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絵を描く黒猫  作者: よろず
一部
26/56

土曜 4

 どんより、この世の終わり、曇り空気分でバイトに行く。

 昨日華を自動ドアの向こうに見送ってから、自分の失態を悶々と考えた。

 やっぱ、頭ん中花畑で暴走がまずかったか?

 それともカニバリズム、本気で心配されてるとか?

 考えても答えは出ない。わかってるのは、明日まで華に会えないこと。携帯持ってない華とはメールも電話も出来ない。

 ツライ。華に会いたい。


「おっは。って秋?なんだ、どうした?」


 溜息吐きながら着替えてたら、祐介がびっくり顔を向けてくる。


「別に。」

「別にって、落差激し過ぎんだろ。なんかあった?」

「…………華に拒否られた。」


 びっくり顔が苦笑いに変わった祐介がオレの肩ポンポン叩いて慰めてくる。


「ま、初めては女の子怖いっしょ。焦らずゆっく、いてぇっ」


 最後まで言わせず拳で眉間突く。


「てめぇはそこから離れろ。明日まで華が会ってくんねぇんだよ。」


 ごつんて良い音した額を祐介が片手でおさえてる。

 なぁんだって言いながら祐介も着替え始めた。


「なんだじゃねぇよ。飯も拒否されたんだ。会えないのマジつらい。」


 オレは着替え終わってロッカーに寄りかかる。

 祐介が着替えながら、どんまいとがんばを二回ずつ繰り返してくる。適当でムカつく。


「今日暇ならさ、バイト終わり久しぶりに遊ばねぇ?」

「あー。遊ぶ。」


 イラってなってロッカーから離れてタイムカード押しに行ったら遊びの誘い。

 ここ一ヶ月華にべったりだったし、久しぶりに祐介と遊ぶのもいっかと思って頷いた。



 今日は適当な感じでバイト頑張って、三駅先に遊び行く事にした。新しいカラオケが出来て、割引き券を祐介が持ってるって言うからそこ向かう。

 電車降りて、働いて腹減ったしまずはなんか食うかって改札前のベーグル屋でベーグルサンドとコーヒー注文して腹に詰める。ハンバーガーは散々作ってたから、二人でないわーってなった。

