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絵を描く黒猫  作者: よろず
二部
44/56

12

 華が絵を描くペースにはムラがある。

 一気に何枚も描く時もあれば、一枚をじっくり描く時もある。描かない期間が短い時もあれば、長い時もある。

 先週の日曜日描き上げたマラソンコースの絵のあと、華は三日掛けてもう一枚描いた。

 今日は描かないっていうから、それならデートだって誘ってみた。華が頷いてくれたから、着いてからのお楽しみって言って手を繋いで駅に向かって歩く。

 駅まで半分くらい歩いた所で、オレのスマホが震えた。田所から電話だ。


「もしもーし?」

『今、大丈夫ですか?』

「なんですか?」

『昨日言い忘れてしまったんですが、日曜日にお嬢様が描かれた絵を今日回収しに伺おうと思っています。……秋くんの大切な絵なのではないかと、一応確認しなければと思いまして。』


 律儀な人なんだなって、ちょっと笑う。


「大丈夫ですよ。ちゃんと目に焼き付けておいたんで。欲しい絵もありましたけど、買えないし、置く場所もないです。」

『わかりました。……お嬢様が付けたあの絵のタイトル、ご存知ですか?』

「知らないです。」

『キャンバスの裏にいつも書かれています。あの並木道の絵は、"あなたがいる景色"。それでは、またご連絡します。』

「あ、はい。どうも。」


 電話切れた音聞きながら、顔が熱くなるのが止められない。

 華と繋いだ手とスマホ持った手、両方埋まってて、スマホ持ってる方の腕で顔隠しとく。


「秋?」


 華が呼んでる声が聞こえるけど、落ち着かないとやばい。

 道の端っこに華の手を引いて寄って、ぎゅうって抱き付いて首筋に熱い顔隠した。


「華、好き、大好き。愛してるよ、マジで。」


 ぎゅうぎゅう抱き締めるオレの耳元で、華が笑った気配がして、頭撫でられた。


「秋、嬉しい?」


 これは…もしや、田所の声聞こえてたのかな?


「聞こえてた?」


 頷く気配で、やっぱり聞こえてたんだってわかった。


「嬉しい。ドキドキしてやばい。死んじゃうかも。」

「死んだら困る。」


 本気で返して来た華に、死なないよって笑っておでこにキスして、また歩き出す。これから行く所、きっと喜ぶから、早く行こうって思った。



 電車乗って移動して、程良く暗くなり始めた時間に目的地着いた。

 おっきなクリスマスツリーとイルミネーション。

 まだ早いけど、もう十二月だし構わないかなって、ここにした。


「綺麗。」


 呟いた華は、キラキラした顔で笑ってる。連れて来て良かった。

 しばらく眺めるかなって思って、自販機であったかいココアとコーヒー買ってからベンチに座った。暖を取る用だから、ココアは華に握らせる。

 寒いし、くっついてたいから、ツリーを見つめてる華の肩抱き寄せてくっついた。


「イルミネーション、あちこちでやってるから、色々見たいね。」


 オレの言葉に、華はこくんて頷いた。一番すごい所は車じゃないといけないから、田所味方につけて車出してもらうかなって、こっそり企む。


「華は、サンタさんのプレゼント何が欲しい?」


 クリスマスプレゼント、何が良いかなって参考にしようと思って聞いた。


「サンタは、いない。」


 華らしい答えだ。笑って、こめかみにキスする。


「オレが華のサンタ。何が欲しい?」


 ツリー見てた視線をオレに移して、華は考えてる。


「イチゴ。」


 思わず噴き出した。イチゴ強過ぎ。


「わかった。じゃあ、クリスマスはイチゴたくさん乗ったケーキ食べよう。」


 嬉しそうに華が笑うから、オレも嬉しくなる。

 手作りと買うの、どっちが良いか悩むな。


「秋は何が欲しい?」


 聞かれて、オレはにっこり笑って囁く。


「華が欲しい。」


 プレゼントがあるなら、オレは華が欲しい。華の全部、オレの物にしたい。

 よくわからないって顔で華が首傾げてるから、誤魔化すみたいに笑って、おでこにキスした。


「華、大好き。」

「わたしも秋が大好き。」

「すげぇ嬉しい。」


 冷えた鼻先擦り寄せて、あっため合うようなキスを交わす。

 クリスマス、華が喜ぶようなのを考えよう。華の笑顔思い浮かべて、今からすっげぇ楽しみ!

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