第2部 第8話 星間航行
王都の広場に、光の門が立っていた。
昨夜、新たに生まれた星が、門の形をして輝いている。
「これが……外界への道か」
セリーヌが杖を握り、深呼吸をする。
俺も胸の奥がざわめく。
ここを越えれば、もう王都にはしばらく戻れない。
(戻れなくてもいい。戻るためじゃなく、進むために行くんだ)
村の仲間たち、王都の人々、皆が広場で見守っている。
その視線が、背中を押してくれる。
胸が少し痛んだ。
この街は、かつて俺を追放した場所だ。
だが今は、俺の居場所でもある。
(あの日、宮廷から追われたときの痛みがなかったら、俺はここに立てなかった)
過去と現在が重なり、胸の奥がじんと熱くなる。
「リュシアン様」
セリーヌが肩に手を置く。
「行きましょう。今度は、あなたが門をくぐる番です」
光の門に近づくと、周囲の音が消えた。
代わりに星々のざわめきが耳の奥で響く。
《境界を越える者よ、行け》
その声と同時に、門が開いた。
目の前には、星々の海が広がっていた。
光の道が延々と続き、遠くに見えるのは無数の光点。
「……これが外界」
足を踏み出すと、体がふわりと浮く。
重力がなくなり、空気の感覚も薄れる。
けれど不思議と苦しくはない。
星々の間を進むたび、光景が変わる。
地球に似た青い星、燃えるような赤い星、氷のように冷たい白い星。
それぞれに、微かな声が聞こえる。
《こちらへ来い》《学べ》《壊せ》《守れ》
星の声が胸を震わせる。
その声は命令ではなく、問いかけに近い。
(俺は……どう答える?)
心がざわつく。
けれど、答えを出すのはまだ早い。
光の道の先に、ひときわ強い光が見えた。
それは門の形をしているが、どこか不安定で揺らいでいる。
「次は……あの門か」
セリーヌが不安そうに眉をひそめる。
「行くの?」
「行く。ここまで来て止まる理由はない」
胸の奥で鼓動が速くなる。
恐怖と期待が入り混じる。
それでも、足は止まらなかった。
光の門をくぐった瞬間、世界が反転した。
足元に再び重力が戻り、冷たい風が頬を打つ。
目の前には、見知らぬ大地が広がっていた。
空は深い紫色、地平線には黒い森、遠くで巨大な影が動いている。
(ここが……星々の外)
胸が高鳴る。
「ようこそ、門渡りの者」
低い声が響いた。
その方向から、巨大な影がゆっくりと歩いてくる。




