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第5部 第8話 中央の門を叩く

 オルビタが中央都市の港に着くと、重苦しい沈黙が出迎えた。

 街は以前よりも警備が厳重で、兵士たちが槍を構えている。


「入港許可は下りていない。帰れ、調停者」


「話をするだけだ。会議の場を開け!」


 胸の奥の環が速く鳴る。(拒絶の拍だ……)


(ここで門前払いを食らえば、航路は完全に割れる)


 手のひらに汗がにじむ。

 深呼吸して声を張り上げた。


「この場を拒めば、四世界は完全に離脱する!

 それでもいいのか!」


 兵士たちがざわめき、門がゆっくり開いた。


 会議堂には高官たちが並び、冷たい視線を向けてくる。


「お前は調停者の立場を忘れたのか。

 命令に背いた時点で、剥奪の手続きを進めている」


「なら剥奪すればいい! だがその前に答えろ。

 なぜ都市に影を仕掛けた!」


(沈黙……やはり認める気はないか)


 胸の奥の環が乱れ、喉が締め付けられる。


(ここで退けば、俺が負ける)


 リュシアンは黒衣の男から受け取った記録板を差し出した。


「これが命令書だ。あなた方が影を兵器として使った証拠だ」


 会場がざわめく。

 一部の若い議員が顔色を変えた。


「……まさか本当に実行していたとは」若い議員が呟く。


「黙れ。これは機密だ」長老格が睨みつける。


 会議場にひびが入るように、賛否が割れ始めた。


(今だ……ここで一気に押し切る)


 胸の奥の環が力強く鳴る。


「三日後までにこの政策を撤回しろ。

 さもなければ、俺は調停権を返上し、各世界と新たな同盟を結ぶ」


 高官たちが一斉に息を呑んだ。


(これで俺は中央の敵になった……

 だが、もう迷わない)


 胸の奥の環が静かに、しかし確かに鳴った。


 会議後、ガルドが腕を組んで言った。


「お前、本気で中央を敵に回す気か?」


「そうしなきゃ航路は守れない」


「だが、その選択は戦争を呼ぶぞ!」


 沈黙が落ちる。

 仲間の間にも緊張が走った。


(ガルドは間違ってない……

 でも、どちらを選んでも誰かが傷つく)


 胸の奥の環が苦しげに鳴る。


 都市を出ると、遠い空で巨大な灰色の門がさらに広がっていた。


(次が最後の交渉だ。失敗すれば、星図は裂ける)


 舵輪を握る手に、もう迷いはなかった。

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