表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/133

第5部 第6話 都市の影

 星図都市の夜空に、警鐘が鳴り響いた。

 上空の航路が一瞬で灰色に濁り、影の雨が降り注ぐ。


「影の残滓が直接都市に……!?」エファが顔色を失う。


 広場が混乱に包まれ、人々が避難を始めた。


(ついに都市そのものが狙われた……)


 胸の奥の環が激しく鳴り、鼓動と同期する。


(ここで守れなければ、統合そのものが崩壊する)


 ガルドが剣を抜き、防御陣を展開。

 セリーヌが旋律を高め、光の盾が都市全体を覆う。


「リュシアン、中心部へ!」


「分かった。影の発生源を押さえる!」


 都市の外縁に、黒い容器が仕掛けられていた。

 そこに立っていたのは、前回会った黒衣の男ではなく、中央都市の監査官だった。


「……なぜお前がここに?」


「命令だ。統合を維持するには、恐怖が必要だ」


(中央が……自分たちで影をばらまいた?)


 胸の奥の環が乱れ、怒りが喉までこみ上げる。


「こんなやり方で航路を守れると思ってるのか!」


「守れるさ。恐怖は人を従わせる。

 統合に逆らう者を見せしめにすれば、誰も離脱しなくなる」


「そんなものは統合じゃない、支配だ!」


(敵だけじゃない……味方の中にもこんなやつがいる)


 胸の奥の環が苦しげに鳴る。


(どちらを裁く? 中央を敵に回す覚悟があるのか)


 リュシアンが剣を構える。


「ここでやめろ。都市をこれ以上汚すな」


「できるものか。命令は絶対だ」


 監査官が影を放つ。

 ガルドが飛び込み、剣で影を斬り払った。


(もう迷っていられない。

 これは中央か敵かの問題じゃない――航路を守るかどうかだ)


 胸の奥の環が白金色に輝く。


 リュシアンが光を放ち、容器を浄化する。

 影が一瞬で消え、都市に再び光が戻った。


 監査官は膝をつき、「お前には分からない」と吐き捨てて倒れた。


(勝ったはずなのに、胸が重い……

 俺は今、中央と対立する道を選んだ)


 環の音が低く響く。


 会議堂に戻ると、中央からの書簡が届いていた。


「調停者リュシアンに警告。

 次に命令に背けば、調停権を剥奪する」


 リュシアンは書簡を握りつぶした。


(もう後戻りできない……これからは、中央すら相手にする)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