第4部 第14話 最後の影
光柱の中に、完全体となった副官が立ちはだかる。
その身体は半分が影、半分が人で、瞳は深い闇に沈んでいた。
「お前がこの世界を一つにしようとしても、
俺の中の闇がある限り、統合は完成しない!」
空気が震え、光の糸が一部千切れかける。
(また失うのか……ここで失敗したら、すべてが……)
胸の奥の環が乱れ、手が冷たくなる。
(でも、もう逃げない。今度こそ、全部抱えてみせる)
副官が影を解き放ち、巨大な腕が光柱を叩く。
ガルドと戦士たちが即座に盾を展開し、セリーヌが旋律で支える。
「持たせろ! リュシアンが決着をつける!」
リュシアンは舵輪から手を離し、光の剣を呼び出した。
副官が影の槍を構える。
「さあ、調停者。お前の正義と俺の憎しみ、どちらが強いか!」
二人の刃がぶつかり、光と影が火花を散らす。
(強い……! だけど、ただ憎しみで振ってるだけじゃない)
副官の刃が震えているのが分かる。
(あいつも、本当は……)
「お前は世界を一つにしたいんじゃない!
ただ、自分を許したいだけだ!」
胸が痛む。(確かに……少しはそうかもしれない)
「でも、それでも構わない!
俺は自分を許して、次へ進む!」
胸の奥の環が白金色に輝き、光が剣を包む。
副官の影が一瞬揺らいだ。
リュシアンが剣を振り下ろすと、影が真っ二つに裂け、光に溶けた。
副官の身体から影が抜け、膝をつく。
「……お前なら……やれるかもしれん」
最後の言葉とともに、影は完全に消えた。
光柱が再び安定し、航路が完全に輝きを取り戻す。
胸の奥の環が穏やかに回り、涙が頬を伝った。
(やっと……終わった)
空の円環が閉じ、全世界が光の網で結ばれた。
都市の上空に巨大な星が輝き、全員が息を呑む。
「やったな……!」ガルドが笑い、セリーヌが旋律を高める。
エファが頷き、「これで航路は永遠に繋がった」
(追放の日からここまで来たんだ……
もう、俺は一人じゃない)
リュシアンは空を見上げ、深く息を吐いた。
遠い空で、新しい星が生まれた。
それは次の航路の始まりを告げる光。
(次は……統合後の未来だ)
胸の奥の環が静かに、しかし力強く鳴った。