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絵を描く黒猫  作者: よろず
二部
45/56

13

「ただいまー。」


 バイト終わって帰ったうちの玄関に、オレのじゃない男物の靴。田所、物産展のお供連れて行ってもらえたんだなって思って、ちょっと複雑な気分になる。


「秋、おかえり。」


 靴脱いで上がったら、華が居間から飛び出して来て抱きとめた。ただいまって、ぎゅうってハグ。疲れがぶっ飛ぶ瞬間だ。


「何食って来た?」


 見上げて来る華は、満面の笑顔。お出掛け、楽しかったみたい。


「ウニとステーキ。あとアイス。」

「ウニ食えたの?」

「美味しかった。」

「そっか。良いなぁウニ!」


 話しながら居間行ったら田所と母親がテレビ観ながら座ってた。机の上には物産展の戦利品がたくさんのってる。

 そんで、田所がスーツじゃない。白のストライプシャツにグレーのVネックニット、濃い色デニムで髪もオールバックじゃなくてラフな感じ。眼鏡は一緒だけど、スーツじゃない田所は鉄人じゃなくて人間になるんだなって、くだらないこと考えた。


「おかえりなさい。お邪魔しています。」

「おかえりー!見て見てお土産!」


 二人きりな訳じゃないから出禁はギリセーフかな。田所が視線で聞いて来た気がして、肩すくめて見せた。通じたのか、ほっとした顔しててウケる。


「なんかいっぱい買って来たな。これうまそう。」


 机の上の戦利品漁って、鳥の半身揚げたの見つけた。

 バイト終わりで腹減ってるから、今すぐにでも食いたいくらいだ。今食っちゃおうか悩むオレに、膝に座ってる華が箱を引き寄せてオレに渡して来た。


「お土産。」

「それね、華ちゃんが秋にって買ったのよ。」


 箱の中身はでっかいスイートポテト。

 学校帰り、初めて一緒に食べた焼き芋思い出した。華もそれを覚えてて買って来てくれたのかなって考えたら余計に嬉しくて、華のこめかみにチュッてキスする。


「ありがとう。今食って良い?」

「いいよ。」


 きゅうって抱き締めてから皿とナイフ取りに台所行く。

 聞いたらみんなも食うって言うから、お茶も淹れるかって思ってお湯沸かす。お茶の用意しながら、三人から物産展の話聞いた。

 どうやら、今晩の夕飯蟹らしい。しかも田所の奢りだって。ちょっと協力してやってもいっかなとか思ったオレは調子良いやつなのかも。


「何これ、イカ飯もあるじゃん!食って良い?」


 蟹確認って思って冷蔵庫開けたらイカ飯発見した。うまそう。これも食いたい。


「秋くんへのお土産なので食べて下さい。」

「マジっすか!ありがとうございます!」


 お茶と一緒にイカ飯持って戻って、オレはイカ飯開ける。

 スイートポテトは母親が切り分けてくれてるから、先にしょっぱい物食おうって思った。


「そういえば、華ウニ食ったんだって?魚嫌いなのによく食えたよな?」


 イカ飯頬張って、さっきの玄関での話し思い出して聞いてみた。魚嫌いの華は、生臭いの嫌だって言って中々魚系食ってくれなかったんだよな。


「そうなのよ!試しに少しだけってお願いしたら食べてくれたの。美味しかったわよね?」

「ウニ美味しかった。」


 満足気に頷いた華の頭を偉い偉いって撫でる。今度うちでも魚チャレンジさせてみよう。

 イカ飯は全部オレのだって言うから食い切った。スイートポテトもめちゃうまだった。

 腹が良い感じに満たされて満足したオレはお茶を啜る。

 華がオレの背中背凭れにして絵を描いてて、背中あったかい。


「来週の日曜って田所さん暇ですか?」


 提案したい事があって聞いたら、田所は頷いた。


「休日は暇を持て余すので仕事をしていますが、空けられます。」


 やっぱり仕事人間なんだなぁって再確認して、オレは苦笑する。

 そんな仕事ばっかしてて、楽しいのかな。


「暇なら、四人で出掛けません?行きたい所あって、ちょっと電車じゃ行けないんですよね。」

「何、どこ行きたいの?」


 母親が食い付いて来て、オレはにって笑って答える。


「フラワーパーク。イルミネーション、華に見せたくてさ。遠いから帰り遅くなるけど、どうかな?」

「私は構いませんが、学校は大丈夫ですか?」

「期末テストだし、別にいっかなって。」

「良くありませんね、それは。テストが終わってからであれば車を出しましょう。」


 仕事人間は真面目人間だったか。

 母親はどっちでも構わないって顔して傍観してる。オレは、田所説得出来る気がしない。鉄人顔になってんだもん。


「オレ、土日大体バイトなんですよね。だから、テスト前って丁度休み取ってるし。」

「なら、冬休みにしてはいかがですか?流石にお嬢様を連れ出すのに、学校のテストを蔑ろにさせる訳には参りません。」

「でも冬休みだと混むじゃん?」

「それは仕方ありません。」

「………なら、テスト終わりの日曜。それなら次の日休み前の短縮授業になってるし、月曜は母親も遅出だから帰り遅くなっても問題ない。」

「良いでしょう。その日であればお連れします。」


 鉄人から許可もらって、一安心で息を吐く。

 鉄人怒らせたら無しにされそうだし、期末華にも頑張ってもらわないとだなって、オレは気合い入れた。

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