第4部 第13話 星々の脈動
リュシアンが舵輪に両手をかけると、都市全体が眩い光に包まれた。
上空の円環が回転を始め、全世界の航路が一斉に脈打つ。
「始めるぞ――!」
その声に、各世界の代表たちが手を掲げ、拍を合わせた。
光が糸となり、都市から空へと伸びる。
(これが……統合の鼓動か)
胸の奥の環が一段と速く回る。
心拍が上がり、全身の血が熱を帯びる。
(もし失敗したら、全航路が崩壊する。
でも――俺は信じる)
氷の世界の長老が杖を掲げ、氷の結晶が舞う。
砂塵世界のジャハルが拳を突き上げ、赤い光が走る。
火の民が咆哮し、炎の輪が円環と重なった。
世界が一つずつ音を重ね、巨大な交響曲となる。
その時、星図の外縁に灰色の裂け目が再び走った。
黒点の残滓が集まり、巨大な影の塊が現れる。
「またか!」ガルドが剣を抜く。
「儀式を止めさせるな!」
影が広場を覆い、光の糸を切ろうとする。
ガルドと戦士たちが防御陣を展開、エファが航路を補強する。
「持たせるぞ、リュシアン!」ガルドが叫ぶ。
「分かってる、俺も全力で繋ぐ!」
胸の奥の環が激しく回り、意識が遠のきそうになる。
(まだ……まだだ。
ここで倒れるわけにはいかない)
セリーヌの旋律が響き、意識がつなぎ止められる。
リュシアンは胸に手を当て、黒点の力を再び解放する。
光と影が混ざり、航路の糸がさらに太く強くなる。
「影まで……取り込んだのか?」エファが驚く。
「そうだ、拒絶じゃなく、統合するんだ!」
全世界の代表が次々と拍を合わせ、光が一斉に輝いた。
影の群れが悲鳴のような音を上げ、光に呑まれて消える。
(全部が――一つになっていく……)
恐怖と同時に、涙がにじむ。
あの日失ったものが、今ここで戻ってくるような感覚。
(これが、統合……!)
空の円環が完全に閉じ、巨大な光の柱が都市から宇宙へ伸びた。
全航路が一本の拍となり、星図全体が共鳴する。
その瞬間、光柱の中に最後の敵影が現れた。
影と融合したかつての副官――完全体となった存在。
「これで終わりだ、リュシアン!」
広場全体が震え、決戦の幕が上がった。