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追放された宮廷魔術師、辺境で無双した末に星々を導く者となる  作者: マルコ


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第3部 第6話 渦への航路

 夜明けと同時に、星図都市の港から数十隻の星舟が一斉に帆を上げた。

 空が光で満ち、星々の航路が一本の矢のように描かれる。


 先頭を行くのはオルビタ。

 リュシアンは舵輪に手をかけ、深く息を吸った。


(次で決める。勝てば未来が始まる。負ければ……)


 胸の奥で環が一度強く回り、恐怖を焼き尽くすように鼓動を整える。


 胃の奥が重い。それでも足は前へ出る。

 セリーヌが横に立ち、優しく言った。


「大丈夫。あなたはもう迷っていない」


 その声に、喉の奥の詰まりがほどけていく。


 甲板では各世界の代表者が最後の準備をしていた。

 歌の民が帆に旋律を刻み、機械仕掛けの門渡りが舵輪の補助装置を調整する。

 砂漠の戦士たちは剣を光で研ぎ、羽の民が上空から全体の隊列を整えた。


 星図都市の空に広がるこの光景は、まるで星座が生きて動き出したかのようだった。


(俺は一人じゃない。ここに、こんなにも多くの声がある)


 胸の奥で環が穏やかに回り、鼓動と皆の拍が重なった。


 やがて視界の奥に黒い海が広がる。

 渦の外縁は音を飲み込み、帆のはためきも消える。


「全艦、音を合わせろ!」


 星路の号令で、艦隊全体が合唱を始める。

 その旋律が渦の表面を波打たせ、細い航路を作った。


(これが……渦の息吹)


 喉が乾く。だが足は震えない。


(選ぶと決めた瞬間から、もう後悔する権利は捨てた)


 セリーヌが隣に座る。「怖い?」


「怖い。でも、それでいい。怖いまま進む」


 ガルドが剣を背負い直し、笑った。


「ビビってるぐらいがちょうどいい。生きて帰るためにな」


 皆の表情が次々に映る。

 誰も恐怖を隠していない。それでも誰も引かない。


(そうだ、怖いまま進むんだ。影を抱いた俺ならできる)


 胸の奥で環が強く鳴り、光と影が調和した。


 艦隊が一列に並び、オルビタが先頭で舳先を向ける。

 黒い海が開き、渦の心臓へ続く道が姿を現した。


「これより突入する!」


 リュシアンが杖を掲げると、全艦の帆が一斉に光った。


 次の瞬間、世界から音が消えた。

 渦が艦隊を呑み込もうとしている。


(行こう。未来を選ぶために)


 オルビタが光の矢となり、渦の中へ突入した。

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