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追放された宮廷魔術師、辺境で無双した末に星々を導く者となる  作者: マルコ


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第3部 第13話 揺らぐ航路

 オルビタが新しい航路に乗った。

 渦が星に変わったことで、航路はかつてより明るく、帆を動かす風もやわらかい。


 リュシアンは胸の奥で環を回し、安堵の拍を確かめる。


(穏やかだ……はずなのに)


 背中をかすめるような冷たい感覚があった。


 景色は変わらず美しい。

 星々がきらめき、潮汐がゆるやかに流れる。


(でも、どこか違う。音が――少しだけ濁ってる)


 セリーヌも首をかしげた。「旋律が微妙にずれてますね」


 甲板の上の楽譜が一つ、かすかに色を失った。

 次の瞬間には戻ったが、リュシアンの胸の奥がざわめいた。


「……渦の残響か?」


 エファが眉をひそめる。「観測記録では安定していたはずだ」


(やはり完全には終わっていなかったのか)


 胸の奥で環が速く回り始める。

 その鼓動を抑えるように、深く呼吸した。


 星舟の前方に、黒い霧が浮かび上がった。

 以前の渦の影よりも小さいが、動きは鋭い。


「戦闘準備!」


 ガルドが剣を抜き、歌の民が旋律を放つ。

 影が一瞬たじろいだが、すぐに形を変えて迫ってくる。


(恐れるな。前回と同じだ、満たせばいい)


 リュシアンは掌を掲げ、胸の奥の拍に合わせて光を吐いた。

 青白い光が影を包み、やがて霧は霧散した。


 影は消えたが、航路の一部がわずかに黒ずんだままだった。


「……まだ残ってる」


 セリーヌが旋律を変え、甲板に保護の紋を描く。


(これ以上広がる前に、原因を突き止める)


 リュシアンは舵輪を握り、航路をさらに先へ進めた。


 航路の先で、もう一つの星舟が漂流しているのを見つけた。

 帆は破れ、甲板には誰もいない。


「救助しよう」


 オルビタが横付けし、乗り込むと――甲板に黒い印が残されていた。


(これは……意図的に残された痕跡だ)


 胸の奥で環が警鐘のように鳴った。


 漂流船の奥から、微かな声が響いた。


《……次は……星図都市……》


 声はすぐに途切れ、船体が崩れるように霧散した。


「都市を狙っている……!」


 リュシアンは舵輪を握り、航路を星図都市へと切った。

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