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絵を描く黒猫  作者: よろず
一部
23/56

水曜 4

「華、好き、大好き。」


 腕の中には、真っ赤な顔で瞳をうるうるさせながらオレを見上げてくる、珍しい反応の華。

 オレが笑顔で華を抱き締めてるのは、テスト最終日の朝の教室華の席。


「秋、幸せアピール。クラスのやつらもオレも、お腹いっぱい。」


 祐介は隣でそんな事言ってるけど、シカトだ。

 昨日あの後、華は電池が切れたみたいに寝た。絵を描くのって疲れるみたいだ。だからオレは華を腕に抱いて寝顔堪能してたんだけど、いつの間にかオレも寝てた。気付いたら朝で、華を先に風呂行かせて、オレも風呂借りて、二人でリンゴ齧ってから学校来た。

 幸せが溢れて漏れ出して、オレは笑顔がとまんない。

 華の可愛い反応もそれを助長させてる。

 これでもかって見せびらかして、華はオレのもんだアピール大会開催中。誰も華に手を出そうなんて思わなくなればいい。男も、女も。


「華、今日はうち来る?」


 華はちょっと迷ってる。


「今日も絵、描く?」


 こくんて頷いた。


「ならさ、うちで飯食って、それから華のうちじゃダメ?華の好きな物作ってあげる。」


 華はまたこくんて頷く。


「何食いたい?」

「………ネコのオムライス。」

「わかった!テスト頑張ったらウサギリンゴも付けるね!」


 教師が入って来たから、華のおでこにちゅってしてから自分の席に行く。

 祐介がげんなりした顔でオレを見てたけど、シカトだ。



「華!テスト頑張った?」


 帰りのホームルームが終わって、オレは鞄持って華に駆け寄った。

 華がこくんて頷いたから、オレはとろけそうに笑って、また華のおでこにキスする。


「帰ったらウサギリンゴ食おう。」


 華はふわってちょっと笑って頷いた。


「秋。オレ、詳しく聞きたい。」

「今度な。」


 横槍入れて来た祐介には低い声で返しておいた。

 手は、繋ぐだけじゃなくて指を絡めて、満面の笑みでオレは華の隣を歩く。華もなんだか嬉しそうで、オレも嬉しい。


「華、華、華。」


 満開の笑顔で華の顔覗き込む。

 華は首傾げてオレを真っ直ぐ見てくる。


「可愛い。大好き!」


 華は嬉しそうな照れ笑い。

 なんちゅう可愛いさだって、オレは内心身悶える。いや、多分それも表情に漏れ出てると思う。


「秋。可愛い。」

「オレって可愛い?」


 聞き返したら、華は頷いた。


「可愛い。」


 ふんわり笑う華がもう一回言うから、足止めて華をぎゅーって抱き締める。


「華のが可愛い!可愛い過ぎてオレ溶けそう!」


 アイスみたいにどろどろに溶け出しそうな気分。むしろアイスになって華に食われたい!


「溶けるの?」


 びっくり顔の華。オレのバカな言葉、信じてるみたいだ。


「溶ける。アイスみたいに溶けるかも。」


 溶け始めの顔のまま、元に戻らないオレ。


「溶けたら困る。」


 華がマジな顔で言うもんだから、オレはぶはって笑う。


「溶けたら、舐めて。」


 見上げてくる華に顔近付けて、ペロってイチゴ味の唇舐めた。

 バカップル万歳!って叫びだしそうな気分で、びっくりした後赤くなった華の手を引いて歩き出す。

 秋だけど、むしろもうすぐ冬だけど、オレ的には春満開。桜も咲き乱れてる。



 うち着いたら、冷凍しといたご飯でオムライス三つ作った。母親が夜食べられるように一つはラップしておく。

 あとは、華の家で食べられるようにサンドイッチ作ってタッパーに詰める。

 華のはオレが猫。オレのは華がウサギを描いてくれたオムライス食って、制服から私服に着替えて、サンドイッチ持って華の家に向かう。

 オレが動き周るのを華が体育座りでじっと見上げてて、目があったら嬉しそうに笑ってくれた。

 もうなんか、オレの脳内ピンク色。


「それ、動かすの?」


 華の家着いて、着替えた華が昨日描いた絵を動かそうとしてる。

 重そうだし、オレが持ち上げる。


「どこ置く?」

「そこの壁。」


 華が指差した壁際に立て掛けて、近くに新しい真っ白なのがあったから、これいるかなと思って聞いてみる。


「いる。」


 華の答え聞いて、夜空と夜景の絵があった場所に新しいのを立て掛けた。


「これ、布なんだね?」


 華はこくんて頷く。


「華。」


 華が絵を描き始めたら邪魔出来ないから、抱き寄せて華の匂いと柔らかさ堪能。


「くすぐったい。」


 くんくん首筋に鼻寄せてたら、華がくすくす笑って身を捩る。

 逃げるから、オレは追い掛けて、華の白い首筋をかぷりと噛む。びくって動きが止まるから、オレはそこにチュッてキスした。


「お腹空いたの?」


 痛くはしてないから、華はきょとんてしてオレを見てる。そんな華の顔をオレは華の首筋から目だけで見上げる。


「空いた。華食いたい。」


 またとろけそうに笑って、華の唇をペロッて舐める。

 どろどろに溶けるアイスになって、華の口に入って、華の一部になりたい。

 華の髪に手を差し込んで、真っ直ぐ見てくる華の目を見返しながら、長く、長く、唇押し付ける。

 どうしたら、オレの気持ち、とまるんだろ。

 どんどん華を好きになってく自分がとまんない。

 最後にまた、ペロッて唇舐めて、華を解放。

 華の瞳に映るオレは、とろとろに蕩けた瞳してて、そんなオレを見上げる華も瞳が蕩けてる。

 そんな顔されたら、たまんない。我慢出来ない。でも、我慢。


「華、絵、描く?」


 促してみたら、華は真っ赤な顔でこくんて頷いて、オレから離れる。

 ずっとくっついて、溶け合ってしまいたいけど、絵を描く華も好き。

 また定位置に座って華の後ろ姿を眺める。オレは、華をいくら見てても飽きないんだ。

 暗くなり始めた頃に、電気を付けた。華はすごく集中してるのか、それにすら気付いてない。


 トサって音で、オレは眠ってたことに気付いた。

 目を開けた先で、華が丸くなって絵の前で眠ってる。

 絵が、また完成してた。

 今度のは電車の窓からの風景。流れる景色からなんだかウキウキしてる雰囲気が漂ってきてる。人が描かれてる訳じゃないのに、華の絵は華の考えが伝わってくる。

 オレと、母親と、華。三人で買い物に行く時に見た景色だ。

 絵の前に丸くなって眠る華。近寄って髪を撫でる。すやすや、また電池が切れたみたいに寝てる華に笑みが零れた。

 オレは洗面所でタオルをお湯で濡らして、華の顔や手に付いた絵の具を拭う。

 キレイになった華を側に落ちてた毛布にくるんで、使われた事のないだろうベッドに運んだ。ベッドは、先週勉強に来た時いつでも使えるようにシーツ替えておいた。

 起きる様子のない華を横たえて、オレも隣に潜り込む。

 眠る華をぎゅっと腕に抱いて華のほっぺにキスしたら、華は猫みたいに擦り寄って来た。

 柔らかい華の温もりを感じながら、オレも、目を閉じた。

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