表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/48

ぬいぐるみは夢を見る

いい天気だなあ。

 窓の外が明るい。

 ぽかぽかと春の陽気がまぶたを重くする。

 ああ、眠たい。

 ふさふさのからだがじんわりと温まって、もう、起きて、いられない。

 まどろみに、落ちてゆく。


 ぼくはつるです。ぞうのぬいぐるみ。

 ままのためぞぞう団の一員です。

 今日は森林公園に遊びに来ました。

「さあ、あの山のてっぺんの旗のところまで競争だよ」

 ままがよーいどんと走り出しました。

 みんな走りました。ぼくも走りました。

 ふわりふわりとからだが軽く、みんなを追い越して驚いているあいだにてっぺんです。

 一着!?と思ったとたん、ままの手が遠くからうにょうにょうにょと変な音をたてて伸びてきました。旗をつかんだままのからだはしばらく待ってようやく見えました。

 てっぺんに来るとままは「一着はまま」と言いました。

 ままの負けず嫌いはすごいなあ。


 ぼくはつるです。

「つるさんはほんと毛並みがいいねえ」

 ままがぼくをかかえて撫でていると、こぞうちゃんが近寄ってきて「僕はハゲ!」と言って去りました。


 みんなで散歩をしていました。

「あ、つるさんここでちょっと待ってて」ままです。

 何か忘れ物?

 雲を見ながら待っていてもなかなかままは戻ってきませんでした。

 でもぼくは待っています。

 どうしていいのかわからないからずっと待っています。


「つるさーん、つるさーん」

 呼んでいるのはだあれ?

「つるさーん、つるさーん」

 どこ、どこにいるの?

「つるさーん、つるさーん」

 ここですよー。

「つるさーん、つるさーん」

 あ、亀さんだ。


 ぼくたちが駒になって遊べる大きなすごろくを作りました。二部屋と台所、全部使っています。大きなサイコロを転がして一進み、二進み。白馬エリアで一休み。沖縄エリアへひとっ飛び。

サイコロころころ。ふりだしに戻る。えー。がっかりしてふりだしに戻るとぞうちゃん、まま、つかいさん、ドイツさんがいました。

「あれ?」

 マンモさんがやってきました。

 ちゅるさんもやってきました。

『ふりだしに戻るが多すぎる!』

 みんなの声が重なりました。


 また亀さんと出会いました。

 ちっちゃな緑色の亀さんです。

「期待しても何もありませんよ」

 亀さんは言いました。


「今日はこの穴を探検しましょう」

 ぞぞう団の本日の活動は洞窟探検です。

 右へ右へ。右へ右へ。

 ぐるぐると渦巻き状に続く一本道の洞窟でした。

 だんだん渦巻きが小さくなって行き止まりました。

「じゃあ、戻りましょう」


 つかいさんが眉間にしわを寄せていました。

「どうしたんですか、つかいさん?」

「ん、勝負してるんだ」

 つかいさんと向かい合っていたままを見ると、ままも眉間にしわを寄せていました。

 何の勝負?


 またまた亀さんと出会いました。

 前と同じ小さな緑色の亀さんです。

「あのう、亀さん、前にぼくのこと呼びましたよね?」

「……」

「つるさん、つるさんって」

「……」

「何かご用だったんですか?」

「……しょうがないなあ。はい、500円」

「え?」


 いい天気。

 こんな日は濡らしてしまった布団もすぐに乾いてしまうはず。

 ん?

 ぼくはぬいぐるみだからおねしょなんてしません!


 あ、夢を見ていました。

 ずいぶん長く寝ていたような気がするけど外はまだ明るいです。

 あたたかい。

 つい、お昼寝をしてしまいました。

 あたりをみまわしても亀さんはいませんでした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