2nd 負けられない戦いがそこにある! (お色気バトル)
7th
俺が目を覚ますと、リンさんはいなかった。でも、凄く幸せな夢も見れた
し、よく眠れた。うん! 最高の気分! とはならないか……
もう家族とも会えない、親友の大友に自分の性癖のバカ話も出来ない、通
学中の女子高生の脚を舐めまわすように眺める事も――この世界で出来る事
は確かにたくさんあるけど、やっぱり故郷が恋しくなるのは当然だろう。
だが、俺はこんなところで過去を振り返っても仕方がない。むしろ感謝す
べきだ。死んだはずの俺をこんな素晴らしい世界に連れてきてくれた神様、
女神様。ありがとうございます。
「おはよう」
ピンク色の大きなハート柄の黒いシャツを着たリーゼが俺の部屋に入って
来た。可愛らしくあくびなんてしてる。
「どうしたの? ジロジロ見て」
いや、別に変な意味じゃ無く。普段着まで現代の日本と変わらないなんて
……本当、住みやすい世界を作ってくれたものだ。
「いや、可愛いなって……」
「あ、そう? 触る?」
そう言うとレースっぽい見た目のミニスカートを少々めくった。おい、何
故そうなる。あれか? 俺のための世界だから何でも有りなのか?
いや、それは無いな。リーゼは黒いニーソックスを履いていた。俺が世の
中でストッキングやタイツの次くらいに嫌いな物だ。
「あら、おはようございます」
メアにも笑顔で朝のご挨拶。良いなあ……起きてすぐ女の子からの挨拶だ
なんて……もういっそ死んでも! って死んでるのか俺は。
朝ご飯を家族で食べる習慣は無いらしく、細脚のメイドさんに用意された
ご飯を食べ、俺は王様用の椅子にどっさりと座った。
「はあ……」
「ヨシカゲ殿、参りましたぞ」
にゅっと顔が現れ、俺はびっくりして椅子から転げ落ちそうになった。い
きなり現れるな! 背後霊かお前は。
「では占いを始めます。昨日の服装ですとヨシカゲ殿が興奮して占いになら
ないので、今日は――」
この子は男性が興奮するメカニズムを知らないのか? それとも知ってて
わざとやってるのか。
「この格好なら大丈夫ですよね?」
黒いマントを脱ぎ捨てると、中身はいわゆるスクール水着なる物だった。
ピッチリと身体に張り付き、もちろん昨日より明らかに太ももの露出部分
は増えている。これのどこが興奮させないためのお洋服なんだ。
「占い師さん? それは……」
「昨日みたいにひらひらした服装はヨシカゲ殿には刺激が強かったようです
ので、今日はピッタリとした絶対めくれない洋服にしました」
なるほど、理にかなっている。――じゃ無くて!
「それと、私の事は占い師さんじゃなくて、サナと名前で呼んでください」
サナって言うのか、可愛い名前だ。
「ほら、じっとしてください」
占い師――サナは俺の首の辺りに手を当て、首をかしげた。
「変ですねぇ……昨日より心拍数が上がってます」
目の前でツルペタな身体が揺れている。ちょっと視線を下ろせば、腰の
すぐ下まで太もも部分がぷっくりと見えている。目に毒な肌色がチラつき、
俺は占いどころでは無くなってきた。
「サナ……もう少し離れてくれ!」
「駄目です。何故か興奮しているヨシカゲ殿の理由を解明するまでは絶対
に動きません!」
視界の中でサナの腰が左右に揺れ、身体に似合わずはち切れそうな太も
もは依然としてチラチラ視界に入って来るし。少し内股気味だからか、膝
の出っ張り部分が強調されて――ヤバい、クラクラしてきた。
「何で~? おへそも見えないようにちゃんとガードして来たのに……はぁ
……殿方の興奮なさる理由は、私には解りませんわ」
解らなくて良いから! 早く、とりあえず視界からどいてく――
「あら、楽しそうに何をなさってるんですか?」
笑顔で俺たちの側に近づいてきたのは――リーゼの姉、メアだった。
8th
「サナちゃん、そんなにヨシカゲ様を困らせないの! めっ!」
容赦ないデコピン。
サナは額を押さえて目を潤ませた。
「メア殿、突然何ですか」
メアは悪い事をした小さい子を叱るように――実際そうなんだけど。
「そんな格好でヨシカゲ様に近づいたら、ヨシカゲ様は緊張して困ってし
まいますよ?」
サナはきょとんとした顔で首を傾げ、
「このお洋服のどこがいけないんですか?」
メアは「やれやれ」とでも言うように肩をすくめ首を振り、
「サナはお子様だもんね~」
「お子様とは何だ!」
ムッとした表情でメアに詰め寄った。
胸を張り、腰に手を当てて――大人っぽく見せようとしてるのか、身体を反
っている。
――そのポーズが俺の身体を前かがみにさせる要因になっていることは言う
までもない。
「胸も腰周りも、全部お子様じゃないか。それとも何か? 私のこの魅惑
のボディにかなうと思ってるのか?」
悪乗りしているのか、メアも身体を反り始めた。だが、イマイチ萌えな
い。
「? ヨシカゲ殿、さっきから前のめりになってますけど……お腹でも痛
いんですか?」
サナが見せつけるようなポーズのまま近づいてきた。
うん、原因あんただわ。
「ヨシカゲ様は本能に直結している方なのですね」
メアがいたずらっぽく言う。
断言する、俺だけが特殊なんじゃ無い。
身体を反ったツルペタ少女と、八重歯の可愛い褐色少女。
二人とも太ももからふくらはぎにかけてのラインは抜群。
そんな二人を目の前にして、平常心を保てる思春期男子が何人いるだろう?
