第2部 第28話 街づくりの始まり
浮島の中央に、大きな杭が打ち込まれた。
魔術師団が陣を組み、地脈を安定させるための魔法を展開する。
「これで島が崩れなくなる」
学者が頷き、設計図を広げる。
「広場をここに、居住区はこの川沿いに」
外界の戦士たちが材木を運び、王都の職人たちが組み上げていく。
光の民が空から光を落とし、作業場を照らした。
(戦いではなく、作るための魔法……)
胸の奥がじんわりと熱くなる。
破壊よりも、この光景のほうがずっと力強い。
(これが、俺の選んだ世界か)
昼下がり、浮島の端から昨日の鳴き声の主が現れた。
彼らは獣に似ていたが、額に光る紋様があり、二足で歩いていた。
「……あなたたちは?」
リュシアンが声をかけると、彼らはゆっくりと近づき、膝をついた。
《我らは“原初の民”。この島に最初に生まれた者》
セリーヌが息を呑む。
「じゃあ、この島の先住民……?」
(この島は空白じゃなかった。
ここに人が、いや、民がいたんだ)
胸がざわめく。
街を作ることが侵略になるのでは、と一瞬ためらいが走る。
原初の民の長が言った。
《我らは争わぬ。ただ、忘れられたくはない。
この島を共に使うなら、我らの歌を残せ》
リュシアンは深く頷いた。
「約束する。この街の中心に、あなたたちの祈りの場を作ろう」
原初の民は微笑み、静かに去った。
(これでいい。
一緒に作る街なら、きっと誰も傷つけない)
胸の奥に静かな自信が芽生える。
⑦街の輪郭が見え始める
数日後、広場の基礎が完成し、最初の家が建った。
人々が笑い、子供たちが走り回る。
「これが……始まりだ」
リュシアンは深く息を吐いた。
しかし、遠くの空にまた新しい島の影が見えた。
その島から煙が上がり、何かがこちらを見ている気配がする。
(次はあの島か……)
杖を握り直し、胸の奥で決意を固めた。




