7th 超危うい格好
その夜俺は眠れなかった。
当たり前だ。
突然お嫁さんを探せって? しかも複数OK? これが俗に言うハーレムか、笑わせやがって。
笑えない。
笑えねーよ、何かの冗談だろ? 多分このことはメアやリーゼ……リンさんは害無いからいいけど、多分三人にも伝えられる。
王妃になりたいリーゼと、妙に俺に突っかかってくるメアが何もしないなんて事はありえない!
俺の純情……守れるかな?
朝起きてまず、俺は服の乱れが無いか確認した。
異常と思うかもしれ無いけど、寝てる間に既定事項とか作られたらこっちが困る!
「はぁ~……退屈だ」
椅子に座ってお空を眺めるだけの、簡単なお仕事です! って感じだが、
こう毎日続くと――嫌になっちゃうなぁ……
「おはようです。ヨシカゲ殿」
椅子の下からひょっこりとサナが顔を出した。
毎度の事だが――びっくりするからやめろ! 心臓止まったらどうするんだ!
「では今日も占いを始めますので……」
サナは少し顔を赤らめ、
「そこの窓のカーテンを閉めてくださると助かるのですが……」
「? 良いけど」
俺は部屋のカーテンを閉め、椅子に戻って来ると――
「サナ!?」
椅子の上でサナがくったりと寝そべっていた。
人差し指を軽く舐めながら、上目遣いでじっと見つめている。
……って言うか! 格好がヤバい、サナは背中を上にしているのでまだ
何とかなってるが、その姿は一糸まとわぬすっぽんぽんである。
健康色な肌が、肩から背中――プリッとした何か……太もも、膝裏からふくらはぎをかけ、足裏の指先まで――まさに上から下までそっくり見えると言うやつである。
椅子の下を見ると、いつも羽織っている黒いマントが脱ぎ捨ててあった。
もしかして、この子も……
「ヨシカゲ殿~♡」
サナが椅子の上でゆっくりと寝返りを打ち、
「にゃ~お……♡」
両手を猫のポーズって言うのか、肩の辺りで曲げ――ゴロンと全身の向
きを変え、椅子の上で仰向けになった。
「ゴロゴロ……にゃ~ん……♡」
サナは仰向けになりながら、猫のような声を出し……お腹を撫でていた。
「ヨシカゲ殿、私だって恥ずかしいんですから早く甘えに来てください」
サナは椅子の上に姿勢良く正座し、俺の方に身体を向けた。
「……………」
サナの身体を前から見て、俺は何も言えなくなってしまった。
――まず、つるぺたな綺麗な胸に絆創膏を二つ張っていた。
視線を下ろすと、女の子の部分にもやはり絆創膏が一枚だけ張ってあり――
「?」
何故かおへそにも一枚絆創膏が張ってあった。
丁度おへその穴を隠すように。
「興奮しますか?」
言えるか! 仮にこんな幼児体型に欲情したとして、言えるわけ無いだ
ろ。
――あ、仮だぞ。俺は断じてサナの身体を見て興奮などしていない。
「そうですか、それでは……」
サナは椅子の上に立ち、一番大事な絆創膏を半分だけはがした。
「!? サ……サナっ?」
一枚の絆創膏が太ももの間でぷらぷらと揺れている。
「……ゴクン」
流石にここまでされると、別の意味でも興奮してしまいそうになる。
それにサナの脚は凄く好みなのだ。
足首から根元まで全部丸見えなわけで、俺の視線はもうサナの身体に釘付けになっていた。
「ヨシカゲ殿、占いを始めても良いですか?」
サナがその格好のまま近づいてきた。ぴったりと身体を密着させ、俺を
抱きしめた。
「ヨシカゲ殿……側室でも構いません、私を愛してください……」
俺の一番敏感な部分がサナのお腹に押し付けられる。
サナは気にせず俺に抱きついたまま、何か呪文のような物を唱え始めた。
「占イ未チヲ視ロ我ワ暗幼ジヨ也イ」
後から聞いたが、俺の未来を見るための呪術らしい。サナは俺の身体に
顔をゴシゴシとすりよせ、程よく紅潮した顔を見せ、
「ヨシカゲ殿は嘘つきですね……♡」
サナは顔を赤らめたまま指を舐めていた。
唇を触りながら、ちょっとだけ舌を覗かせ、サナの指先が少々湿ってきた。
「ヨシカゲ殿は、今凄くドキドキなさってますよ……?」
サナは指を舐めるのを激しくしながら、
「私が指を舐めてるのを見て……何を考えているのですか……?」
サナの指と唇の間をねっとりとした糸がひいた。俺はサナの身体どうこ
うでは無く、理性を保つことだけを必死に考えていた。
――いいか。もしこんな一瞬の気の迷いでサナを王妃にしたら、国民―
―下手すると世界中の人々に俺の何かを誤解される。
メアには嘲りの目つきをされ、リーゼもきっと俺を軽蔑し――リンさん
は静かに去って行くだろう……
その代わり、一生サナたんがヨシカゲの色んな面倒見てくれるよ? や
ったね! ――クソ! 誰だ。俺を惑わすような事を頭の中で言うのは!
