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絵を描く黒猫  作者: よろず
二部
46/56

14

 テスト前一週間、華はでっかい油絵には手を付けないで、オレと一緒にテスト勉強。

 真面目に勉強頑張るオレらに、鉄人家庭教師がついた。

 オレと華の中間テストの点数聞いた田所からの提案。カテキョ代は夕飯。でも食費はくれてるから、オレが提供するのは手作りの家庭料理。作るのが一人分増えるだけだから特に手間じゃない。

 田所は七時前後に会社から直でうち来て、夕飯食ったら勉強見てくれる。仕事人間は見掛け通り頭良くて、教え方上手くてわかり易かった。こんなに勉強してんの、高校入試以来かもってくらい勉強させられてる。サボると鉄人の目からビームが出る気がしてマジ怖い。

 田所は、遅出の母親が帰って来たら挨拶して、十一時前には帰る。母親が早出と休みの日には、夕飯と一緒に二人でビール飲んだりもする。

 土日はサボって華とデートしようって思ってたオレの企みは、事前に察知した鉄人家庭教師に潰された。

 そんな感じでテスト週間が来て、いつもより問題がするする解けたのにはビビった。これは点数悪くないんじゃないかな。



 金曜日。オレは今、鼻唄歌いながら夕飯の支度してる。

 もうすぐ母親帰ってくるし、田所も来る頃だと思うから、野菜切って下拵え。今日はすき焼きだ!ちょっと奮発して肉はいつもより高いやつ。発泡酒じゃなくてビールも買って冷やしてある。

 華はオレの後ろでずっと絵を描いてる。華も今回勉強頑張ったから、おやつにイチゴのクレープ買い食いして機嫌が良い。


「華?」


 下拵え終わって、母親と田所が帰って来る前にって思って華の前に屈み込む。

 スケッチブックから顔を上げた華が首傾げてるの見て、にっこり笑った。


「キスして良い?苦しくなるやつ。」


 華の身体の脇に両手ついて、覆い被さるみたいな体制で聞く。瞳覗き込むオレを見返して、華はこくんて許可くれた。

 まずは音立てて触れるだけのキス一回。次は唇合わせて長いキス。そんで、忍び込ませた舌を絡めるキス。


「ね、ちょっとだけ、触っても良い?」


 段々我慢出来なくなってきて、確認。いいよって許可もらって、舌絡めるキスしながら右手で膨らみを包む。やわやわ動かして、左手は服の裾から侵入させて腰から背中撫でる。服越しでも固くなってるの見つけて摘まんだら、華が鼻に抜ける甘い声を漏らした。


「華、可愛い、好き。」


 口角上がるの自覚しながら囁いて、舌で顎から首筋伝って下りる。

 チラって上目遣いで見た華は、真っ赤な顔でオロオロしてた。


「最後まではしないけど…怖い?」


 右手は動くのやめないままの確認。真っ赤な華は首を横に振った。


「秋なら、全部大丈夫。」


 このまま、最後までして、溶け合っちゃいたくなる。また絡め合うキスしながら、右手も侵入して膨らみに触れる。このまま取っちゃおうかなってカップに指引っ掛けた所で、玄関の呼び鈴が鳴った。

 もうなんか、止まんなくなって困らないようにって意図したの自分だけど、イラっと来た。だから、見えるか見えないかのギリギリの所に顔埋めて強く吸い付く。


「痛い。」


 華から抗議されたから付いた跡を舐めてごめんねって謝る。

 玄関、開けたくねぇなって思って華をぎゅうって抱き締めてたら、勢い良く開けられた。鍵閉めておけば良かったって後悔。


「秋くん。何をなさっているのですか?」


 床に座って赤い顔の華抱き締めてるオレを鉄人が見下ろした。目から絶対零度ビーム出すあの表情。


「スキンシップ。田所さんビール飲みます?今日はすき焼きですよ。」


 なんでもない顔して、華のおでこにキスする。でも立たない。てか、まだちょっと立てない。

 人の家の玄関先で仁王立ちするスーツの男ってシュールだなって田所見上げてたら笑えた。

 もう一回華のおでこにキスしてから立ち上がる。


「仁王立ちしてないであがったらどうですか?」

「……誰のせいですか。」


 溜息一つ吐いて、脱いだ革靴揃えた田所は玄関上がって居間に行く。ハンガー渡したら、ネクタイ取って背広も脱いで、シャツのボタンも一つ外して楽な格好になった。田所が座るの見て、華を呼ぶ。


「さて先生。生徒達の結果を知りたくないですか?」


 並んで座ったオレと華の顔を見て、田所は頷いた。


「教えて頂けるのですか?」

「もちろん!」


 オレは笑って、事前に手の届く所に用意しておいた二人の答案用紙を差し出した。オレのは、八十点代と九十点代が並んでる。華はなんと、全部九十点代!ちゃんとやれば出来るんだなって、担任が泣いて喜んでた。


「素晴らしいです。秋くんはもう少しなのもありますが、中間よりお二人共だいぶ点数が上がっていますね。」


 鉄人は満足気な顔して笑ってる。田所先生のお陰ですって言って、オレはごますりしとく。本当に感謝してるけど、真面目に言うのはちょっと恥ずかしい。


「お嬢様は、やはり真面目に勉強なされば出来る方なのですね。」


 嬉しそうに笑った田所が華を見たら、華も田所を真っ直ぐ見返してる。いつも田所の事はチラ見かシカトなのに珍しい。


「華。」


 華が自分の名前を口にして、一瞬オレと田所は目を見交わす。


「わたしは、華。」


 意図がわかった田所が目を見開いた。オレも、華が言いたい事がわかって、笑顔になって二人を見守る。


「名を…呼ぶ許可を頂けるのですか?」


 こくんて、華は頷いた。


「とても、光栄です。華、さん。」


 泣きそうな顔で笑う田所に、華はにっこり笑った。

 少しずつ、華が他の人間にも心を許していくのは、すげぇ良い事だ。

 やっぱり今日はお祝いだなって思って、オレは華の頭撫でてから台所行く。

 華はそのまま田所の隣でスケッチブック開いたから絵を描くみたいだ。絵を描く華を優しい瞳をした田所が見守ってた。




 母親帰って来てすき焼き食ったら、華が絵を描くって言い出した。この二週間、絵を描かずに勉強頑張ったし、そろそろかなって予想はしてた。だから、帰る田所と一緒にオレと華もうちを出る。

 明日一日絵を描くだろうから、日曜は直接華の家集合にして、田所とも途中で別れた

 もう完全に冬で、夜は余計に冷える。

 手袋片方ずつ分け合って、素手は繋いでオレのカーキのモッズコートのポケットにご招待。


「寒くない?」

「あったかい。」


 華はポケット気に入ったみたい。

 ふわふわあったかい表情の華とそれ見て幸せ気分のオレ。

 十分くらいの道をゆっくり寄り添いあって歩いた。

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