第3部 第14話 星図都市防衛線
オルビタが星図都市の港に戻ると、リアン=ヴァルドが既に待っていた。
リュシアンは甲板から飛び降り、短く報告する。
「航路で影と遭遇した。小規模だが、都市を狙うと告げて消えた」
リアンの眉がわずかに動く。「……やはり動いたか」
広場に緊急警鐘が鳴り響き、都市全体がざわめく。
人々の顔に恐怖が広がり、かつての渦の記憶がよみがえる。
(もう二度と同じ恐怖を味わわせない)
胸の奥で環が強く回り、鼓動が速くなる。
星図評議会が即座に招集された。
氷の長老が声を荒げる。「やはり封印が最善だったのだ!」
歌の民の巫女が反論する。「渦は星になったばかり。これを守るために戦わねば」
会議室の空気が一気に張り詰める。
(俺の提案で渦を星に変えた……
これで都市が襲われたら、責められるのは俺だ)
胃が重くなる。
だが、リュシアンは立ち上がった。
「封じるんじゃない、守るんだ。
都市を中心に“変容の結界”を張る。影が来ても、奪われる前に満たす」
リアンが頷き、杖を掲げる。
「評議会はこれを承認する。星図都市、全面防衛体制に入る!」
リュシアンは胸の奥の環を回し、心臓の拍に呼吸を合わせる。
(今度は待たない。都市に来る前に迎え撃つ)
歌の民が街路に紋章を描き、機械仕掛けの門渡りが防衛機構を調整する。
浮遊塔の先端が光を帯び、都市全体が一つの巨大な楽器のように震え始めた。
(ここが俺の帰る場所。
この街を守れなきゃ、何を選んだ意味もない)
セリーヌが隣で旋律を重ね、ガルドが剣を研ぎながら笑った。
「来るなら来いってな」
そのとき、遠方の航路監視塔から光信号が届いた。
「影が集結している! 数は前回の十倍!」
広場に緊張が走る。
(これが……本番か)
胸が熱くなる。
恐怖と同時に、全身に血が巡る感覚。
(絶対に負けない)
リアンが声を張り上げた。
「門渡り艦隊、迎撃に向かえ! 都市防衛隊は広場を死守せよ!」
オルビタの帆が一斉に光り、艦隊が再び港を飛び立った。
航路の彼方で、黒い波がうねっていた。
その中心に、以前よりも巨大な影の核が脈打っている。
「……あれが次の試練か」
リュシアンは舵輪を握りしめ、前方を見据えた。
(これを超えれば、本当に“新しい時代”が来る)




