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絵を描く黒猫  作者: よろず
一部
30/56

月曜 5-3

 暴れて落ち着いた華にワイシャツの事話したら、もう捨てちゃおうってなった。

 でもそうすると明日着るのが無くなるから、華の家に取りに行く。


 手を繋いで行った華の家で、絵が三枚無くなってた。

 持って行く人かって思って、台所を確認。やっぱり、りんごやバナナ、食パンが増えて新しくなってる。

 シンクの横には高そうな店の弁当もある。


「持って行く人、来たんだね?」

「そうみたい。」


 あの絵、もっと見たかったのになって、がっかりする。三枚共、オレには大事な絵だったけど、買えないなら仕方ないのかな。何千万とか美術教師言ってたらしいしなぁ。

 しょんぼりしてたら、華に頭を撫でられた。背伸びして手を伸ばしてくる華、可愛い。


「また、描く。」


 ふんわり笑って言われて、オレも笑い返して抱き締めた。


「うん。あの三枚の絵、すっげぇ好き。」


 きゅうって抱き締め合ってから目的のワイシャツ持った。

 華がまたりんごを持って行くって言うから新しいゴミ袋に詰める。今回は食パン二斤とバナナ、高級弁当も一緒。あんまりこの家で飯食うことないし、うちに持って行った方が無駄にならないよな。



 また手を繋いで、うちに戻る。その途中で、気付いた。


「そういえば、持って行く人ってパパの会社の人なんだよね?」


 オレを見上げて、華はこくんて頷く。


「その人、パパと連絡取り合ってるんだろ?」

「………たぶん?」

「華はその人に会わないの?」

「たまに会う。けどほとんど会わない。」

「今回みたいにいつの間にか絵が無くなってるって事?」


 華はこくんて頷いた。

 なぁんか、不思議だな。華の家のクローゼット見た感じだと、父親は華の事嫌ってる訳じゃないと思うんだ。じゃなきゃ華もパパの服に固執しないだろうし…。

 それに、持って行く人。手は出さないけど、最低限の所で見守ってる気がする。その内遭遇出来たら、聞きたい事がある。いつか、父親にも会ってみたいもんだ。


「秋。」


 考えてたからか、眉間に皺が寄ってた。呼ばれて華を見たら、華がオレの真似して眉間に皺作ってる。


「かっわいー!!!何それ、もっとやって!」


 りんごで手が埋まってるから抱き締められなくて、繋いだ手をにぎにぎしといた。

 くすくす笑った華がまた顔真似して、爆笑した後オレも真似する。笑い声上げながら、二人でうちまで帰った。



 うち着いたら夕飯の支度で台所に立つ。また華が背中に張り付こうとしたけど、流石に危ないから止めた。残念過ぎるからぎゅうって抱き締めてから離れる。

 離れた華は、体育座りでオレをにこにこ見てる。合間に振り返って目が合うと、にこって笑ってくれた。


 母親は遅い日だから、夕飯は二人で食った。華には手作り、オレは高級弁当。高級弁当の半分は母親に残した。

 食った後はまた華が膝に座ってきたから、オレはテレビを見たりして過ごす。華はオレの膝の上で絵を描いてた。


「ただいまー。」


 母親が帰って来て、華が立ち上がって出迎える。玄関先でまたぎゅーぎゅー抱き締めてる母親に中入って着替えろって一喝して夕飯あっためる。


 風呂から出て夕飯食う母親を膝に華のせた状態で眺めて、今日学校であった事を報告した。


「それ、犯人はファンクラブとかいうやつの子達だったの?」

「祐介が言うにはそうみたいだ。なんでそんなことすんのかわかんねぇけど…。」


 思い出して、膝の上の華をきゅうって抱き締める。


「結局、オレのせいで、守り切れてない。」


 華の耳元に頬ずりして言ったオレに、手が二本伸びてきた。一本は母親、髪をわしゃわしゃにしてくる。もう一本は華、頬ずりしてない方のほっぺに触って、顔を擦り寄せてきた。


「秋がいてくれるから、大丈夫。」

「………ほんと?」


 こくんて華が頷いてくれるから、こめかみにちゅってして、また頬ずりする。


「ファン心理ってやつなのかしらね?ファンの嫉妬って事でしょ?」

「勝手にファンになって、勝手に嫉妬してんなよ。話した事もないのに。」

「顔が良いのも大変ね。章人(あきひと)さんもライバル多かったもの。私も嫌がらせ、されたわよ。」

「マジかよ。」


 衝撃の事実発覚。

 写真の親父良い男だったもんな。でもこの母親だったら、こっそり倍返しとかしてそう。

 オレの思考呼んだっぽい母親が、負けなかったけどね!って言って胸を張った。流石だ。


「でもま、学校側がそれだけ大騒ぎする事態になったんだったら、怖くなってもう何もしてこないんじゃない?」

「………だと良いけど。」

「あんた達はいつも通りに堂々としてたら良いのよ。」

「わたしは気にしない。」


 母親がにっこり笑って言った言葉の後に、華が言う。

 今まで何されても、華は気にしてなかったよなって思う。でも今回は、トラウマ刺激されるやつだったからたちが悪かったんだ。

 いくら華が気にしなくたって、もうこれで本当に終わってくれよって、星に願いたい気分になった。

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