4th 隠されたマントの内部
あの後は結局、ゆっくりと王様の椅子に座る作業を続けていた。ボーッ
と見える空が青く澄んでいた。鳥が何羽か飛んでいた。飛行機が一機飛ん
でいるのが見えた。……椅子に座っている俺にはこれくらいしかする事が
無いのだ。
「はぁ……誰か来ないかな」
「こちらに存在いたしますが」
椅子の上からサナが顔を出した。――やっぱりお前は背後霊なのか!
「お昼過ぎに参りましたところ、お気を失っているとお聞きいたしました
ので、ずっと椅子の後ろで待っておりました」
俺はふと疑問を抱いた。
「じゃあ何で今まで出てこなかったんだ?」
「それは……」
サナはハッとした表情で口を拭った。寝てたなこいつ……
サナは今日は黒いマントを羽織ったまま占いをした。今日はそれを脱が
ないのか? なんて変態チックな事を聞いたが、
「実はこの下は全裸――何も着ていないのです」
と、返されてしまい――それ以上今日のコスチュームに関しては話して
くれなかった。
「それでは、失礼いたします」
サナは立ち上がり、宮殿の階段を降りようと前に足を踏み出した――瞬
間。
「きゃっ!」
下から吹き上げるような突風が吹いた。ほら、高いところにいるとよく
ふく風だよ。
サナのマントがめくれ、ふくらはぎから膝裏、太ももが見え――
「!?」
真ん丸な膨らみが太ももの上に見えた。……待て、落ち着くんだ。こう
言う時はほくろの数を数え――
「……………」
サナは無言で、振り返りもせず階段を下りて行った。マジなのか! マ
ジの全裸オブマントだったのか!
俺は記憶に焼き付けなかった事に若干の後悔を感じ、ついでにその表現
のせいで昼過ぎの嫌な思い出を思い出してしまい、何となく憂鬱な気分で
椅子に座り直した。