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16th ご奉仕を超えた看病

16th 予期せぬ訪問者と17th メアからの告白 18th レヴィの覚悟 統合

 レヴィの唇の感触を思い出すたび、

 さっきから悶々とした感情に心を侵食(しんしょく)される。

 サナの幼くて可愛らしい笑顔と同時に、

 レヴィのSっ気のある笑顔を何度も思い出してしまう。

 風邪を引いて熱が出ると女の子の事をボーっと考えてしまうが、

 同時に別の女の子が頭に浮かぶ俺って……



 サナが(きさき)でレヴィが側室(そくしつ)……

 何となくそんな言葉が頭に浮かんだが、

 そんな事、今考えることでは無い。

 扉をドンドンと叩かれる。

 誰だ。

 メイドの誰かなら普通に入れるし、リーゼやサナは来ないように言ってあるはずだ。

 まさかメアかリンさんが……

 そんなはず無いか。


「入っても良い?」


 ドアの向こうから聞こえたのは今まさに選択肢から排除した声だった。

 ガチャリとドアが開き心配そうな顔を扉の端から覗かせるのは、

 正真正銘(しょうしんしょうめい)、この国の第二王女メアであった。


「どうしたんだ?」

「お見舞いに来たの」


 今日はいやに大人しい。

 実際俺は熱っぽくて疲れてるからちょうど良いのだが、

 メアがこれほどまで大人しいのは何か気になってしょうがない。


「ねぇ……何か困ってることとか無い?」


 身体をモゾモゾさせながら聞いてくる。

 だが大丈夫だ。

 おかゆはさっき食べたし、

 別にトイレに行きたいとも思わない。

 今はそれほど困ってないな。



 そのような事をメアに伝えると、若干ホッとした様子を見せ、


「良かった……」


 少しドキッとした。

 何だ……意外と可愛いところもあるんじゃ無いか。

 脚の素晴らしい単なるエロガキかと思ってたが、そんなことは――

 うげぇ……頭痛ぇ……


「頭痛いの?」


 メアの冷たいお手手が(ひたい)に当たり、少し気持ち良い。


「ありがとう。メア」

「時期王妃としてはこれくらい当然だよ」


 可愛らしい八重歯(やえば)を見せてニッコリと笑う。

 ああ……何かこういうのも良いかも。

 思わずニヤけると、メアの八重歯が少し露出した。


「でもヨシカゲ様はもっとこう……ね?」


 メアの顔に悪い笑顔が浮かんだ。

 メアがこの顔をしている時は大抵よからぬ事を――


「ていっ!」


 メアが俺のベッドに飛び乗ると、俺の額にふくらはぎを乗せた。

 じっとりと汗がにじんでいるにしては、

 意外と冷たくて気持ちがいい。


「どう? 気持ちいいでしょっ」

「ああ……何だか凄く良い……」


 普段なら絶対こんなこと言わないのだが、

 今日はほら、熱があるからさ……正常な判断ができないんだわさ。




「太ももでやってあげようか?」

「あ……ダメなんだそれは」


 怪訝(けげん)そうな表情で俺を見下ろす。


「何で?」

「実は……」




 熱のせいか。

 理由は分からなかった。

 ただ今日のメアは安心できたのだ。

 心が弱くて寂しい時に来てくれた女の子だからか、

 俺は何故かメアに太ももに挟まれると死んでしまう事を話してしまった。





2

 メアは真剣にフンフンと聞いていたが、

 熱のせいもあるし、トリップしてきた事を話すといろいろとややこしい事になりそうだったので、

 太ももの話だけにしておいた。

 メアは首を(かし)げ、


「でもそれって……ヨシカゲにはかなりの地獄じゃない?」

「別にそこまででは……」


 メアは俺の額の上でふくらはぎをコロコロ転がしながら、


「だって私だって、ヨシカゲ様と会えないって聞いたとき……すっごく(さび)しかったもん!」

 ははは……俺に会えないから寂しいって――

 え?

