表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された宮廷魔術師、辺境で無双した末に星々を導く者となる  作者: マルコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/133

第4部 第7話 深淵の幻影

 足元が消えたまま、リュシアンは宙に浮いていた。

 音も光もないのに、胸の奥の環だけがはっきりと響いている。


(これは……幻か? それとも俺の心の奥?)


 耳の奥で、低い声がささやいた。


《お前一人では進めない。仲間もここで試される》


 視界の端に、ガルド、セリーヌ、エファの姿が現れる。

 しかし皆、どこか苦しそうに膝をついていた。


「ガルド!」と駆け寄ろうとすると、目の前に壁のような透明な膜が現れ、進めない。


《これはそれぞれの心の門。お前は見届けるだけだ》


 ガルドの足元に、過去の戦場が広がる。

 仲間の死体、血に染まった剣。

 ガルドが剣を握りしめ、震えている。


「……俺は、また仲間を失うのか」


 影が現れ、「お前が守れなかった」と囁く。

 ガルドは苦しげに叫び、剣を投げ捨てた。


(あれがガルドの傷……ずっと抱えてきた罪悪感)


 胸が痛む。

 声を届けたいが、膜が邪魔をして叫んでも届かない。


(信じるしかない。彼が自分で乗り越えるのを)


 ガルドはゆっくり剣を拾い上げた。

 震えながらも、剣を地面に突き立てる。


「守れなかった仲間はもう帰らない。

 だから――今いる仲間だけは絶対に守る!」


 剣が光り、戦場の幻影が消える。


 次に、セリーヌの足元に闇が広がる。

 小さな部屋、閉じ込められた少女の自分。

 かつて彼女が孤児院で感じていた孤独が溢れ出していた。


「誰も、迎えに来ない……」


 幼いセリーヌがすすり泣く。


(セリーヌ……こんなにも孤独を抱えて……)


 リュシアンは胸の奥で環を鳴らし、心の中で声をかけた。


(一人じゃない、俺たちがいる)


 セリーヌが涙を拭い、幼い自分を抱きしめた。


「大丈夫。私はここまで来た。

 もう一人じゃない」


 闇がほどけ、光が広がる。

 旋律が響き、深淵全体に温かい音が流れた。


 最後に、エファの前に巨大な書庫が現れた。

 そこから真っ黒な本が次々と落ち、床を埋め尽くしていく。


「……全部、失敗した記録だ」


 エファが膝をつき、本を抱えてうずくまる。


(彼はずっと、失敗を隠してきたんだ……完璧に見えて、心の奥では怖がっていた)


 胸が苦しくなる。

 環が速く鳴り、光がエファの足元を照らす。


 エファが本を一冊一冊拾い上げ、棚に戻していく。


「失敗は消さない。

 でも、次の頁を白紙にすることはできる」


 最後の本を棚に収めると、書庫が光に満たされる。


 膜が消え、仲間たちがリュシアンのそばに立った。

 全員が疲れ切っているが、どこか晴れやかな顔だった。


「通ったな」ガルドが微笑む。


「あなたも試される番ですね」セリーヌが言う。


 深淵の奥に、新しい門が現れた。

 その向こうから、低い声が響く。


《来い、追放者。お前の罪を見せてやろう》


 胸の奥の環が激しく鳴り、光と影が同時に溢れた。


(次は……俺自身の門だ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