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絵を描く黒猫  作者: よろず
二部
41/56

9

 ふかふかベッドなのに朝飯の匂いがする。寝ぼけながら目を開けたら、華がオレを膝抱えて見下ろしてた。


「華、おいで。」


 腕伸ばして呼んだら華が隣に寝転んで、キスしたくなる。だから、華の上に覆い被さって唇貪った。左手は華の手と指絡ませて、右手は服の中に忍び込ませる。素肌滑らせて柔らかい膨らみに辿り着いて、押し上げるみたいに揉む。

 唇から顎、首筋、舐めて吸って、下りてく。


「あ、あき、…ごはっん、あっきままがぁん」


 突起引っ掻いたら甘く啼く華。舐めたい。邪魔な服捲り上げようとして、後頭部殴られた。


「寝ぼけてサカってんじゃないわよ!バカ息子!」


 いろんな衝撃で撃沈したオレの下から、華が引っ張り出されて連れ攫われた。

 ちょい、オレ、再起不能。

 このまま二度寝して夢の中に旅立つしかないって思って、布団に潜り込んだ。


「秋、逃げても現実よ!直視して起きなさい。ご飯食べるわよー」


 現実、厳しい!

 うがぁって叫びたくなったけど、気持ちだけで我慢。

 起き上がって、朝飯の元へゆく。

 チラッて確認した華は、真っ赤な顔で食パン食ってる。


「……華、ごめん…その、寝ぼけてて、つい…襲いました!」


 男は思い切り良く、土下座だ!

 しかも母親に見られてた。なんて恥。しかも大切な子を寝ぼけて襲うだなんて、どんだけ欲求不満。

 穴があったら入りたい。


「秋。」


 顔あげられなくて土下座キープのオレの頭を華が撫でた。


「秋なら、全部大丈夫。」


 やばい、今度は違う意味で顔あげらんない。顔真っ赤で熱くて、鼻血噴きそう。


「華、大切にするから!そんな煽るような事言ったらダメ!」


 気合い入れて起き上がって、華を抱き締めた。

 そんなオレらを笑って見てる母親。昨夜、どこで寝たんだろ?やっぱ同じベッドかな。三人なら眠れそうだしな。

 脳内で軽く現実逃避しながら、朝飯食った。



 オレらが学校行くのと一緒に母親も出て、うちに仕事の用意しに帰った。

 華と手を繋いで学校向かいながら、自分の理性の限界について悶々と悩む。


「秋、何、悩み事?」


 自分の席座って真っ先に祐介に言われる程、悩んだ。


「昨日さ、うちの母親を捕食者の瞳で見る男に会った。」


 本気で悩んでる方じゃなくて、もう一つの方を口に出す。

 銀縁眼鏡田所。あいつの事も少しは考えなくちゃだ。


「あー、秋のお母さん美人だもんな。再婚すんの?」

「違う。その男、華の絵を"持って行く人"なんだよ。遭遇して、うちの母親に惚れたっぽい。」

「何それ、また面白そうな事になってんじゃん。」


 興味津々の祐介。そりゃ他人事だったらなんでも面白いだろうよ。


「そんな変なやつなの?」


 オレの表情から読み取った祐介の台詞に、オレは頷く。


「嫌なやつ。冷酷銀縁眼鏡野郎。」

「なにそれ?」

「オレがつけた。銀縁眼鏡してたし、あいつは冷酷人間だと思う。」

「ふーん。でもその人、東さんが顔見分ける数少ない人なんじゃねぇの?」


 確かにそうだ。それって、やっぱり何かあったからかな?それとも年月の問題?


「うーん。華が見分けてるって事は、あの人なりに華になんかしてくれてたのかなぁ?」

「ご飯くれてた。」


 絵を描いてた華が呟いた。

 手を止めて、前を向いたまま。


「悲しい顔で、ご飯くれてた。」

「……他には?」

「謝られた。私には、これしか出来ませんって。」

「それがあの高級弁当?」


 こくんて頷く華見て、考える。それって、オレがやってた餌付け作戦と一緒じゃないのかなって。


「誰かが、あなたを救ってくれますように。」

「え?」

「言われた。」

「持って行く人に?」


 今度はこっちに振り向いて、こくんて頷いてる。

 田所の願いなり行動なりは、反応しなくても、華の心には届いてたってことかな。


「華は、救われた?」


 怖いけど、やっぱり聞いてみたかった。

 内心ビクついてるオレに、華はふんわり笑う。


「秋が来た。」


 華が手を伸ばしてオレの頬を撫でるから、オレはその手に擦り寄って、華の瞳を見返す。


「オレは、華の救いになれてる?」


 笑顔でこくんて頷いた華に、オレも笑顔になって、顔を寄せる。


「華、好き。大好き。オレは、何よりも華が大切。」


 唇に二回、触れるだけのキスをして離れた。


「氷の女王の心を溶かしたのは、秋の献身的な愛情でした。」


 隣で頬杖付いてオレと華を眺めてた祐介がそんな事呟くから、そっちに顔を向ける。


「だってさ、東さんって氷の女王っぽくない?魔法溶けて、本来の綺麗な女王に戻りました。みたいな。」


 にって笑う祐介が可笑しくて、オレはぶはって噴き出した。


「お前って、結構メルヘン脳だな。」

「秋のいつでもどこでも花畑脳よりマシ。」


 笑いながら、冷酷人間は取り下げてやっても良いかなって、ちょっとだけ思った。

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