 メアは顔を赤らめそっぽを向く。


「だって……別に好きでもなんでも無い男の子をからかったって……楽しく無いでしょ?」


 メアの真剣な眼差(まなざ)しがこっちを向いた。

 顔は紅潮(こうちょう)し、いつになく(うる)んだお目目。

 ちょっぴり荒げた吐息も混ざり合い、完璧な甘えムードだった。


「メア……?」

「風邪引いてるときに変なこと言ってごめんね?」


 メアはゆっくりと立ち上がり俺に背中を向けたまま、


「太ももの話はリンお姉ちゃんとリーゼにもしておくから、ゆっくり治してね」

「メ……メアっ!」


 メアはドアのところでくるりと笑顔を向ける。


「お大事に」


 そう言ってメアは静かに部屋から出て行った。

 俺は熱のせいもあってか鼓動(こどう)がどんどん速く強くなっていく。


「……何なんだろう」


 考えれば考えるほど熱が上がりそうな予感したので、俺はもう一度布団をかぶり、ゆっくりと寝直すことにした。





 ガチャリとドアが開く。

 ゆっくりと踏みしめるような足音が聞こえるが、

 俺はまた熱が上がったのか頭が重くてその姿を確認できない。


「んー……」


 寝ている俺の真横に立っているらしい。

 気配でそう感じる。

 だがまぶたもかなり重く、

 今現在俺は目も開ける事ができない。

 よって誰が横にいるのか確認不可能である。


「……………」


 その「誰か」は声を発さず、静かな呼吸音のみが聞こえる。

 何となくその音で女性だと感じた。


「……………」


 しばしの沈黙の後、

 その女性は突然俺の布団をバサリと引き()がした。




「え? え? ええっ!?」


 風邪でこんなにも辛い俺の布団を引き剥がすとは……

 誰だ。

 寒いじゃないか。


「……………」


 女性は黙ったまま布団を床までずり落とし、

 俺の寝巻きのシャツをズボンから出した。

 ――ああ。メイドの誰かが汗を拭きに来てくれたのか。

 黙ったままの女性はそのまま俺の寝巻きをめくると、

 タオルのような物で俺の腹や胸を丁寧(ていねい)()き始めた。

 なるほど。

 やっぱメイドさんで合っていたらしい。

 せっかく起こさないようにしてくれているんだし、

 このまま俺も眠ってしまおう。



 丁寧に脇の下まで綺麗に拭いてくれる。

 おかげで全身ヌメヌメしていた汗が無くなり、

 さっきまでの不快感がスっと消え去った。


「……………」


 女性の深呼吸のような深い呼吸。

 何となく圧迫感のある呼吸音。

 まるで口や鼻を何かで(ふさ)がれているような……

 そんな感じ。


「……………」


 次に女性は俺のズボンをするすると脱がし――手が止まる。

 ――仕方無いだろ。

 熱があるときとか、何故かそうなっちゃうんだよぉ……



 コクンと何かを飲み込む音。

 柔らかくてスベスベした手でズボンをくるぶし辺りまで脱がされ、

 太ももから足下までを念入りにタオルで拭われる。

 下半身にスースーした感覚を覚え、

 何となく心地良いような心もとないような感覚に襲われる。

 しばらく拭かれた後、 

 次に女性が手をかけたのは俺の――

 待て。

 いくら俺が寝てるからってそこまでは拭かなくていい!

 細い指先が下着の(はし)にかけられたところで、

 俺はたまらず起きた。


「ちょっと! 流石にそこは拭かなくて――」

「……………」

「何で……?」


 身体(からだ)を拭いてくれているメイドさんは、

 てっきりあまり俺との面識が無い人だと思っていた。

 よく話しかけてくれるメイドさんなら、

 多分俺に声をかけてくれると思ったからだ。

 しかも……


「レヴィ……?」

「何でしょうか」


 さっきキスまでしてくれたメイドさんが、

 ずっと黙っているというのは……

 何となく寂しくてたまらなかった。





3

「レヴィ……」

「何ですか、何度も」


 静かに(うつむ)いたまま目を合わせてくれない。

 さっきのキスはやはり嫌だったのだろうか。

 主君であるがために仕方なくあの場では丸く収めようとしたが、

 実は嫌だから顔を合わせたくないなどということだろうか。


身体(からだ)の汗を拭きに来てくれたんだ……」

「違います」


 はっきりと否定された。

 あれ?

 でもレヴィは俺の身体を拭いてくれたよね?


「私が来たのは別の用件です」


 レヴィの顔が少し赤くなる。

 もしかして……俺に会いたくなっちゃったとか。


「下の世話に参ったのです」

「はぇ……?」


 お前は何を言っているんだ。

 下の世話ってのはあれか。

 トイレに行けないからビンの中にさせてくれるって言うアレですか。

 レヴィは頬を染め、チラリと横目で俺を見下ろす。


「先ほどのお(かゆ)の中に利尿作用のある薬を入れておきました」

「何入れちゃってんの!」


 ウゲ……


「ゴホ……」


 思わず叫んだら喉が痛くなった。

 何で?

 何で入れたの。


「朝から一度もお手洗いに行かれていないようでしたので」


 そりゃあね。

 朝からグッタリしてて辛くて起きれなくて――

 そこまで言ったところで突然俺の下半身にブルっとした感覚が来た。


「おいまさか……」


 レヴィは腕時計を眺めた。


「時間通りですね」

「ちょっとぉぉぉぉ!」


 マジなのか。

 またレヴィの冗談だと思って軽く流してたが……

 ヤバい。

 マジでもう我慢出来ない。


「準備は出来ております」


 そう言うとレヴィは中身が空なビール(ビン)(かか)げてベッドの上に飛び乗った。


「それでは失礼して」


 レヴィは俺の上で四つん()いになり、顔を俺の下半身に向け――


「んぉぉぉぉ!?」


 ムチっとしたふくらはぎで顔を挟まれる。

 その上視界には抜群にエロい太ももとそして――

 ミニスカートの端からちょこっとだけ薄緑色な布が見えた。

 と、同時に俺の下半身が開放された。


「……ぅぁ」


 レヴィから小さな声が()れる。

 残念ながらここから顔は見えないので、

 どういう意図で漏れた声かは分からないが――

 抜群に恥ずかしいという感情だけは感じた。



 ビール瓶の先っぽが綺麗にハマる感覚とともに、

 腰のあたりに何とも言えない震えが来る。


「どうぞ。国王様」


 レヴィが振り返りようやく顔が見えた。

 ――案の定ニヤけている。

 小悪魔のような黒い笑顔で俺を見下ろす。

 ああ……何かゾクゾクしてきた。


「ど・う・ぞ・♡」


 期待する眼差しを向けられる。

 何? 分かってはいたけど、まさか見られている状態でしろって言うのか!

 レヴィは顔を元に戻し、優しく俺の腰回りを撫でる。


「早くしてくださいね~♡ 私だってヒマなわけでは無いんですから」

「ちょっと……うぁ……」

「これですね~……利尿作用を持つマッサージ法なのですよ」


 レヴィのマッサージのせいもあり、

 俺の我慢でどうこうなるものでは無くな――


「んっ……!」

「あああぁぁぁぁぁ……」


 開放感と罪悪感、そして羞恥心に背徳感――

 数え切れない程の三文字熟語にさいなまれ、

 俺は脱力して現実逃避した。

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