第3部 第10話 星々の航路
星図都市の広場は灯火で満ちていた。
各世界から集まった門渡りたちが輪になり、祝歌を歌う。
オルビタの帆には新しい楽譜が刻まれ、星の光と共鳴して輝いている。
リュシアンは輪の中央に立ち、胸の奥で環を回した。
その拍が都市全体に伝わり、星図が再び更新される。
(ここまで来た……渦は星になり、交流の基盤ができた)
胸の奥が温かくなる。
セリーヌが隣で微笑み、手を握った。
「もう大丈夫ですね?」
「いや……ここからが始まりだ」
氷の長老が前に進み出る。「氷の門は、この星への航路を開く」
砂漠の王も頷く。「砂漠の隊商が物資を供給しよう」
歌の民の巫女が声を重ねる。「星の子守歌を編み、渦が再び荒れぬよう歌い続ける」
次々と世界の代表が誓いを述べ、広場の空気が一つになった。
(皆が期待している。
この星は、もう俺だけのものじゃない)
胸の奥で環がひときわ強く鳴る。
(守るんじゃない、育てるんだ)
リアン=ヴァルドが杖を掲げると、星図の中央に光の線が走った。
それは渦のあった場所と各世界を結ぶ、新しい航路だった。
「ここを中心に、星々の交流は新しい段階に入る」
広場が歓声で揺れた。
(これで、争う理由は減る。
でも、星を狙う者も現れるかもしれない)
胸の奥で環が静かに回り続ける。
オルビタが港で再整備される。
帆が新しい素材に張り替えられ、甲板には星々の紋章が刻まれる。
ガルドが剣を磨きながら言った。「また戦いになるかもしれないな」
「戦うだけじゃない。今度は教えるんだ。
渦をどう変えたのか、他の世界に」
(選んだだけじゃ足りない。伝えていかなきゃ、同じ悲劇は繰り返される)
リュシアンは拳を握った。
そのとき、星図の端に黒い影が一瞬走った。
だがすぐに消え、誰も気づかなかった。
(今のは……?)
胸の奥で環がわずかに震えた。
リアンがリュシアンに近づく。
「近く、全世界規模の会議が開かれる。
お前のやり方を正式に“星の法”として認めるかどうかが決まる」
「分かった。必ず出席する」
リュシアンは頷き、夜空を見上げた。
新しい星が、今夜もひときわ明るく瞬いていた。




