第2部 第16話 光の民
光の柱の前で立ち止まった。
近づいてきた存在は、輪郭こそ人に似ているが、完全に透明で、中に星々が流れている。
《門渡りの者よ》
声は耳ではなく、胸の奥に直接響く。
セリーヌも同時に肩を震わせた。
「……これが、星々のさらに外の民?」
光の民はゆっくり頷く。
《我らは“観測者”。世界を見守り、時を数えてきた者》
胸が詰まる。
今まで出会ったどの存在よりも、大きな気配を感じた。
怒りでも、敵意でもない。
ただ、見られている感覚。
(全部見透かされている……)
心の奥がざわつく。
だが、逃げたいとは思わなかった。
「俺は、地上と外界をつないできた。
今度はあなたたちと……繋がれるのか?」
《繋ぐ前に、問う。お前は何を望む?》
胸が苦しくなる。
望み……。
復讐ではなく、守るためでもなく、今の自分が本当に欲しいものは何か。
(俺が欲しいのは、戦いの終わりじゃない。
始まりだ。
皆が自分で選べる始まりの場所)
「俺は、すべての者が“選べる世界”を望む。
恐怖や怒りに支配されず、自分の道を選べる世界を」
光の民が少しだけ形を変えた。
柔らかい輝きが広がる。
《ならば見せよう。
選択の果てを》
足元が光に包まれ、視界が反転する。
次の瞬間、無数の未来の断片が目の前に現れた。
平和な世界、戦乱の世界、誰もいない世界、果てしない虚無――
あらゆる可能性が同時に流れ込む。
頭が割れそうだった。
未来を見せられる痛みと、可能性の重さ。
だが、目を逸らさなかった。
(どんな未来でも、選び直せる。
選び続けることが、俺の役目だ)
胸の奥に、静かな炎が灯る。
《よかろう。
ならばお前を“歩む者”として認める》
光が強くなり、全身を包む。
五位+選択の環がさらに進化し、**「歩む者の環」**へと変わった。
光が収まると、目の前に新しい道が現れた。
今までよりも遥かに長く、遠く、先が見えない道。
「次が、本当の始まりだな」
セリーヌが頷き、微笑む。
「ええ、リュシアン様。
一緒に歩みましょう」
二人で道へ足を踏み出した。




