったんだけど、まさかのマツダ。」


 勝手にBMWかプジョーとかかと思ってた。田所の車はマツダのアテンザワゴン。色が白なのはイメージ通りかな。


「マツダの流れるようなフォルムが好きなんです。」


 ピピって車の鍵開けながらの田所の返事に頷く。確かにマツダの車って形が綺麗なんだよな。


「なんかマツダってオレの中で走り屋のイメージ。」

「あぁ。それはインプレッサやセブン、ロードスターって事ですか?」

「そうそう!エイトとかは乗んないの?」

「そうですねぇ…嫌いではないですが、燃費の問題もありますし、こちらの方が乗り易いですよね。」

「あー、エイト燃費悪いって言いますもんね。」


 そんな会話しながら乗り込んだ車内は黒で統一されてた。黒のレザーシート。少し煙草の匂いがする。吸ってるの見た事ないけど、田所は煙草吸うんだな。


「秋くんは、車が好きなんですか?」


 カーナビで目的地セットして、駐車場から出た所で聞かれた。バックミラー越しに見える田所の顔見ながら返事する。


「趣味にしようとは思わないけど、憧れはありますよ。F1とか好きでよくテレビで観てます。」

「私も観てます。今年はレッドブルの一人勝ちでしたね。」

「ですねー。途中マクラーレンも頑張ってたんですけどね。」

「秋くんはマクラーレン派ですか?私はルノーが好きです。」

「あぁ、ルノーっていえばーー」


 思わず興奮して話してた。こういう話し祐介としかしないからすげぇ楽しくて。語り出したら話が尽きないけど、今は母親と華もいるし、キリの良いとこでやめとく。


「秋、楽しそう。」


 興奮して話してたオレを見て、華がにこにこ笑ってる。


「うち男親いないからね。私は車とかわからないし、やっぱり秋も男の子よねー。」


 母親もにこにこして振り向いて来て、興奮したのがちょっと恥ずい。


「もし良かったらチケット取るのでスピードウェイにGTでも観に行きますか?」


 田所の提案にまた興奮しちゃうオレ。行きたい!めちゃくちゃ行きたい!


「すっげぇ行きたいけど、高いじゃないですか。華と母親は行ってもわかんないだろうし。」

「秋と一緒なら、全部楽しい。」

「こんなに興奮してる秋はあんまり見ないから、母さんもちょっと観てみたいかも。」

「チケット代は気にしないで下さい。知り合いの伝で手に入るので、食事のお礼にさせて下さい。」


 華可愛い!って抱き寄せながら、田所の顔の広さに驚く。デパートの次は車関係の知り合い。秘書って顔が広いのかな。



 興味持った母親と華に、田所と二人で車の話ししてたりしたらあっという間だった。

 途中サービスエリア寄って、飯食って、高速下りてからアウトレット寄って暗くなるまで時間潰した。

 イルミネーション、凄かった。流石関東一って言われるだけある。

 キョロキョロしながら歩く華と手を繋いで、後ろを母親と田所がついて歩いてる。二人の事はノータッチにする事に決めたからよくわかんないけど、田所も頑張ってるみたいだ。


 四人で感動の言葉言い合いながら寒い中歩いたのが、なんか家族みたいだなって、思ったりした。

F1は最近のは知りません。

フジでやってた頃まで。ライコネンがイケメンでした…。

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