「ヨシカゲ殿……? いかがなされました?」
サナは心配そうな表情で俺を見て――
「えいっ……♡」
サナの舌で湿った指を俺の口の中に突っ込んだ。
「んぐっ?」
突っ込んだ指を引っこ抜き、サナはまた挑発的な目つきで指を舐めてい
る。舐めながらトロ~んとした表情を浮かべ、
「ヨシカゲ殿の味~♡」
もう我慢の限界だ。
誰に何と言われようと、俺は一生サナを幸せにしてや――
「ヨシカゲ~! いるか~?」
リーゼの声がして、俺とサナは電撃でも走ったようにパッと離れた。
「なんだ……サナが来てた――きゃあっ!?」
リーゼはサナの格好を見るや、両目を手で押さえ向こうを向いた。
「サナったら! ヨシカゲの前でなんて格好してんのよ!」
リーゼのいる距離からだと、絆創膏が見えないのか……
「ハレンチなーっ!」
リーゼはおもむろに叫んだ。――いや、お前が言うなや。
「ヨシカゲはそんなロリ体型が好きなの!? 私じゃ満足出来ない?」
そう言いながらリーゼはスカートに手をかけた。おい、落ち着け!
「私だって……まだツルペタなんだからぁ……!」
リーゼのヒラヒラのスカートがストンと足元に落ちたところで――
「いい加減にしなさい! 二人とも」
メア? いや、違う……もっと大人っぽい、お色気たっぷりってわけで
は無いけど、整っている顔立ちに成長しきった、たわわなボディ。キッと
した目つきで見つめるお姉さん的な可愛さを合わせ持つ――まさかこの人
は……
「お姉ちゃん! 邪魔しないでよ、今からヨシカゲに私の素肌を堪能して
もらうんだから!」
そう言いながら、銀色のドクロの書かれた黒いシャツを脱ぎ始めたが、
腕を抜いた瞬間、袖同士を手早く綺麗に結ばれた。
「リンさん……」
リンさんはリーゼの袖を掴んだまま、俺の方を見た。
「ほら! サナちゃんも。そのままの格好じゃ風邪ひいちゃうわよ!」
サナも渋々承諾し、椅子の前の黒いマントを羽織って丸まった。
「ヨシカゲ君、大丈夫だった?」
――俺? 俺は……
「大丈夫です」
リンさんは俺に近寄り、キュッと抱きしめてくれた。
ヤバい……リンさんの顔初めて見たけど――
俺は抱きしめられながら生唾を飲み込んだ。
「ちょお可愛い……♡」
俺はその夜、別の意味で眠れなかった。
サナの危うい絆創膏姿もリーゼの生脱ぎストリップも俺の頭からは吹き
飛んでいた。
今俺の頭にあるのはリンさんの笑顔、リンさんは俺の事を抱きしめてく
れた。
多分リンさんは俺がお嫁さん候補を探していることは既に知っているは
ずだ。
可愛い。凄く可愛い。
お姉さん的な安心感ある行動、優しくて影で俺のことを心配してくれる。
そして何よりリーゼやメアが成長したような可愛らしい笑顔。
――八重歯は無かったなぁ……なんて考えながら、俺はベッドの上で悶々
としていた。
俺はその日夢を見た。
リンさんと永遠の愛を誓い合っていて、俺の周りには際どい水着を着た
メア、リーゼ、サナが顔を赤らめ寄り添い合っている。
俺は四人と次々愛を誓いキスをしていた。リンさんとだけは特別、深く
ヤバい方のキス。
……本当にそんな未来が、近々来るのかもしれない。