表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/133

第5部 第1話 新しい星図

 統合儀式から三ヶ月後。

 星図都市はかつてない活気に包まれていた。

 広場には各世界の旗が掲げられ、交易や文化交流が盛んに行われている。


(これが、俺たちが守った世界……)


 リュシアンは高台から都市を見下ろし、胸の奥で環の拍を聴いた。

 その音は穏やかで、しかしどこか遠い嵐を予感させる。


(平和だ。でも……なぜだろう、少しざわついている)


 心の奥にかすかな緊張があった。

 それは戦いの恐怖ではなく、「次の試練が近い」という予感。


 星図都市の中央に、新しい会議堂が完成した。

 常設の「星々会議」として、各世界の代表が定期的に集まる場だ。


「今日から俺は“調停者”じゃなく、“議長”か……」


 リュシアンは苦笑する。

 肩書きが増えただけでなく、責任の重さも増していた。


(戦いの時は剣を振るえばよかった。

 でも今は、言葉と決断で世界を動かさなきゃならない)


 胸の奥の環が少し速く回る。


 会議堂に、監視士が駆け込んできた。


「報告! 西の航路が突然封鎖されました!」


「封鎖……? 誰の許可で?」


「不明です。航路の光が灰色に濁り、通行不能になっています」


 空気が一瞬で張り詰めた。


(もう始まった……統合の揺らぎが)


 リュシアンは深呼吸し、舵輪を握る手を思い出す。


「行こう。まずは現場を確かめる」


 ガルドが剣を背負い、セリーヌが旋律を調律する。

 エファが新しい航路図を広げ、航行ルートを指示する。


「まるで以前に戻ったみたいだな」ガルドが笑う。


「いいえ、前とは違う。今回は“守る”じゃなく“繋ぎ直す”のよ」セリーヌが答える。


(そうだ。もう俺は追放者じゃない。

 調停者として、この航路を再びつなぐ)


 胸の奥の環が静かに鳴り、再び旅立ちの音を告げた。


 オルビタが帆を広げ、光の航路を進み出す。

 遠い空で、新しい星がまたひとつ生まれた。


(ここからが、本当の“星々の時代”だ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