 腹満たされて、何歌おっかなって考えながら歩いてたら呼び止められた。

 茶髪ツンツン立たせてる美容師っぽい男。手に美容室のビラ持ってるから、やっぱ美容師だ。


「オレ、この店で美容師やってんだけど、君、カットモデルやってくんないかな?タダで良いから髪切らせてよ。」


 そう言ったツンツン男が差し出して来たビラには『bloom』って店の名前が書いてある。


「タダは惹かれるけど、これからカラオケ行くんすよ。」


 髪も伸びて来てるし、切りに行かなきゃなとは思ってたけど、カラオケ捨てがたい。

 断ろうとしたけど、粘られた。


「丁度いじり易そうな長さだし、ダメ?良かったら今店暇だし、友達も一緒にタダでやっちゃう!」

「オレもタダ?いいじゃん、秋、髪切ってもらってからカラオケにしねぇ?」


 祐介が興味惹かれたみたいでそう言うから、じゃあ行くかってツンツン美容師について行く。


「あ、オレ加持。君達名前は?」

「オレ佐々木。こいつ寺田です。」

「高校生?」

「そっす。三駅先の北高。」

「マジ?北高?知り合い通ってんだよね。」


 祐介とツンツン美容師が会話しながら、美容院ついた。

 大手じゃなくて個人経営っぽい美容院。でもインテリアとか凝ってて良い感じ。


「いらっしゃいませ。」

「戻りましたー。佐伯さん、この二人、カットモデルで来てもらいました。」


 店入ったらレジ前にいた店員に出迎えられた。ツンツン美容師に佐伯って呼ばれたのは、長いアッシュブラウンの髪をふわふわパーマにしてる女の人。

 華の昨日のふわふわヘアすげぇ可愛かったなって思い出しながら、さりげなく髪型観察。


「超絶イケメン……」


 パーマの店員さんがオレを見上げて呟いた。とりあえず、どもって頭下げておく。めっちゃ視線が熱いけど、慣れてるしスルー。

 ツンツン美容師がちょっと待っててって言って奥に引っ込んだ。

 戻って来たら、後ろにでかい男が一緒にいる。


「いらっしゃいませ。店長の落合です。カットモデル引き受けてくれたんだって?」


 でか穴のピアスして、短髪ヒゲの大人の男って感じの人。

 オレと祐介が頷いたら、お礼言われて、写真を前後に撮らせて欲しいって言われたから了承した。店のホームページに載せるんだって。

 オレはツンツン美容師。祐介はふわふわパーマの店員が切る事になった。

 どんなんが良いか聞かれたけど、任せるからカッコ良くしてくれって言っておく。


「あ、でも、ワックスで作らなくても決まるのが良いっす。」


 華の家に泊まるとワックスないから無造作ヘアになんだよな。そうすると前髪が目にかかって邪魔になる。しょっちゅう掻き上げなきゃいけなくてウザい。


「オッケー。パーマかけたら校則マズイ?」

「良いっすよ。言われても気にしないんで。」

「じゃあトップ長めでパーマかけるね。朝は水だけでも戻るから、ワックスなしで大丈夫だし。」


 ツンツン美容師は頷いて、シャンプー台にオレを連れて行く。シャンプーしてもらって鏡の前戻って、雑誌何が良いか聞かれたから女の子のヘアアレンジのないか聞いた。あるって言うからそれ持って来てもらう。


「寺田くんは美容師目指してたりすんの?」


 オレがそんな雑誌頼んだからか、ツンツン美容師が聞いて来た。


「いや。彼女の髪型、毎朝オレがやってて、次どんなのが良いか参考に。」

「へー、そんなイケメンなのに尽くし系男子?彼女幸せだな。」


 その言葉に、オレは笑う。


「彼女は、オレがブサメンでも気にしないと思いますよ。ほっとくとボサボサの髪にヨレヨレの制服で学校来るような子なんで。」


 華には多分、オレがどんな見た目してようが関係ないと思う。オレが華に向ける感情が本気だったから、相手してもらえたんだと思うんだ。


「それはまた。でも髪毎朝やってあげちゃうくらい惚れてんでしょ。」

「そっすね。惚れまくりです。やばいくらい可愛いんですよ。」

「くあーっ!良いね!高校生!羨ましい!」

「お兄さんだってイケメンじゃないっすか。モテんじゃないですか?」


 ツンツン美容師は世間一般でいうイケメンだと思うんだよな。ナンパしたら高い確立で成功してそう。


「あー、オレはあんまりだよ。今んとこ仕事一筋。寺田くんは読モとかやってそうだけど?」

「まぁ……よく声掛けられますけど、面倒なんで全部断ってんですよ。」

「スカウトってやつ?」

「そっすね。でかいんで、モデルやらないかとか言われます。」

「やんないの?」

「やんないっす。まだ学校生活楽しんでたいんで。」


 チョキチョキ切られながら会話して、パーマ液の準備に店長さんがきた。この人もオレと同じくらい身長ありそう。

 こんな大人の男憧れるなって思いながら見てたら鏡越しに目が合って、にっこり笑われた。


「二人、北高なんだって?」


 店長さんは後ろでツンツン美容師とパーマの店員さんサポートしてる。

 祐介が店長さんの言葉に肯定で答えた。


「うちの店でよくカットモデルしてくれる知り合いも北高の三年なんだ。二人は何年生?」

「二年です。三年には中学ん時の部活の先輩がいますよ。」


 祐介が店長さんと会話して、部活はバスケ部だった話をしてる。

 中学の時はオレもバスケ部だったから、一年の時部活の話題で意気投合して祐介とは仲良くなった。懐かしい事思い出す。


「そういえば、この前来てくれた奏くんの友達、バスケ部でしたよね?」

「あぁ、三人組の?」

「ね、佐々木くんの先輩、名前なんて言うの?」


 ツンツン美容師が言ってるのが祐介の先輩と同じかもって言って、祐介は先輩の名前を答える。

 反応見ると、一緒だったみたいだ。


「センターのでっかい子だよね。この前うち来たよ。」

「マジっすか!すげぇバスケ上手くて、良い先輩なんすよ。」

「確かバスケで大学行くとか言ってたし、相当なんだろうな。」


 共通の知り合いの話題で店長と祐介が盛り上がって、オレもその話を聞く。相当良い先輩らしくて、祐介が褒めちぎってた。



 完成した髪型は、襟足ともみあげが短いトップ長めのクシュっとパーマ。

 祐介は右側刈り上げのツーブロ。

 二人とも満足。

 写真撮られて、また客としてくる約束して店出て、今度こそカラオケ向かう。

 たまたま捕まったカットモデルで知り合いの話が出るなんて、世の中狭いんだなぁなんて話しながら歩いた。

『青の月』の美容師二人登場。

個人的にこの二人、結構好きなんです。

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