第2部 第10話 光の塔
紫の空の下、光の塔が遠くにそびえていた。
近づくほどに空気が冷たくなり、足取りが重くなる。
(これは……試練そのものが、俺の心を計っている)
塔はただの建造物ではなかった。
脈動している。まるで生き物のように。
「リュシアン様、塔が……呼んでいます」
セリーヌの声も震えていた。
だが恐怖ではなく、期待に近い響きだった。
扉を押すと、光の粒が舞い上がった。
中は円形の大広間。
壁には外界の紋様が刻まれ、足元には円環が描かれている。
《門渡りの者よ、ここで外界の“記録”を見るがいい》
声が響いた瞬間、壁の紋様が光り出した。
やがて、外界の歴史が映像のように浮かび上がる。
外界はかつて、地上と繋がっていた。
だが、ある時期に「境界」が作られ、完全に分離された。
《境界を作ったのは、お前たちの祖先だ》
胸の奥が重くなる。
(地上の人間が……外界を閉じた?)
過去の人間たちが外界の民を恐れ、封じた光景が浮かぶ。
祈り、呪文、血の儀式……。
喉が詰まる。
俺たちは被害者だと思っていた。
追放され、戦い、境界を越えようとしてきた。
だが、その境界を作ったのは自分たちの側だった。
「……俺は、どうする?」
セリーヌがそっと手を握る。
「あなたは門を渡る者。
過去を赦すか、壊すか、選べるのはあなただけです」
影の民が現れた。
その目は怒りではなく、期待に満ちていた。
「我らは復讐を望まぬ。
ただ、再び繋がることを望む」
胸が熱くなる。
「なら、繋ごう。
今度は恐怖ではなく、信頼で」
その言葉に、塔が強く光を放った。
光が胸の奥に流れ込み、四位の環がさらに輝きを増す。
外界の力が加わり、環が「五位」へと変化した。
(もう後戻りはできない。
俺は、この世界全体を繋ぐ門になる)
塔の頂に新しい光の門が開いた。
その先には、さらに広い空間が見える。
「行こう、セリーヌ」
彼女が頷く。
「次は……外界の核、ですね」
胸の鼓動が早まる。
今まで以上に強い試練が待っている予感がした。




