10th 修羅場というかハーレム
「おやすみ、ヨシカゲ君」
さっきと同じ、ピンクの服をまとったリンさんは、小動物を愛でるよう
な表情で俺の頭を撫でた。
「ヨシカゲ様? 今日は朝から凄く積極的ですね……? 発情してるんで
すか?」
メアが八重歯を見せながら俺の左腕を抱きしめている。――左側にメア、
真ん中に俺――右側にリンさんと言う夢のような状態で寝ている。
――多分今日俺、眠れないわ。
「すぅ……♡」
こっちはこっちで早っ! ――リンさんはもうすでに寝息をたてていた。
「お?」
メアが身を乗り出してリンさんを見た。――膨らみかけの柔らかいのが
二つ、俺の身体に押し付けられてるんだが――
「リン姉が寝たら、もう何しても起きないと思いますよ?」
メアは八重歯を見せ、いたずらっぽく笑った。
いかん! 理性を保て、俺よ。――って、女の子二人に添い寝頼んだ人
間が何言ってんだって話だわな。
「ですから~……♡」
メアは衣服を乱し、俺の身体の上に乗っかった。大事なところ同士が衣
服越しに触れ合って――力を込めたつもりは無いのに力が入っちゃう。
「お姉ちゃんの手前、あんな事言いましたけど……私はヨシカゲ様にサー
ビスするのは――嫌ではありませんよ?」
ペロリと唇を舐めるメア――グリグリと押し付けられる感覚のせいもあ
ってか、俺はもうヤバい事になっていた。――主に下の方が。
「ちゅぅぅぅ……♡」
唇が触れ、メアの可愛らしい声が聞こえた。キスの時の声って自分でだ
すものなのか……?
「ちゅぷ……♡」
メアのねっとりした舌が入って来た。――ダメだ。力が入らない……
「ぺは……♡ ヨシカゲ様。今夜は眠れそうですか?」
断言する。無理だ。絶対無理、最後までさせてくれてもさせてくれなく
ても――どっちみち俺は一晩悶々とした時間を過ごすしか無いだろう。
――だとしたら楽しい方を選ぶしかない。
「メア……」
俺の上で首を傾げるメアをしっかりと抱きしめた。隣にリンさんがいる
ところで悪いけど――今日はメアと……
「あら、お邪魔でしたか?」
メアがゴロンと俺の上から転がり落ち、俺はびっくりして声のした方を
見た。国王の部屋に勝手に入るなんて誰だ!
「すみません……寝ている間にゴミを片付けてしまおうと思って」
ベッドの端に座ったところでようやく誰だか分かった。――さっき新し
く来たって言ってたメイドのレヴィだ。長く綺麗な脚を組み、頭を後ろに
下げて俺の方を見ている。
「メア様――どうぞ続きを、私の事は気にしないで結構ですので」
「気にするわよ!」
メアは毛布を頭までかぶって出てこなくなってしまった。――クソっ!
せっかくメアとの甘い夜を過ごせると思ったのに。
「すぴぃ……♡」
リンさんは相変わらず起きない。危なく無いか? こんなお姉さんボディ
の可愛らしいお方が、夜寝たら朝まで起きないって……
しばらくしてレヴィは部屋から出て行ったが、メアはすねたまま寝てしま
い――リンさんにいたってはどうしても起きないので、俺は身体中で悶々と
しながらベッドの上で一晩中転がっていた。
眠い。当たり前だ。昨日は誰かさんのせいで眠れなかったからな、一応断
っておくとメアの事でもリンさんの事でも無い。
「国王様? お加減はいかかですか?」
レヴィが椅子の上から顔を覗き込んだ。――良いと思うか?
「そういえば、さっきリーゼ様とサナさんが国王様のお部屋にいらっしゃい
ましたよ?」
またあいつら何かしてるのか……?
「分かった。見てくる」
レヴィに見送られ、俺はフラフラする頭を支えながら自室へと向かった。
「リーゼ! サナ!」
部屋に入ったが二人の姿は見えなかった。――でも声はする。可愛らしい
キャーキャー言う声、俺は眠さのせいもあって行動の善悪を判断する事がで
きない状態――と言う事は最初に断っておく。
「おい! サナ、リーゼ」
俺は声がする部屋のドアを開け――目に飛び込んできた情景に俺はいろい
ろな意味でクラっとした。
「ヨシカゲ……?」
「ヨシカゲ殿? 何入って来てるんですか」
そうだよ。何で俺入ってんだ? ここ? 誰がどう見ても風呂場だよね?
カゴにはさっき脱いだと思われるリーゼとサナの服も入ってるし、一体全体
俺は何故このドアを開けたんだろ。
「きゃぁぁぁぁ!」とでも叫ばれて何か投げられるかと思ったが、リーゼも
サナも別に嫌がる様子は無く普通にこちらを見ていた。
「そっか……ヨシカゲ我慢できなくなっちゃったんだ」
リーゼ。それは違う、断じてそんな事は無い!
「……って言うかどうどうとした覗きですね? ガラッと扉を開けた覗きな
んて私初めて見ました」
だから違げぇ! しかもここ俺専用バスよ。国王である俺のためのお風呂
なのよ!
サナは「やれやれ」と、
「否定するならちゃんと否定してください。何ですかズボンをそんなにして、
私たちだってそれくらいは解るんですからね?」
違っ……これはメアに……ヤバい、まだ直って無かったのか。
「リーゼ! 違うぞ? 違うからな!」
リーゼは小悪魔笑いをして、
「う~ん……ちゃんと見ないと解んないかも」
このド悪魔ぁぁぁ! とか頭の中では思ったけど、俺は寝不足のストレス
もあってもういろいろと限界なんだ。
「仕方無ぇ……見せてやる」
大事なことなので二度言うが、俺はもう寝不足とイライラで正常な判断が
できなくなっている事をご理解の上で――
「わ……わぁー……♡」
「……コクン……♡」
リーゼとサナは俺の脱衣を興味津々で見ている。何だか変な趣味に目覚め
そうだ。
「何してるんですか」
俺がパンツに手をかけたところで後ろから声がした。――まただ、いった
いこの人は何度俺のジャスティスを邪魔すれば気が済むんだ。
俺はレヴィさんからお小言を頂戴していた。――内容は「何まだ小さな女
の子の前で脱いでるんですか」とか「私の事ももっとかまってください」だ
とか――眠くてしかたが無い俺は途中からもう半分以上眠っていた。
「ちょっと脚をお借りします……挟まないでくださいね」
「あっ! こらっ……まだ話は――」
俺はレヴィの柔らかくなめらかな生脚を枕にして眠った。――はぁ……凄
く幸せ……♡