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あいつを想うきみを、想う
放課後、きみは今日もサッカー部の練習を見にやってくる。
フェンスの向こう側からあいつを見つめて頬を赤くする。
あいつがシュートを決める度に友達と一緒にきゃあきゃあ騒いで。
そんなきみを見て、ぼくがいつもどう思っているか知ってる?
嬉しくて、悔しくて、悲しいんだ。
今日もきみの姿を見られることが嬉しい。
その笑顔があいつに向けられたものであることが悔しい。
ぼくのことなんてこれっぽっちも眼中にないことが悲しい。
あいつには可愛い彼女がいる。
美男美女。お似合いのカップル。
きみはそんな望みのない恋を続けるの?
そんなもの諦めて、ぼくを見てよ。
きみはきっとぼくの名前さえ知らない。
グラウンドにはぼくもいるってこと気付いていないだろうね。
それでもいいよ。
ただきみが好きなんだ。
あいつに恋してる、きみが好き。
ぼくは、あいつを想っているきみを、想う。
5月