第2部 第1話 星を見上げる夜
夜空はやけに近かった。
王都の再建が進み、街は以前よりも明るいのに、星の光は負けていない。
むしろ、星々はその光を強めているように見えた。
(見られている……)
深海で“声”に認められ、空で“瞬き”を学び、太陽を迎え入れた。
世界は静かになったが、静けさの奥から別の視線を感じる。
塔の円環がひとりでに鳴った。
地・海・空を統べる三位の環が、第四の相を探している。
「星か……」
胸の奥がざわつく。
そこに恐怖はない。むしろ期待がある。
次の舞台が、空のさらに外、世界の外に広がっていることを、確かに感じていた。
王都の広場で、星を観測する祭が開かれていた。
新しい時代を祝うため、夜通し灯火が焚かれている。
子供たちが走り、老いた占星術師が天球儀を回す。
俺は塔の上から、その光景を見下ろしていた。
(これが“生きている街”か)
あの日、追放された俺には想像もできなかった光景だ。
胸の奥が温かくなる。
「リュシアン様」
背後からセリーヌが現れる。
夜風に金髪が揺れ、瞳には星が映っている。
「王からの伝令です。“星読みの使者”が来ました」
「星読み……?」
「はい。境界の外側から、あなたを迎えに来たと」
胸が高鳴る。
(ついに来たか……)
広場の灯火がひとつ、ふたつと消えていく。
星の光がいっそう強くなり、王都全体が夜空に浮かび上がった。
「行こう、セリーヌ。星々の声を聞きに」
二人で階段を降りる。
その先に待つのは、王都でも、海でも、空でもない場所。
世界の外とつながる、星々の門。




