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追放された宮廷魔術師、辺境で無双した末に星々を導く者となる  作者: マルコ


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第2部 第7話 外の外

 夜空は異様なほど静かだった。

 星々は輝いているのに、瞬かない。

 まるで息を止めて見守っているかのようだ。


「……何かが始まる」


 セリーヌが隣で呟く。

 胸の奥がざわめく。

 四位の環が完成して以来、世界の輪郭が以前よりもはっきり見える。

 その輪郭の外側から、何かが近づいているのが分かる。


 足元の石畳が淡く光った。

 地脈、潮流、風、星の線が一斉に繋がり、巨大な円環を描く。

 王都全体が一つの魔法陣になった。


《境界の外に立つ者よ、応えよ》


 頭の奥に響く声。

 星々の声よりも低く、深い。


「……誰だ?」


《我らは“観測者”。星々の向こうから世界を見てきた者》


 背筋が冷たくなる。


(星の道を越えたら、今度は世界ごと見られるのか)


 背後に人々の気配を感じた。

 王都の広場、村、海沿いの街……すべての場所の人々が同時に空を見上げている。

 俺ひとりではない。

 世界が同時に、同じ瞬間に何かを見ている。


(今さら怖いと言えない。

 俺は門を選んだ。なら、見られる覚悟も選ばなきゃ)


 杖を握り直す。


「……応える。見ているなら、聞け」


 光が集まり、王都の上空に巨大な影が形を取った。

 人とも獣ともつかない姿。

 しかしその目は、まるで全てを知っているようだった。


《問う。お前はなぜ門を渡す》


「俺は、世界をつなぐために」


《つなぐ先は何だ》


 答えに詰まる。

 地、海、空、星――すべてをつないだ先に何があるのか、考えたことがなかった。


(つなぐこと自体が目的じゃない。

 俺は……)


 胸の奥から言葉が浮かぶ。


「“生きる場所”を作るためだ。

 奪われない、壊されない、誰もが選べる場所を」


 影が一瞬、揺れた。


《ならば証明せよ。

 お前がつなぐ場所が、混沌にも耐えられると》


 王都の灯火が一斉に消え、闇が広がる。

 世界の輪郭が崩れ、足元が消える。


「リュシアン!」


 セリーヌの声が闇に響く。


「大丈夫だ……これは試練だ」


 何も見えない。

 自分の手も、杖の先も。

 心臓の音だけが頼りだ。


(俺が見なくても、世界はある。

 でも、世界は俺が見るから形になる)


 深く息を吸い、目を閉じる。


「《四位の環・全開》!」


 胸の奥から光があふれ、闇を押し返す。

 地、海、空、星の線が再び結ばれ、王都の灯火が一つずつ戻る。


 巨大な影が溶け、夜空に星が戻った。


《見事だ。お前は外の外にも届いた》


 声が消える。

 代わりに空に新しい星がひとつ生まれた。

 それは門の形をして輝いていた。


「……次は、あの星か」


 セリーヌが肩で息をしている。


「まだ旅は続くのね」


「ああ。けど、もう怖くない」


 王都の人々が広場で拍手を始めた。

 まるで世界そのものが、新しい時代の到来を祝っているかのようだった。


(次は、外の世界を見に行こう。

 星々の向こうの、まだ誰も知らない場所へ)


 胸の奥に、新しい旅の地図が描かれていく。

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