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追放された宮廷魔術師、辺境で無双した末に星々を導く者となる  作者: マルコ


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第1部 エピローグ 門の向こうへ

 夜明け。

 久しぶりに静かな朝が訪れた。

 戦火の匂いも、灰のざらつきも、昨夜の熱も、すべて雨に洗われたように澄んでいる。


 塔の窓から見下ろす王都は、以前より少し広く見えた。

 街路が新しい線を描き、広場には人々が集まり、灯はすでに消えているのに明るい。


(……生きている)


 胸の奥で、何かがほっと息をついた。

 もう、あの日の追放の重みはない。

 王都は俺を拒まない。

 いや、俺がようやく王都を拒まなくなったのかもしれない。


 塔を降りると、市井の人々が道を開けた。

 誰かが帽子を取って頭を下げ、誰かが花を差し出した。


「英雄様!」


 そう呼ばれて、少しだけ笑った。

 追放の日に浴びた嘲笑とはまるで逆の声。

 けれど、それを甘美だと感じる自分に、わずかな怖さもあった。


(英雄でいる必要はない。ただ、生きればいい)


 差し出された花を受け取り、帽子を取って軽く会釈する。

 その一礼が、王都と俺の新しい関係の始まりの合図になるように思えた。


 広場の端で、セリーヌが待っていた。

 夜通しの疲れがまだ頬に残っているのに、目は輝いている。


「王城は落ち着いたわ。

 貴族たちも、あなたの提案を受け入れた。

 王は“境界評議会”の設立を承認した」


「境界評議会……」


「地・海・空、それぞれの視点から王都を見守る。

 あなたが築いた三位の環を、仕組みとして残すの」


 胸が熱くなる。

 俺の戦いは、無駄じゃなかった。


「ありがとう、セリーヌ。

 あなたが居なければ、俺は途中で折れていた」


 セリーヌは首を振った。


「折れかけたからこそ、ここまで来たんでしょう?

 私は、ただ支えただけ」


 その言葉に、胸の奥の重石がひとつ外れる。


 塔に戻ると、机の上に一通の封書が置かれていた。

 封蝋には灰の印。


(アルガス……)


 開くと、短い文が記されていた。


《お前は太陽を迎えた。

 次は星を見ろ。

 星は、境界の外側からこちらを見ている》


 手紙はそれだけで、署名もなかった。


(まだ終わらない、ということか)


 けれど、不思議と胸は軽い。

 今は次の試練を恐れない自分がいる。


 数日後、俺は辺境の村へ戻った。

 焚き火の匂い、遠くから聞こえる羊の声、見慣れた丘。


「リュシアン!」


 エリナが駆け寄ってきた。

 泥だらけの手で、遠慮なく抱きついてくる。


「帰ってきたんだね……!」


 胸が熱くなる。

 この村を守るために戦った日々が、ようやく報われた気がした。


「ただいま、エリナ」


 その言葉が、世界でいちばん重く、いちばん軽い。


 夜、焚き火の前でひとり座る。

 星が瞬いている。

 その星のどこかから、アルガスが言った“境界の外”がこちらを見ているのだろう。


(次は星か……)


 杖を手に取り、火の明かりで先端を照らす。


「行くさ。どこへでも。

 でも、もうひとりじゃない」


 村の灯がゆらぎ、誰かの笑い声が夜に溶けた。


 焚き火がはぜる。

 火の粉が空へ舞い、星の光と重なる。

 世界はまだ広い。

 次に待つものは試練か、祝福か。

 それを選ぶのは、もう俺自身の意志だけだ。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!


追放された宮廷魔術師だったリュシアンが、

辺境で仲間と力を取り戻し、

王都を救い、海と空、影と太陽の試練を越えて「門」となった物語。


この第一部は、彼が“復讐する者”から“世界をつなぐ者”へと変わるまでの物語でした。

書きながら、リュシアンが少しずつ重荷を降ろしていく姿に、私自身も救われた気がします。


ここで一旦、物語は一区切りです。

しかし、境界の向こうにはまだ広い世界が待っています。

第二部では、星の時代編が開幕します。

世界の外からの視線、そして“星々の意志”との対話。

王都だけではなく、世界全体の秩序が試される戦いに挑むリュシアンたちを描きます。


ぜひこの先も、彼らの旅を見届けていただければ嬉しいです!


もしこの第一部を楽しんでいただけたなら、

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次の更新ペースもモチベーションもぐっと上がります

「続きが気になる!」という声が何よりの励みです。

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