第2部 第36話 新世界の朝
目を覚ますと、空は淡い琥珀色に染まっていた。
昨日まで存在しなかったこの大地の上で、初めての朝日が昇っている。
「……本当にできたんだな」
リュシアンは草の上に座り、ゆっくりと息を吐いた。
胸の奥に、まだ昨日の光景が残っている。
(あの白い空間で描いた景色が、今ここにある)
指先で土を掴むと、温かさと湿り気が確かに伝わる。
現実感がじわじわと押し寄せ、胸が熱くなる。
(俺たちは……世界を創ったんだ)
仲間たちも次々に目を覚まし、辺りを見回して歓声を上げた。
「見ろ、あそこに森ができてる!」
「水も湧いてるぞ!」
子供たちが走り出し、川辺で水を跳ね上げる。
まるで世界全体が祝福しているかのようだった。
「さて、次は街の基礎だな」
ガルドが腕をまくる。
原初の民の長が頷き、光の民が空から素材を運ぶ。
「昨日までの街は残らなかったけど、今度はゼロから作れる」
セリーヌが微笑む。
(これは俺たちが選んだ世界。
ここからは、壊れたら誰のせいにもできない)
胸が少し重くなる。
だが、その重みが逆に心地よかった。
(これが、本当の意味で“生きる”ことだ)
その時、遠くの森から大きな音が響いた。
木々が揺れ、何か巨大なものがゆっくりと近づいてくる。
「……歓迎の使者か、それとも……」
リュシアンは杖を構え、仲間たちに合図した。
森から現れたのは、巨大な獣だった。
しかし目は穏やかで、背中には光る種のようなものが乗っている。
《門渡りの者よ。これを受け取れ》
声が響き、種が宙に浮かんでリュシアンの手に落ちた。
(これは……この世界の未来を育てる鍵か)
胸が高鳴る。
戦いではなく、育てるための試練が始まるのだと直感した。
「この種から、何を育てるか……」
リュシアンは手のひらの光を見つめ、微笑んだ。
「決めるのは俺たちだ。
この世界を、どう育てるかも」
新しい世界の風が吹き抜け、物語は次の章へと進んだ。




