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追放された宮廷魔術師、辺境で無双した末に星々を導く者となる  作者: マルコ


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第4部 第4話 氷の舟上会談

 オルビタが並走すると、氷の世界の小舟が速度を落とした。

 甲板にフードを被った人物が一人立ち、冷ややかな声を投げかける。


「追ってきたか、調停者」


 フードを取ると、氷の長老の弟子だった。

 昨日の議場で最も強硬に反対していた青年だ。


(やはり……彼らが黒点と繋がろうとしている)


 胸がざわつく。だが舵輪から手を離し、ゆっくり前へ出る。


「話がしたい。ここで止めないと、航路が汚れる」


「航路はもう汚れている。光が境界を溶かした時点でな」


「境界を壊したいわけじゃない。互いを見えるようにしたいだけだ」


「見える? 我らは影を抱えて生きてきた。

 それを晒せというのか?」


(彼の言葉は正しい。光は痛みをも照らす……)


 胸の奥の環が速くなり、声が出なくなる。


(でも、それでも)


「晒すためじゃない。抱えるためだ」


 弟子が手をかざすと、背後の空間に黒い門が揺らめいた。

 冷気と共に、甘い囁きが耳の奥に響く。


《統合は崩れる。闇に帰れ。そうすれば均衡は守られる》


 体が一瞬凍りつきそうになる。

 セリーヌが旋律を奏で、音の波が囁きを押し返した。


(怖い……でも、これに飲まれたら終わりだ)


 深呼吸。胸の奥で環が強く鳴り、光が全身に広がる。


「均衡は守るものじゃない。作るものだ。

 お前たちが選んだ痛みを、俺たちも分かち合う。

 だから――帰ろう。ここで黒点を開けば、また渦になる」


 言葉が冷たい空気に吸い込まれる。


 弟子が沈黙し、黒点の門が少しだけ小さくなる。

 しかし後方の仲間たちが叫ぶ。「信じるな! 光に呑まれるぞ!」


 門が再び膨らみ、影が溢れ出す。


 ガルドが剣を抜き、エファが舵を切る。

 影の群れがオルビタと小舟の間を覆い、甲板に飛び込んできた。


「戦うしかないか!」


 リュシアンは掌に光を集め、影を浄化していく。


(殺したくない、でも止めないと……!)


 胸の奥が痛む。セリーヌが隣で旋律を高める。


(まだ間に合う、戦いながらでも言葉を届ける)


 最後の影を光で消し、リュシアンは弟子を見据えた。


「これ以上開けば、本当に戻れなくなる!」


 弟子が震える手を下ろし、黒点の門が音もなく閉じた。


「……話をしよう。だがここでは危うい。

 我らの世界で、影を鎮めてからだ」


 小舟が進路を変え、氷の世界へ向かう。


(次は、彼らの世界での交渉……逃げ場のない対話になる)


 リュシアンは舵輪を握り直した。

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