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追放された宮廷魔術師、辺境で無双した末に星々を導く者となる  作者: マルコ


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第3部 第18話 星々の心臓

 航路の最奥、黒い核が脈動していた。

 それは巨大な心臓のように波打ち、星図全体を震わせる。


「全艦、前進!」

 リュシアンは舵輪を握り、オルビタを核へと向けた。


(ここで終わらせる。いや、変えてみせる)


 胸の奥で環が乱れ、鼓動が痛いほど速い。


(もし失敗したら……都市も、星も、全部)


 胃がひっくり返る感覚。

 だが、セリーヌの声が届いた。


「怖いままでいい。あなたはずっとそうしてきたじゃないですか」


 喉の奥の震えが静まる。


 影の核が咆哮し、空間全体が黒く塗りつぶされた。

 航路が消え、艦隊が宙に投げ出される。


「陣形維持!」


 星路の号令に合わせ、各艦が光を発し、即席の航路を再構築する。


(見えない、何も……)


 視界が白と黒に揺れ、甲板の感覚が消える。


(いや、見えてる。胸の奥の拍が、ここに道を描いてる)


 リュシアンは掌を掲げ、心臓の鼓動に合わせて光を放った。


 機械仕掛けの門渡りが連続光弾を放ち、歌の民が旋律を絶叫のように高める。

 ガルドが影を切り裂き、セリーヌが支援の歌を重ねる。


 艦隊全体が一つの巨大な楽器のように共鳴し、黒い空間に光の網が広がった。


(皆の拍が重なっている……俺一人じゃない)


 胸の奥で環が輝き、光が金から白へ変わる。


 核が人の形をとり、リュシアンの前に現れた。


《名をよこせ》《意味をよこせ》《すべてを》


「奪わせない。でも見捨てもしない。

 お前が欲しかったものは、きっと――“帰る場所”だ」


 影がリュシアン自身の姿に変わる。

 怒り、後悔、恐怖――すべての負の感情を抱えたもう一人の自分。


(これが俺の核……)


 リュシアンはゆっくりと歩み寄り、両腕を広げた。


「一緒に帰ろう」


 影が震え、やがて光に溶けて胸に吸い込まれた。

 胸の奥の環が強く鳴り、光が世界全体に広がった。


 涙が頬を伝う。

 恐怖も怒りも、もう重くなかった。


(これで、終わらせられる)


 核が砕け、黒い空間が青白い星々の海に変わった。

 奪う波は消え、航路が完全に復活する。


 艦隊から歓声が上がった。


(守れた……育てられた……)


 胸の奥の環が穏やかに回り、静かな拍が全身に響いた。


 星図都市への帰還航路が開かれ、オルビタが先頭に立つ。


「帰ろう。これを報告して、次の時代を始める」


 だが遠方で、かすかに別の渦が光った。

 それは今見た核よりもさらに深い闇を孕んでいる。


(まだ……先があるのか)


 リュシアンは拳を握った。


(いい。次も変えてみせる)

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