「とりあえず私は占いの続きをします。ヨシカゲ殿、たってください」
うっ!?
メアが隣でニヤニヤと笑っている。
断じてそんな事は無いぞ! 断じてだ。
「何してるんですか? ちゃんと姿勢を正して、たってください。こう興
奮していられては占いになりません。まずは深呼吸からです」
メアは声を出して笑い出した。八重歯が可愛らしく顔をのぞかせた。
俺はメアにあっちへ行け――と合図をしたが、クスクス笑いながらじっ
と俺の方を眺めている。――もう、やるしか無いのか!
「分かったよ、サナ」
俺は意を決し、姿勢良く立った。
気をつけの格好でサナに全身を撫でられながらの深呼吸。
サナは何も気づいて無いからいいのだが……
「クスクス……」
メアに笑われているのが何となく悔しい。仕方無いだろ……健全なオト
コノコなんだから……
9th
サナにじっくり触られ、メアにたっぷり笑われながらも、サナの占いは
終わり――黒服を着てペコリと頭を下げ宮殿から去っていった。
サナが純粋な女の子で良かった……
「エヘヘ……照れてやんの」
問題はこっちだ。
顔をわざとらしく赤らめ、八重歯を見せつけてくる少女メア。
元の世界で言うと、歳はいくつくらいなんだろう。
――リーゼが同い年? もっと小さいか。
リンさんは何となく大人っぽかったようにも感じるし……う~ん。
「ズボンが型崩れする前に、どうにかしちゃいなよっ!」
メアは俺の背中を押し、トイレへと連れて行った。
いや、流石に二日連続じゃ出ねーよ。
「男の子の欲望は底なしだと聞きましたが」
「誰に!?」
「お兄ちゃんに」
そういえばリーゼには四人の兄貴がいるって言ってたな。
メアの上はそのうちの何人だ……?
「メアのお兄さんって何人いるんだ?」
メアは八重歯を見せ、
「何? 結婚のあいさつ?」
違う。
「三人だよ、全員リンお姉ちゃんよりは年下。弟が一人いるけど」
「知ってる」
言ってからしまった! と思ったがもう遅い。
メアはいたずらっぽく八重歯を出し、
「へぇ~……ヨシカゲ様もやっぱそういうの興味あるんだ~」
「違っ……リーゼから――」
これまた後悔。
「妹に聞くほど気になってるなら、直接私に言えば良いのに」
寂しそうに上目遣いをしてくる。
小悪魔だこの子……
俺は王様の椅子に座るだけの仕事をしながら、ボーッと外を眺めていた。
勉強やら何やらに追われていた高校時代は早く休みてーと思っていたが、
逆に極端に何もしなくて良くなると、途端に何かしたくなる。この気持ち
分かる人いるだろう?
「肩でもお揉みしましょうか?」
メイドさんがちやほやしてくれるのも悪く無いが……何でこの世界のメ
イドさんはみんな脚が白くて細いんだ! 色気が足りんぞ、色気が!
――はぁ……
「だいぶ凝ってますね。お風呂にでも入られたらどうでしょうか?」
メイドさんに勧められ、俺は入浴準備をして自室の一人用バスに向かっ
た。